早見沙織さん新ミニアルバム『GARDEN』インタビュー|「日常に寄り添えるような音楽を」早見さんが『GARDEN』を通じて表現したメッセージ
フィクションとノンフィクションを詰め込んだ世界観
――ありがとうございます。歌い方と言えば次の『Akasaka5』も印象的でした。
早見:この曲は詞先(歌詞を先に作ってからメロディを制作する)で作った曲なんです。もともとは歌詞というかメモなんですけどね。自分が日々、街の中を歩いて見た光景や家の中でなんとなく思ったことをストックしておくメモがありまして。
これまで歩んできた中でも特に細やかな部分。そんな曲を『GARDEN』の中に入れたら面白いだろうなと思っていて。
――なるほど。
早見:『Akasaka5』は2018年に私が赤坂5丁目を歩いていた時にメモした細やかな文章にメロディを付けて形にしたものになります。
――そうなんですね。面白い。
早見:内容としてはフィクションとノンフィクションを織り交ぜたような。うん。フンワリとしたものになっていますね。本当に日常の些細なワンシーンみたいな。ミニマムな世界観を楽曲で表現してみました。
――多くの楽曲制作で、メロディに詞を付けるケースが大半だとお聞きしたことがあります。早見さんの作曲スタイルの場合、歌詞を先に作るケースはよくあるのですか?
早見:私も詞先は珍しいですね。普段はメロディと歌詞を同時進行で作ったりもするんですけど。これまで詞先で作った楽曲は1〜2曲くらいかもしれませんね。
あっ!『To years letter(1st アルバム『Live Love Laugh』収録)』は、私が書いた詞を矢吹さん(矢吹香那さん)にお渡ししてメロディを付けていただきました。
――そうだったのですね。早見さんはご自身の楽曲の多くで作詞を手がけられています。日常のワンシーンを繊細に切り取った情景的な描写や遊びココロのあるワードチョイスなど、作詞家・早見沙織にも以前から注目していました。
早見:ありがとうございます(笑)。『Akasaka5』は具体的な固有名詞も多いので、実際にその場所を歩いたことがある方からすると、色んな映像が浮かぶと思います。
ただ、私の中ではシンプルに考えていて。「明日は明日にお任せしよう」。そんな、聴いた方の気持ちが少しでも軽くなるといいなって思っています。『Akasaka5』はアルバムの中で箸休め的な位置づけとして、4曲目に入れてみました。
――ありがとうございます。それでは『glimmer』についても聞かせ下さい。
早見:『glimmer』のデモは深夜に一人ピアノと歌でささやかに録りましたね。その時は、繊細でちょっと奥ゆかしい曲で。今回、岡部さん(岡部啓一さん MONACA)に編曲をご依頼したのもそういった背景がありますね。
――その背景をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?
早見:私は岡部さんへ本当に繊細で優しくて暖かい音楽を纏われてる方という印象がありまして。この曲が持つ微かな光。そういった繊細な部分を岡部さんであれば形にしていただけると思ってアレンジをお願いさせていただいたんです。
――岡部さんのアレンジを聴いてみて、早見さんは素直にどう感じましたか?
早見:デモのこういう部分をすくい上げてアレンジに活かしていただけるんだぁ...って感動しました。私の一音を遊び心として楽曲に反映してくださっていたりとか。鳴っている楽器の数も多いですし。効果音というかSEのような音も沢山入ってるので、不思議な感覚になるというか。ちょっと宇宙っぽい感じもありますよね。
――確かに。色んな音が鳴っているのが印象的でした。
早見:そうですよね。ボーカル自体も空間に広がりがあったり、リバーブが掛かってたりとか。音楽的に様々な思考を凝らしている楽曲に仕上がっていますので、沢山聴いていただきたいですね。