どのキャラソン・既存曲にもない、新たな“富田美憂らしさ”の可能性――声優・富田美憂さん 3rdシングル『Broken Sky』インタビュー
2020年11月11日、自身のアーティスト活動から約1年を迎えようとしている富田美憂さんが、3rdシングル『Broken Sky』をリリース。表題曲の「Broken Sky」は、TVアニメ『無能なナナ』のOP主題歌に起用され、作品世界観を内包したメロディ・歌詞と、本人曰く“新たな富田美憂らしさ”が込められた一曲に仕上がっています。
また、カップリングの『インソムニア・マーメイド』は、作詞・こだまさおりさん&作編曲・園田健太郎さんのタッグによる、富田さんにとって初のバラード曲。失恋を描きながらも、温かみのあるメロディと歌声で、歌詞の世界観を儚く表現しています。
本稿では、富田さんの新たな可能性を引き出した今作についてインタビューを実施。加えて、新型コロナウイルスにおける自粛期間中に起きたご自身の変化・成長や、リリースの2日後に控えた21歳への意気込みなど、様々なエピソードを伺いました。
自粛期間中に起きた富田家のターニングポイント
――2ndシングル「翼と告白」のリリース前後から、新型コロナウイルスの影響で情勢も目まぐるしく変わっていきましたが、アーティスト活動において心境の変化を感じることはありましたか?
富田美憂さん(以下、富田):1stのときはリリイベで地方から北海道まで何十か所も回らせていただいて、ふだんのアニメイベントでは会えないファンの方とも会うことができました。大人の男性から若い女性まで幅広い年代の方が自分の歌を聴いてくれているんだなと感じることができましたし、キャラクターとして作品を背負っているときではない、「富田美憂」のファンがこんなにたくさんいることを知って嬉しかったです。
その体験があったからこそ、2ndシングルのときは辛かったです。素敵な曲をいただいて、素敵な衣装も作っていただいて、「よし! 2ndシングルも頑張るぞ!」と意気込んだ矢先に緊急事態宣言が出てしまったので……。
――リリースの発表も緊急事態宣言が発令されている最中でしたものね。
富田:生配信でミニライブは実施しましたが、ファンのみなさんの目の前であの衣装を着て歌うことができなかったのが悔しかったです。
でも、どんなに盛り上がっても迷惑にならないし、一番いいアングルをカメラマンさんが撮ってくれているので、みんなが最前席のセンター、いいポジションで見ることができたりと、配信ライブならではの良さもあるんだなと気付けました。
あとは、改めてファンの方のありがたさを実感しました。もちろん最初からファンの方は大切だと思っていたし、自分が活動するうえで、一番私の成長を見てくださっているのはファンの方だということも分かっていました。ただ、ミニライブのときに目の前にいないので、こんなにもテンションを上げることが大変なんだと思ってしまって。
去年の11月の「ANIMAX MUSIX 2019」のときは、地に足が着いてないくらいフワフワしていたというか、それだけお客さんの歓声や盛り上がりによって自分のテンションをピークのところに“持っていって”もらっていたんだなと思いましたね。
ライブはひとりで作るものじゃなく、スタッフさん、マネージャーさん、そしてファンの方、みんなで作り上げるものなんだなと改めて気づきました。
#翼と告白生放送 ありがとうございました!
— 富田美憂 (@miyju_tomita) June 6, 2020
久しぶりにみんなの前で歌えた〜やった〜
写真は恒例の体育座り。
缶バッジはアイドルユニットを組むマネージャーSさんと弟Sになりました。
ユニットS、、、、。
サンプルできたら弟にあげよ。 pic.twitter.com/eEbjAea8hE
――アニメの収録も止まった時期があったと聞きますが、その期間はなにをされていました?
富田:一か月くらいお仕事が大きく空いた時期があったので、芝居とパフォーマンスの自己研究をしました。
自分は歌うときにこういうクセがあるなとか、歌番組をたくさん観てパフォーマンスの勉強をしたりして。一か月間を無駄にしたくないと思ったので、いろんなことを吸収する時間にできたのかなと思います。
――そこで吸収したものを自分のものにできたような、手応えを感じる瞬間はあるのでしょうか。
富田:先日、「アニソン!プレミアム!」の収録があったんですけど、「1stシングルのときより良くなってる」とみなさんが言ってくださって。勉強の成果が出たかなとホッとしました(笑)。
――おぉ! 歌っているときの振り付けとかですか?
