入野自由 3rdフルアルバム『Life is...』に込めた思いをインタビュー
作詞を担当した3曲に込めた思い
――入野さんが作詞を担当した曲はどのように制作されたのでしょうか?
入野:最初に書いたのは『どうしようもなく辛い夜は』で、昨年の秋頃に舞台(ミュージカル『ラヴズ・レイバーズ・ロスト-恋の骨折り損-』)をやっている最中でした。
作り始めた頃にあったこととかを思い返しながら、救いのある曲というか、聴いている人の気持ちが少しでもラクになるような曲になればいいなと思って書きました。
でも最初は書くつもりはなかったんです。作曲を担当した和田 唱さんの曲がすごく素敵で、自分があてちゃいけないんじゃないかなと思ったんですけど、湧き出るものがあったというか、シンプルに“書きたい”、と思いました。
――作詞のテーマは曲を聴いてから決められたんですか?
入野:そうですね。この曲は2曲目か3曲目に出来上がった曲です。「和田さんに書いてもらえたらいいよね~」って夢物語みたいに言っていたんですが、そのことをディレクターが話をしてくれていて。実現すると思っていなかったので、驚きました。
『確かにそうだ』は、いま自分が思っていることや感じていることを書き出したものを佐伯youthKくん(共同で作詞、作曲・編曲を担当)に投げて、それを佐伯くんが整えてメロディをあてて、「ここはこうじゃないほうがいい」「こうしたほうがいい」と細かくやりとりをしながら、作っていった感じです。
この数年ずっとコミュニケーションをとっていたからこそできた曲かなと思います。
『確かにそうだ』は、いまの状況にかぶるようなところがあると思うんですけど、それはたまたまで。そういうことよりも、もっと内面的な自分自身のことだったり、自分と自分を見てくれている人たちに対してのメッセージだったり。自分はどんどん変わっていったりもするし、変わらない部分もある。
ファンのみなさんは「僕の何が好きなんだろう」「僕が何か変わったことでみんなはいなくなっていくのかな」とか「僕が離れていってるのかな」とか。
人間の“考え”は生きているものだから、絶対にこうじゃなきゃいけないとか、それに縛られることは絶対にしたくないとか、そういうグルグルグルグル考えていたこと、愚痴っぽいことも含めて書いて渡しました。
――楽曲を調整する時はすんなりと進みましたか?
入野:そうですね。直感的に思ったことを「それは違うと」「いいと思う」と、ストレートに言える関係性なので。
――6thミニアルバム『Live Your Dream』では入野さんが全曲作詞を担当されましたが、今回は「全部担当しよう!」という気持ちではなかったのですか?
入野:なかったですね。『Live Your Dream』の6曲は、自分が海外で旅をしている中で書き溜めていたものを、帰ってきてから「じゃあ、それで作ってみよう」ってなったものだったけれど、『Life is...』は「作ってみよう」が先だったので、「13曲は書けない!」って(笑)。間に合うはずもないというか。
プロが書くもの以上のものはないと、どこかで思っているので、自分から書くことはできないんです。僕が特に好きなアーティストの曲は、その人の言葉と音楽がセットだと思っているから。もちろん、できるようになったらいいなとは思っているんですけど。
――では、「この曲は書きたい!」と掻き立てられた入野さんのツボはどこにあったのでしょうか?
入野:ものすごくツラくて、どうしようってなっていた時に、いろいろな人の話を聞いていく中で、ツラいことや良かったことを含めてアーティストは曲にした時に考えや思いが昇華すると聞いて、「ああ、そうなのか」と。
何かかたちにしたら何か救われるかもしれない、じゃあ、そういうふうにしてみようかなと思いました。それは『Live Your Dream』の収録曲『誰からも愛されるあなたのように』もそうだったんですけど。
『優しさは誰のためにあるんだろう』の作曲誰にお願いしようかと考えたときにnikiieさん(作詞・作曲を担当)が思い浮かびました。
自分なりに伝えたい言葉を書き出して渡し、その後nikiieさんからメロディラインに合わせた詞が返ってきました。そこから細かいニュアンスを少し書き直した感じですね。
――nikiieさんとの関係性があったからこそ、思いのたけをぶつけられて完成したのですね。
入野:『優しさは誰のためにあるんだろう』と『確かにそうだ』の2曲はそうですね。“優しさは誰のためにあるんだろう”っていう言葉はnikiieさんが考えてくれた言葉で、「たしかに!」と思いました。
――先ほどおっしゃられていた気持ちの昇華はできましたか?
入野:昇華されました。
――全曲作詞を担当された『Live Your Dream』を“入野さん自身から出たもの”だとするならば、『Life is...』はみなさんから“もらったもの”や“一緒に作り上げていったもの”ではないかと思います。そこに何か新しい気づきや感覚はありましたか?
入野:どうだろう。今回は半分くらい、作詞というかたちでは入っていなくても、思いのたけを書いて渡していたりするものもあったので、「こう思っていたことが、こういう言葉で返ってくるんだ」という新鮮さはありました。
そういう不思議な感覚。自分の思いだけど自分の言葉じゃない。でもそういう意味では、これまでもほとんどそれをやってきているので、ある意味、戻った感じですね。