「“新しいことをしたい”、その気持ちこそが15年の集大成」デビュー15周年を記念したミニアルバム『15Colors』を3枚同時リリースするMay'nさんにインタビュー
みんなのメインテーマになる曲を歌っていきたい。その思いを胸に『マクロスF』を始め、さまざまなアニメ主題歌を届けてきたシンガー・May'nが、デビュー15周年を記念して11月11日(水)に『15Colors』と名付けられた3枚のミニアルバムを配信リリースする。
15周年を彩るのは、自身の音楽的ルーツであるソウルとダンス・ミュージックをフィーチャーした『soul tracks』、グラミー賞受賞のジェイソン・ハウランドのプロデュースによる“声”をクローズアップした『Unplugged』、ネットで話題のプロデューサー・アーティストとコラボレーションに挑戦した『nu skool』。
2005年に中林芽依としてデビューして以降、限界を決めず常に新たな挑戦を続け、表現者としてひたむきに前進してきたMay'n。これまでの歩みで得た音楽観・人生観、そして“これから”が詰まった3枚についてたっぷりと話を聞いた。
久しぶりのリアルの空間で感じた“かけがえのない瞬間”
──(インタビュー現在)ミュージカル『生きる』(再演)の東京千秋楽を終えたばかりですが、今のお気持ちはいかがですか?
May’nさん(以下、May’n):2年ぶりの再演ということで、私自身もより楽しみながらお芝居をすることができました。
2年前、同じ作品でミュージカルに初めて挑戦させていただいて。小さなころからミュージカルを見ることが好きだったので、いつか舞台に立ってみたいなと思っていたのですが、お芝居自体初めての挑戦で初演のときは分からないことだらけでした。
自分ができてないことは分かるけど、どうしたらできるようになるかまで分からなくて。だけどキャストの皆さん、特に市村正親さんがすごく助けてくださって、本番を楽しむことができました。
役者の先輩方が「(演技は)自分の解放からのスタートだよ」とよくおっしゃっていたのですが、キャストのかたも前回と同じかたがほとんどだったので、自分自身の気持ちを解放することができたように感じています。毎日を楽しむ女の子の役なので、自分の心境とも重ねられました。
──自分の解放ってとてもいい言葉です。May’nさんはボーカリストとしてはもちろん、表現者として常に新たな挑戦をされてますよね。
May’n:もちろん本軸はアーティストではありますが、お芝居もやりがいを感じています。まったく別のチャレンジというよりも……いただいた出会いを大切に、ミュージカルも頑張っていけたらいいなと今回感じました。
初演のときも思ったんですが、新しいチャレンジって “自分の居場所が在る、応援してくれている仲間がいる”って思いがあるからこそできることだなって。今回もそれを改めて感じることができました。
──8月に初の無観客配信コンサート「Hang jam vol.”4.5″」を開催しましたけど、久しぶりのリアルな空間の舞台は感慨も大きかったのではないでしょうか。
May’n:そうですね。生の空間が半年以上ぶりだったんです。配信という形に新たに出会い、配信だからこそ見てもらえる良さもあるなと感じてはいたんですけど、一瞬一瞬の空気を共有できることって……口では説明できないんですけど、ひとつになる感覚があって。東京千秋楽のときに主演の鹿賀丈史さんが「世間では三密(を避けること)って言われてるけど、一緒に過ごすことに心の距離はないですよね。舞台上と客席、“心は一体化”しておりました」っておっしゃってて。まさに私もそれを感じていました。
──ライブもそうなんですけど、空気が震える瞬間って、なんともいえないかけがえのない時間ですよね。
May’n:はい。今おっしゃっていた“空気が震える瞬間”は、ライブでもずっと感じてきたんですけど、やっぱり一緒にその場を作ったり、同じ時間を過ごしたりって本当に大切で必要なものだなって。『生きる』の最後、カーテンコールでお客様の顔をしっかり見ることができたときに「みんなと一緒にこの時間を過ごせたんだな」としみじみと感じて、心から感謝の思いが溢れました。
厳しい言葉に背中を押されて
──外出自粛期間はどのような思いで過ごされていたのでしょうか。May'n Acoustic Tour2020「Hang jam vol.4」は残念ながら中止となってしまい、いろいろな思いがあったと思います。
May’n:最初は「延期になるかもしれない」っていう状態だったので、自分のコンディション、ライブモードを維持するために練習をしていました。でも中止が決まってからは抜けがらのような状態になってしまいましたね。こんなに何もする気がなくなったのは初めてなんじゃってくらい、何も手につかないような状態で。「やる気がない」とは違うかもしれないんですが、生きる希望を失ってしまったような感じでした。私の原動力、毎日の生きるパワーってファンである部員の皆さんに会うこととライブなんです。
“一か月以上ライブがない”という状況は、この10年なくて。だからみんなに会えないっていう状態に、悲しい、寂しいっていう気持ちしかない状態でした。最初の2週間くらいは何もせずにぼーっとしていました。
アーティストとしての活動がみんな止まってしまう状態だったので、周りもみんな同じような気持ちで。でも自分から何かしないと音楽が動かないんだなってことに気付いて。この一連の作品の制作が始まる段階だったので今できることってなんだろうって考えたり、YouTubeに曲をアップしたり。
──仲のいいアーティストの方ともそういった話はしていたんです?