富田:振りもそうですし、それまでずっと緊張で肩が上がっていて(笑)。余裕がなさすぎてカッコ悪いなと思っていたんです。それに、また「アニソン!プレミアム!」に出してもらえる、さらに『無能なナナ』のカッコいいOP映像を背負って、ということで余裕のあるカッコよさを出せるように心がけましたね。
あとは、Kleissisのリハーサルのときに、山根綺ちゃんが「見せ方が上手になったね」と言ってくれて。身近で一緒にレッスンしている仲間からそう言ってもらえてすごく嬉しかったです。
――修行から帰ってきたみたいな、アーティスト活動がユニットでもしっかりと活かされているわけですね。
富田:せっかくソロデビューして、1stシングルもいい感じに盛り上げていただいたのに、空いた一か月のせいで戻ってしまったらもったいないし、ダサいなと思っていたので、すごく頑張りました。
――自分を見つめ直す時間ができたんですね。
富田:そうですね。じっくり自分と向き合う時間が初めてできたんじゃないかと思います。今まで仕事と学校を行き来し、卒業後もありがたいことにお仕事をたくさんいただいていたので、この6年間ずっと慌ただしく過ごしてきていたんだなと。
なにもやることがなくなり、お家にいなきゃいけないときに、「私、意外と趣味ないな」と改めて実感したんです。
――大好きなポイフルの数を数えたりするくらい?
富田:そう、ポイフルを数えるくらい(笑)。
「私はなにが得意なんだろう?」「すぐ他人と比べちゃう悪い癖があるな」とか、自分の仕事面、メンタル面とちゃんと向き合う時間が初めてできた気がします。家族ともゆっくり話す時間ができて、父親とすごい大ゲンカもしました(笑)。
――大ゲンカ! どうしてまた?
富田:5月頃、たしかアーティスト絡みの、「最近仕事どう?」みたいな話をしていたときでしょうか。
私の父親って、高校受験のときも、私が事務所に入るときも、あまり口を出してこなくて。良いも悪いもなにも言ってくれなかったんですよ。
アニメでメインの役を取れるようになって、一緒に観て「どうだった?」と聞いても、「別に」とかで。ライブにも毎回来ていたんですけど、そこでも「良かったんじゃない?」くらい。
母親はもともと芸能界に興味があった人なので、熱心に作品を見てくれたり、応援してくれている姿を見ていたんですけど、父親はそれが全くなくて。
私は父親に「頑張ったね」と言ってほしくて頑張っていたところもあったので、フラストレーションが溜まりに溜まって、今年の春くらいに双方ボロボロに泣きながらの大ゲンカになりました。
――それは……たしかに大ゲンカですね。
富田:「お父さんは私のことなにも興味ないんでしょ」と20年間思っていたことが爆発してしまって。父親があんなに泣いている姿も20年間生きてきた中で初めて見ました。「あ、ちゃんと人だったんだ」と思ったりもしましたね(笑)。
父親も、一人娘だから応援している姿を見られるのが恥ずかしかったみたいで、あんまり表には出してなかったみたいです。お母さんに聞いてみたら、どんなに短い尺のラジオでも、1ページの端っこにしか載ってないような雑誌でも、全部父親が一番見てくれていた、という話を聞いて……泣きました。
そこからはもうすごい仲良くなりまして。月一で実家に帰るようにしているんですけど、帰るときに車の中でふたりで仕事のことを話すくらい仲良くなりました。
――素敵なお父様、そして親子関係ですね。
富田:“寂しい”という子どもっぽい感情があったんですけど、蓋を開けてみたら恥ずかしくて言えないだけで。お互いもっと思ったことはちゃんと言おうね、と話がまとまりました(笑)。
――この期間だからこそ和解できて、結果的にはターニングポイントになったんですね。もしかしたら、わだかまりを抱えたまま今後の人生を過ごしていったのかもしれませんから。
富田:そうかもしれませんね。ちなみに、お父さんは本当に全部チェックしているので、この記事も読むと思います(笑)。
――そういえば「鷲崎健のヨルナイト×ヨルナイト」のマンスリーアシスタントに出演されたときは、結構な頻度でお父様の話が出てきましたが、ちょうど喧嘩中の5月でしたよね?
富田:はい、実は絶賛ケンカ中でした。でも、たぶんあれも聞いていたんだろうなと(笑)。そのころは私も実家に住んでいて、生放送が終わって家に着くのが夜中の2時半でしたが、なぜか父が起きていてリビングにいたんですよ。寝てないの!?って驚いていたんですけど、今思えばたぶん聞いていたんだろうなって。
――本当に素敵なお父様じゃないですか……!
富田:でもそれ以前から私が父親にムカついていて、一か月くらい口をきいてなかった時期があったんですよ。お互い無視し続けていて、ちょっと肩当たっただけで「ハア?」って怒るみたいな(笑)。
――古い不良のいがみ合いみたいなことを(笑)。
富田:もうホントに(笑)。和解できてよかったです。