声優・石川由依さんが歌×朗読で織りなすソロプロジェクト「UTA-KATA Vol.1~夜明けの吟遊詩人~」の全貌に迫る|インタビュー
声優・石川由依さんが、歌と朗読で送るソロプロジェクト「UTA-KATA Vol.1~夜明けの吟遊詩人~」。今年1月~2月にかけて東京と京都と札幌で行われた公演の再演が、10月25日に無観客・有料配信で行われることが決定した。
台本を担当しているのは『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の暁佳奈さん。伊藤真澄さんによるピアノ伴奏とともに、石川由依さんが朗読をし、歌う朗読劇。その感動を多くの人に味わってほしい。
さらに、今年1月に行われた東京公演の模様を収めたDVDと楽曲を収録したCDをセットにした、石川由依さんの個人名義では初となる音楽作品『UTA-KATA旋律集 Vol.1~夜明けの吟遊詩人~』が、2021年の1月13日に、アニメイトのみで限定販売される。
その発売を記念し、UTA-KATAがどんなプロジェクトなのかを、あらためて石川由依さんに語ってもらった。さらに本プロジェクトのプロデューサーである斎藤滋さんにも少しお話を伺うことができたので、併せて読んでみてほしい。
石川由依の朗読と歌に癒やされる『UTA-KATA』プロジェクトとは?
――まず、このプロジェクトが始まった経緯を教えてください。
石川由依さん(以下、石川):『UTA-KATA』のプロデューサーをしてくださっている斎藤滋さんとは、TVアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』で出会いまして、作品関係でいろいろな展開をする話をしていたとき、石川さんひとりでも何かやってみればいいんじゃない? というお話をしてくださったんです。
でも私は、ただ歌うということには意味を見い出せていなかったこともあって、お話をいただいたときはすぐに「うん」とは言えませんでした。
――そこから、なぜやることに?
石川:ファンの方などから、私の歌が好きだとか、歌っていてほしいと言っていただけることもあったので、自分が歌って、誰かの救いになるのであれば、やる意味もあるのかなと思ったんです。
でも、ただ歌うだけだと、自分らしさが出ないような気がして、役者だからこその歌が歌えるといいなと思い、朗読を含めた歌、という形になりました。
――ちなみに、このプロジェクトは、今後も続いていくものなのでしょうか?
石川:結果的に、私のライフワークになったら最高だねっていう感じです(笑)。第1回目から、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の原作者である、暁佳奈さんが台本を書いてくださって、内容も本当に素晴らしいものになったので、続けられたらいいなぁと思っています。
――制作する際は、歌だけではなく、物語から考えなければいけなかったと思うのですが、どう作っていったのでしょうか?
石川:どういうお話にしようか、そこに歌をどう混ぜようかという話になったとき、吟遊詩人であれば、歌が混ぜやすいんじゃないかなと思ったんです。
私、NHK FMの『青春アドベンチャー』のラジオドラマに出させていただくことがあるんですが、そこで歌わせていただく機会も多かったので、今までやってきたことを参考にしつつ、何が一番馴染むのかを考えて、吟遊詩人という提案をさせていただいたんですね。そこから暁先生が何パターンか(プロットを)書いてくださって、今回の物語がいいんじゃないかと進めていただき、あとは先生にすべてを委ねたら出来上がっていました(笑)。
――暁先生の物語がとても感動的ですよね。
石川:本当にゼロから始まったので、暁先生に台本をお願いするというのも、実現したらいいですけどそんなことはないだろうと思っていたので、私は口にも出していなかったんです。でも斎藤さんのほうから、暁先生に声をかけてみようかと思うんだけどとおっしゃってくれて。作曲家の方もそうですが、本当に、たくさんの方が力を貸してくださったし、こんな贅沢でいいのだろうかと思いました。
――楽曲のアプローチも、世界観を崩さない感じでした。
石川:私のプロジェクトではあるので、せっかくなら私が好きな雰囲気の曲を作ろうと斎藤さんがおっしゃってくださって、好きな曲を提出させていただいたんです。私は昔からZABADAK(※楽曲提供として、TVアニメ『狼と香辛料』OPテーマ「旅の途中」/清浦夏実 などがある)というアーティストが好きで、ちょうどこの作品の世界観にマッチすると思ったので、それを参考にして、伊藤真澄さんを中心としたクリエイターさんに曲を作っていただきました。
――非常に良質な物語と音楽を、伊藤さんの伴奏はありますが、石川さんがひとりで表現することになりました。
石川:朗読劇や舞台の経験はありますけど、ひとりというのは今までなかったんです。しかも2時間ずっとひとりとなると体力が大変で……。演じるだけではなく歌もあるので、喉の調子もずっと保っていなければいけないというのが、ずっと課題でした。でも何とか、ひぃひぃ言いながらやり切れて良かったです(笑)。
――しかも1日2公演ですからね。その他に大変だったことというと?