May’n:仲のいいLiSAちゃんとはリモートでお茶とかして(笑)。「こんなにヒマなことないよね」って。お互いに『あつまれ どうぶつの森』をやってたので、島でよく語り合ってました。
──多忙なお二人ですからね。愛猫のむぅちゃんとは久しぶりにゆっくり過ごせたのでは。
May’n:そこだけは良かったなと思っていて(笑)。忙しいとゆっくりできなかったので。
◆むぅちゃんの写真が盛り沢山な公式ブログ
https://ameblo.jp/mayn-blog/entry-12412418798.html
──2週間くらい抜けがらだったとおっしゃってたじゃないですか。そこから抜けたキッカケって、それこそ周りの方のお言葉も大きかったのでしょうか。
May’n:いちばんのきっかけは、15年くらい一緒にやってくれているスタッフさんから「そのままだと何も変わらないよ」って言われたことです。2015年に喉のことで休業した時(※両側声帯ポリープが悪化したためポリープ除去手術を受けた)も、実はそういう厳しい言葉がキッカケだったんです。「クオリティが下がってる」ってビシッと言われて「ああ、じゃあ休まないといけないんだな」って。それ以来、厳しく怒られたというか。
──それでスイッチが入っていった?
May’n:はい。「自分からアクションを起こさないと変わらないよ」って言われて、確かになと思って、これだけ時間があるんだったらいろいろやってみようと。
この15年を振り返ったときに……最初は本名でデビューして、だけどなかなかうまくいかなくて、時間が有り余っていて。そのときも「今しかできないことをやろう」と思って、作詞作曲のレッスンに通い始めたんです。
あの時も、そういう期間があったからこそ作詞・作曲をできるようになったし、その時作った曲も世に出ているので「逆境から新しくはじめたことで良かったことがあったな」って初心に返ったんです。それで新しい機材も買って、家でDTMをやるようになって。今までもDTMをやりたいなと思っていたんですけど忙しいことを言い訳になかなかできていなかったので。
──YouTubeにアップされている映像も改めて機材をそろえたんですか?
May’n:そうですね。ピアノはあったんですけど、アップができる環境・マイクは一新しました。
──そうした紆余曲折を経て15周年という大切な節目を彩る『15Colors』の制作が始まっていったんですね。どのようなコンセプトの作品にしようと考えられていたのでしょうか。
May’n:みんなに寄りそえる音楽を作りたいなという思いが今まで以上に強くありました。今までだとライブが軸にあったので、「ライブで楽しい音楽を作りたいな」って想いがずっとあったりして。もちろんその思い自体は失ってないんですけど、日常を彩るもの、みんなの隣に寄りそえる曲にしたいという思いがいちばんにあったので、そういう意味では、今しかできない音楽にしたいなと。
「みんなにとってのメインテーマとなるような曲を歌いたい」という思いで10年弱、May’nという名前で活動させていただいてますけど、こうした状況のなかで、よりメインテーマとなる曲を作れたように感じています。
──3枚それぞれコンセプチュアルな作品になっていますが、3枚に分けたのはどういったアイデアからなんでしょう?
May’n:もともと15周年ということでスペシャルな曲をお届けしたいなと漠然と思っていて。15曲新曲を作ってみようってお話をいただけて、それだったら15曲を3枚に分けてそれぞれ違うコンセプトを掲げたいなと思っていました。
この15年いろいろなチャレンジをさせていただいて、May’nというアーティストはどんどん変わることができたなって思っているんです。でも、もっと私は変わっていきたいし、知らない自分に出会いたい。だからこそ、今までの集大成というものよりも、これからの未来が見えるような新しい音楽にしたいなって。
私の原点であるダンスミュージック、ソウルをコンセプトに掲げた『15Colors -soul tracks-』。ミュージカル『生きる』でお世話になったジェイソン・ハウランドさんとご一緒させていただいた『15Colors -unplugged-』。プライベートでよくボカロを聴いていたので、新世代のクリエイターの皆さんとご一緒したいという思いで作った『15Colors -nu skool-』。どの作品も、今までのMay’nとは違ったカラーになったんじゃないかなと思っています。
──本当にMay’nさんらしいなと思ったんですけど、いわゆるアニバーサリーって集大成となるものを求められたり、発信したりってことが多いと思うんです。でも、常に挑戦者でいるっていう。
May’n:新しいことをしたいってその気持ちこそが15年の集大成かなと思っているんです。「何かしていたい」って常に思っている気がしますね。止まってしまうと死んでしまう魚っているじゃないですか。私もそんな感じなんです。常に進化していたいし、その姿を見せたいって思ってる。
とにかく私、音楽がすごく好きなので。もちろんアニメ作品とご一緒させていただくときのロックなナンバー、激しい前のめりのサウンドも好き。だけど、踊れるダンスミュージックも好きだし、生の楽器の良さも魅力的だなって思うし。この15年欲張りに音楽を楽しんできたので、今後も自分の好きって気持ち、やってみたいって前のめりのパワーを大切にしていきたいなって思ってます。
──May’nさんが作詞を手掛けた曲も多いですね。
May’n:例の2週間のあとはめちゃくちゃみなぎってたんです。「今しかできないことをやるぞ!」「時間があるんだったらいっぱい作詞するぞ!」って。この数年、自分で作詞した曲を届けたいなって思いが強くなっているんです。
今までもアルバムで作詞作曲をしてはいたんですけど、自分で作詞作曲をしたものを届けたいという願望はそこまで強くなくて。むしろプロの作詞家さんの世界観をボーカリストとして表現するほうが、自分のアーティスト性的にも合ってるのかもしれないと漠然と感じていました。
もちろん今後も作詞家さんとご一緒させていただきたいんですが、みんなにとってのメインテーマとなる音楽になって欲しいと思ったときに、もっともっと日常的な……私の日常を共有できたら、聴いてくれる方、部員の方が喜んでくれるのかなって。なかでも『15Colors -unplugged-』はこの15年で出会った私の大切なものをテーマにして作りたかったので、作詞にこだわりました。