劇場編集版『日本沈没2020』湯浅政明監督インタビュー|多くの反響を受けたNetflix版からいかに映画化したのか? そして監督が伝えたかったメッセージとは
全10話の再構築ではわかりやすく、淡々と見られるように
――Netflix版は全10話でしたが、最初から10話の構成と決められていたのでしょうか?
湯浅:最初は11話か12話の予定でした。何話で終わるのか決まらないまま、脚本作りがスタートして、「11話くらいはあったほうがいいよね」という話はして。
でも後半は一気に行きたかったので、1本分減らす代わりに最終回の10話を少し長めにして終わらせようとなりました。
――Netflix版は毎回、次の回への引きがすごくて。早く次回が見たいと思いました。
湯浅:次回も見てもらえるようにと思いながら、意識して作ってはいました。
――Netflixでの配信ということで、地上波での放送と違ってやりやすかった点はありましたか?
湯浅:キャラクターの造形を売れ線にしなくてよかったことでしょうか(笑)。もしかしたら華がなく、泥臭く見えるかもしれないけど、そのほうがリアルに表現しやすいかなと。
――劇場編集版として全10話のストーリーを再構成するにあたって意識されたことは?
湯浅:まず見やすくすることですね。劇場版になればいいなと思いながら配信版を制作していましたが、編集しやすい構成にはなっていなくて(笑)。
先が見えないまま、上がったり下がったりする状況が延々と続くのを、上げ下げを緩やかにしたり、ぼんやりとでもひとまとまりになるような形になればいいなと。
あとシリーズを見ていて乗り切れなかったような人にも入り易くなるよう配慮したり、映画館のシートにどっしり座って見るものなので大仰に引っ張ることはせず、割と淡々と見てもらえるように。
またこの作品は通して誰が主人公という決め方はしていませんが、劇場版ではぼんやりあるキャラクターにスポットを当て、やんわりですがその人を中心に描くように編集しています。
心象的な波に合わせた音楽とリアリティを意識
――クラブっぽい場所で踊るシーンなどテクノ系の音楽が使われていたり、逆境や絶望が描かれている中でもスタイリッシュさを感じられたのが印象的でした。音楽についてはこだわったことはありますか?
湯浅:基本的に劇伴はその時々に起こっている出来事にマッチした音楽や、逆に茫然している時に美しい音楽が流れていたり、心象的な波に合わせた音楽をつけていただいています。
クラブでのシーンやラップなどはリアリティを意識して決めました。黙っていても(音楽担当の)牛尾(憲輔)さんがこだわってくれる所もあるので。
――配信時には40曲以上あった劇伴を、劇場版では半分以下の曲数にされたそうですが、編集にあたり意識された点など教えていただけますでしょうか。
湯浅:牛尾さんの頑張りで、シリーズやシーンの中にきれいに音楽がハマっていて。盛り上がるように、あるいは対比するようになっています。
音楽をいい音で聞いて欲しと思ったのも映画にしたいと思った理由の1つでもあるんですが、いざ編集してストーリーやシーンを短く摘まんでいくと元々会わせてもらった音楽とタイミング合わなくなるし、音楽が次々に流れるとお話に入りにくくなったりする逆効果な面もあって。
劇場版なので多少、盛り上がりや深みを足さなくても、逆にできた隙間に入り込んでもらえるかなと思ったり、ショーアップよりも淡々と事実を見てもらう方向にシフトして音楽を減らしました。
牛尾さんに怒られなければいいなとドキドキしてます(笑)。音楽の曲数は減っても、1つひとつが素晴らしいし、SEの音もいいし、劇場の音響なら5.1chの広がりも感じてもらえると思うので、そこも楽しんでいただけるといいです。
▼『日本沈没2020』スペシャルPV「シズマヌキボウ」 Full ver.