石川:小屋をあえて小さくして、お客さんの顔がすぐそこに見えるくらいの距離というコンセプトがあったんですけど、小さい会場だからこそ、マイクの調整などは苦労しました。リハをしたあとに、音響の方がスピーカーを家から持って来てくれたりして、歌いやすく調整をしてくださったりしたんです。
――演じ分けは、それほど大変ではなく?
石川:これまでいろいろな役をやってきたとは言え、同時に見せるということはなかったので、ちゃんと分かるのかな?とか、不安は若干あったんですけど、観てくださった方からの感想などをあとから見ても、そこはどうにかなっていたのかなって(笑)。
――ダイジェスト動画を見ても、はっきりと誰が話しているのか分かる感じになっていましたし、歌への流れも自然でした。目線なども細かく意識して演じていましたね。
石川:朗読って動かないので、見てても面白い何かがあったほうがいいなと思っていたんです。それほど大きく動くということはないですけど、ちょっと目線を変えて、自分自身がコーデリアになったり、吟遊詩人のアウローラになったりして、そこにキャラクターがいるような雰囲気が出せたらいいなとは思っていました。
――公演をしている最中に、何か手応えのような、いい空気を感じるようなことはあるのですか?
石川:そうですね……(少し悩みつつ)、お話の内容的に、第一幕が、コーデエリアとお母さんの話になるんです。そのエピソードは演じていてもグッと来るんですけど、結構そこからうるうるしてくださっている雰囲気が客席から感じられたので、お話の中に入り込んでくださっているんだな、良かった!と思いながら演じていました。そこは、届いているなっていう実感はありましたね。
――そこは本当にグッと来ますよね。しかも物語だけではなく、その後に歌もあることで余計に涙を誘うというか。どちらかひとつではなく、物語と歌の両方があったほうがより感動すると思いました。
石川:歌の背景が分かったほうがグッと来るし、いろいろと想像しちゃいますよね。来年発売される作品は、CD+DVDなので、どちらも楽しんでいただけたらうれしいです。公演のパンフレットには台本がそのまま収録されていて、それも再販されるんですよ。
――これはもうパンフというか……という感じですよね(笑)。
石川:ひとつの読み物というか、ある意味、暁先生の本ですからね。贅沢なパンフレットでした(笑)。
――地方公演ならではの思い出などはありますか?
石川:京都と札幌に行かせてもらったんですけど、それぞれがすごく素敵な会場をお借りすることができたんです。東京は新宿ガルバホールという、スペイン好きのオーナーさんが貸しているところで、すごくファンタジー感があって、それだけでも世界に入り込めそうな会場でした。京都NAM HALLは全体的に黒く、そこに光が射してくるような感じですごく神聖な雰囲気がある会場でしたし、札幌 Fiestaは公演当日大雪が降っていまして、横が一面ガラスだったので、雪の中で公演をしているような感じでした。それぞれ違った雰囲気の中で公演ができたのかなと思います。