どのキャラソン・既存曲にもない、新たな“富田美憂らしさ”の可能性――声優・富田美憂さん 3rdシングル『Broken Sky』インタビュー
「歌が上手いだけじゃそんなに心に響かない」
――もう1曲の「インソムニア・マーメイド」は、「Broken Sky」から雰囲気がガラッと変わったバラードです。
富田:一目ぼれの音楽バージョンというか……どう言ったらいいんだろう?(笑) 初めて楽曲をいただいたときに、歌詞の光景が目に浮かぶ楽曲だと思いました。
ビジョンがすごく想像しやすくて「この曲がいいです!」とマネージャーさんに言ったら、『となりの吸血鬼さん』や『ぼくたちは勉強ができない』のStudyなどでお世話になっている園田健太郎さんが作った楽曲だと言われて。
今までお世話になってきた作家の方たちも本当に素敵な方ばかりだから、誰が作ったかを事前に聞いていなくても、自然と選んでしまうんだと実感しました。これは「Present Moment」のときにも感じたことだったんですよね。
また、「アーティスト活動をするうえで、いつかバラードにも挑戦したい」とデビュー当時から言っていたので、ついに念願が叶いました!
―― 一方で作詞はこだまさおりさんが担当されていますね。
富田:私、こだまさんの女性らしい歌詞がすごい好きで! Studyの「Happy weather girl」という、こだまさん作詞の楽曲に<スカートのプリーツが機嫌よく並んで>という歌詞があって「なんて女の子らしい歌詞なんだ!」と衝撃を受けたことがあるんです。そういう詞はこだまさんならではなんだと思います。
2ndシングルの前に「今後ご一緒したい作家さんはいますか?」と聞かれて、Tom-H@ckさんと答えたので、「砂の世界」でご一緒させていただけることになりましたが、実はそのときにこだまさんの名前も挙げていて。そして今回実現して、曲を書いていただいたので嬉しかったです。
――楽曲・歌詞と念願叶っての1曲になったわけですね。最初に歌詞をご覧になったときはいかがでしたか?
富田:もう一目惚れでした。「うわ~、好き!」って(笑)。あと、この「インソムニア・マーメイド」は、ただの悲しい失恋ソングだけじゃもったいないなと思っていて。
――と言いますと?
富田:レコーディングの最初のときは悲壮感溢れる感じで歌ったんですけど、見ていた園田さんが「たぶんこの楽曲は、初恋が終わってしまったマーメイドじゃなくて、いくつかの恋を経験しているちょっとお姉さんなマーメイドなんじゃないかな?」と仰られて。
それ面白い!と思ったので、そこからは少し大人の女性らしさみたいなものを意識して歌いました。気持ち的には27歳くらいでしたね(笑)。
<わたしを探さないで>というフレーズも、あえて悲しそうに歌うのではなく、むしろ微笑んで歌うようにして。逆にそれがすごく切なく聞こえる、という技を使ってみました。……園田さんの発案なんですけど(笑)。
――(笑)。たしかに、失恋ソングなのに悲壮感が漂いすぎない。語りかけるような温かみが感じられました。
富田:そうなんです! 失恋って悲しいものだけど、恋心という気持ち自体はすごく温かいものだと思うので。メロディ同様、歌声全体で包みこまれているような雰囲気を出せたら、曲に深みが出るんじゃないかと思って歌いました。
富田さんにこういう曲を歌って欲しい!をぶつけさせて頂きました。こだまさんの歌詞が溜息が出るくらい美しいですよね、これ。デモの段階から水中と泡、みたいな所をイメージして作ったのですが、通じた!と思いました。新しい富田さんを感じて頂ければとても嬉しいです。 #BrokenSky #富田美憂
— 園田健太郎 (@sonodakentaro) November 11, 2020
――「Ageha Twilight」「砂の世界」に続き、表題曲と別のベクトルのカップリングは富田さんの新しい可能性が見えますよね。
富田:ありがとうございます。ファンの方もカップリング曲で毎回ビックリしてくれるんですけど、今回も「ホントに富田美憂ですか!?」と相当驚いてもらえるんじゃないかと思っています。
それに、どっちの曲も主役です!と毎回思っているんです。特に「インソムニア・マーメイド」はレコーディングにいる人みんなが「イイ!」と言ってくれた楽曲なので、すごく自信があります。
――歌声が際立つバラードを歌ううえで、特に意識されたことはありますか?
富田:上手に歌うことは前提としてありつつも、「歌が上手いだけじゃそんなに心に響かない」と、どの曲を歌うときも意識しています。
自分がいろんなアーティストさんのライブを見るときに、歌の上手さよりも、パッションや一生懸命さ、ユニットだったら仲の良さとか、そういった内面的なものが楽曲にも表れて、伝わることで、「素敵だな」「応援したいな」と思えるようになるのかなと感じたので。
だから、上手に歌うことは実は毎回そこまで意識していないんです。
――そうなんですか?
富田:バラードなので、抑揚を付けすぎてしまうとちょっとクドくなるかなと思って。
最初は割と抑え目なプランでいきましたが、ディレクターさんに「もっと年齢を重ねて経験を積んだ富田さんが、抑揚をこれでもか!と付けたらうるさくなっちゃうんだけど、今の若さならいろんな表情を付けてもクドくはならないから、もっとやって大丈夫です!」と言っていただきました。
――逆にそれを踏まえた富田さんが将来的にどう変化していくのかも楽しみですね。
富田:例えば今から10年後、私が30歳になってからライブで歌う「Present Moment」や「インソムニア・マーメイド」はきっと別物なんだろうなという気がしています。
……とはいえ、まだ20歳なので、この10年でどうなるかは全然分からないですね(笑)。