『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』京極尚彦監督インタビュー|「時代の変化の中で、『クレヨンしんちゃん』らしさを表現。トライしつつ、考える」
いまの時代だからこそ、体験する映画
――本作の中で、特にこだわったポイントをお聞かせください。
京極:一番こだわったところは、「子供たちの楽しいという気持ちや子供たちの力が世界を救うというところ」ですね。そこのところは説得力を持たせたいと思いました。
地味にこだわっているところは、冒険シーンです。四人の勇者がグダグダ移動しているところや、友情を育んでいく瞬間も僕は好きですね。
今年はコロナウィルスの影響で、夏休みの思い出が作りづらかったと思いますので……。
映画を見て、ぶりぶりざえもんとチャンバラごっこしながら、びわを食べたり、夏の思い出みたいなものを感じて貰えると嬉しいですね。
そういった思い出みたいなものを映画の中で体験してもらったり、子どもたちに感覚として届くところがあるといいなと思っています。
――映画終盤に登場する大合唱のシーンは監督が歌詞を考えられたんですよね?
京極:はい。歌詞というより、「やっちゃえば~」と言っているだけなんですけどね(笑)。まず、テンションが上がった時は、祭囃子のような音楽があってもいいなと思いました。
あとは単純に、お祭りや文化祭の時に最後にみんなで歌うと、高揚するので、楽しい気持ちを体現する時に、歌もほしいなと思いました。音楽が難しいと、子どもは歌えないじゃないですか。
歌詞も同じ言葉をひらすら言うようなループのある感じにしたいなとは思っていました。そういった気持ちが直観としてあったので、『クレヨンしんちゃん』の映画ならではの、説得力を持たせられたらと思いました。
――ぶりぶりざえもん役の神谷浩史さんにお話を伺った際に、一番好きなシーンはラクガキングダム王国軍が地上の人間の子どもたちに対して、強制的にラクガキをさせるところ。眠らないように、お神輿に担がれたマサオくんが偵察に来たブリーフを見て、「変なものが見えてきちゃったよ~!」というシーンがお好きだと仰っていました。その辺りはどう意識されて作られたのでしょうか?
子供に無理強いするという事で暴力的にはしたくないと思い、「アンタが大将!」という感じで盛り上げられるという嫌がらせにしたんです。思いついた時は「これだ!!」って思いましたよ(笑)
――『クレヨンしんちゃん』の映画は、大人も楽しめると言われていますが、今回の作品作りでその辺りは意識されたのでしょうか。
京極:僕はあまり意識しなかったです。「まず、子どもが楽しめれば、それが一番」と思っていたので、あまり気取らずいきたいなと思っていました。
30代後半から40代ぐらいの大人の世代、僕は大体そのぐらいの年代なんですが、子どもの時に『クレヨンしんちゃん』を見ていた世代なんです。子ども向けに作れば、その親世代の大人にも当時を思い出してもらえるんじゃないかなと思いました。
小ネタが満載「スポットが当たっていないところでも、クスクスしながら見てもらえればと思います」
――今回のメインキャラクター・四人の勇者についてお聞かせください。
京極:ぶりぶりざえもん(CV:神谷浩史)は見ての通り、おなじみのキャラクターですよね。
しんちゃんは勇者としてストーリーを引っ張っていく人ではないので、一番先導を取ろうとしてイライラするような人がいるだろうなと思い、ブリーフというキャラクターが生まれました。ブリーフは2日目なんですけど、見た目も心も真っ白です(笑)。
ニセななこは原作でもただただ、しんちゃんを愛するピュアで優しいキャラクターです。あまりキャラ付けせずに、一見感情がないようにみえるかも知れませんが、「しんちゃんを助ける」ということ一点に置いては、すごくよく動くというところがドラマチックだと思っています。
小ネタですけど、本当のななこ(大原ななこCV:伊藤静)やみさえ(野原みさえCV:ならはしみき)など、しんちゃんが他のキャラクターと話していると、ニセななこは少しだけ淋しそうな顔をするんです。それが何なのか、具体的には表現はしていないんですけど、そういう気持ちは多少あるのかなとは思っています。
――ニセななこは道中のシーンでは表情も味わい深いところがありますよね。
京極:カーチェイスシーンではニセななこは楽しんでいたりするんです。「一緒にドライブできて嬉しいな」という気持ちから、途中でしんちゃんの身が危なくなると、きりっとした顔になります。その辺りにも注目していただけると、面白いかもしれませんね。
――他のキャラクターについてお聞かせください。
京極:お城にいる人たちは、本当はもっと見せたかったんですけど、尺がオーバーしてしまうので、最低限の登場になっています。実はシナリオ上、彼らが春日部へ下りてくるという案もあったんですけど、それだと、もう2時間で収まらなくなってしまうんですよ。
なので、お城の中で留まっていただいていますけど、今回スポットが当たっていないところでも、密かに味のあるキャラクターが沢山出てくるので、クスクスしながら見てもらえればと思います。