「死ぬかと思った――」交通事故から奇跡の復活、『日常』東雲なの役の声優・古谷静佳さんに突撃取材
交通事故で声優から一般人へ 生活の変化と何気ない日常への感謝
――4トントラックに轢かれるという、とても大きな事故がきっかけで引退したと伺いました。
古谷:2015年に引退して、それから5年が経っています。引退を決めたのは、交通事故にあったのがきっかけなのは事実です。いまはピンピンしてますが、当時は頭蓋骨が骨折するし、身体が半身麻痺になっちゃって、普通に歩けませんでした。それどころか、事故直後は眼が見えなくなることもありました。普通に生活できていることが当たり前ではないことを身を持って体験したことは、自分の経験値にできたと思います。
――引退後はどのような生活をしていましたか?
古谷:入院中に自分のこれからの人生を見直したとき、普通の日常を謳歌したいなぁと思ったんです。それで一般的ないろいろな職業を転々としました。その他にも、一年間ワーキングホリデーを使って語学留学を兼ねた韓国生活も楽しみました。人生の夏休みです!
――いろいろな職業とは、どのようなお仕事ですか?
古谷:アパレル業……というか、ZOZOTOWNで働きました。工場で他のスタッフと一緒に商品を出したり入れたりしてましたね。
――その時は元声優とは気づかれませんでしたか?
古谷:ZOZOTOWNでは仲良くしていた子たちだけに言ってたので、他の人はまったく気づいていなかったと思います。この記事を読んで、「は!? 古谷って声優だったの?」と驚かれるかも(笑)。その他にも、クリニックでカウンセラーのお仕事もしました。お客さんのお悩み相談や、プランの提案をするお仕事です。
――本当に普通のお仕事ですね。
古谷:はい! なにせ私は一度死にかけてるので、日常生活は何をしても楽しいんです。食べ物にしても、病院食と違ってご飯に味があるし。何気ない日常をおくれることが、本当に毎日幸せでした。
――生きているって素晴らしいことですね!
古谷:そうそう、ちょっと自慢なんですけど、いいですか? 履歴書を出して一度も落ちたことがないんです!
――それはすごい! どんな履歴書を出していたのですか?
古谷:特別なことはしてません。それこそ、引退直後は経歴欄に「声優」のことは書いてませんでした。
――せっかくのアピールポイントなのにもったいない。
古谷:ですよね(笑)。なので途中からは書くようにしました。私は19歳のころから声優を目指して、23歳に声優デビューしたので、「声優」を書かないと謎の空白があるんです。面接官に不安に思われるのがわかってからは、経歴欄に書くようにしました。「そのアニメ見たことある!」と言われたときもありました。
――その方は、こうやって古谷さんが声優業に復帰してくれて喜んでるかもしれませんね。
古谷:さっき「復帰しないと考えていた」と言いましたが、時間が経ったときに、やはり心のどこかに「声優」という文字はあったような気がします。ですが、声優業は簡単に出入りできる世界ではありません。復帰したと言っても、受け入れてもらえるかは別問題です。
――お仕事をくださった方にも感謝ですね。
古谷:そのお仕事の収録はまだ行っていませんが、本当に感謝しています。お声がけいただきましたが、「簡単な気持ちじゃ復帰できないぞ……」と気合を入れています。またイチから頑張ってみようと、チャレンジする気持ちで活動します!