削ぎ落とすことでこだわり抜いた、今作ならではの“音楽”と“音”――アニメ映画『グリザイア:ファントムトリガー THE ANIMATION スターゲイザー』村山公輔監督 インタビュー
村山監督のお気に入りキャラクターは?
――第3話となる本作は、スナイパーであるトーカとグミにフィーチャーした物語となります。監督から見たこの2人の印象や、特に意識したところなどをお聞かせください。
村山:トーカに関しては第1話、第2話からそうなんですけど、“感情の振れ幅”ですね。あまり柔らかい表情をしないキャラクターではあるので、怒る時やショックを受けた時のさじ加減が難しくて。どこまでトーカというキャラクターは感情を出すのだろうかと。
トーカも生まれた時からこうなのではなく、(育った環境によって)徐々に人間性がついていったはずなので、過去のエピソードではどういう表情をするのか、どこまで喜ぶのか。そういった喜怒哀楽の幅は、一番気を使ったところです。
――第1話や第2話に比べると、第3話では過去のこともあって感情の幅や表情が印象的でした。グミの方はいかがですか?
村山:グミは劇中の台詞に「軍人タイプ」とあるように、まさにそのまま落とし込んだキャラクターになっています。実際には存在しない性格だとは思いますけど、自分的にはすんなり捉えることができたので、意外と気は使わなくても大丈夫でしたね。
――いい意味でわかりやすいアイコンと言うか、「〜であります」という口調はアニメや漫画を知っている人にはすごく馴染みがあるというか。
村山:そうなんです。なので、あとはコンテや脚本の段階で「この台詞はちょっとやりすぎかな。ちょっと修正するか」といったぐらいで、映像に関してはすんなりいけました。
――この2人も含めて、今回の登場人物の中で特に印象的だったキャラクターを挙げるとしたら誰ですか?
村山:個人的に今回一番好きなキャラクターは、アヤメ(仙石綾芽)ですね。たぶん、第3話はアヤメがいないと締まらない話になってしまうんですよ。
『グリザイア』って基本的に「悪い奴らを懲らしめにいく」みたいな流れがあって、わかりやすいと言えばわかりやすいんです。でも、そこに本作ならアヤメ、前作だったら京船桜が丘の人たちといった役どころのキャラクターが単調にならない要素として入ってくることで、作品をすごく豊かにしてくれるんですよね。
――確かに、アヤメがいないと単純構造になってしまうというか、彼の存在が今後も含めた物語に深みを持たせていると感じました。
村山:自分は、作品の中に子供もいて大人もいておじいさんもいて……全て存在して欲しいんです。ひとつの世界なので。でも、今のアニメーションだと、大人の形はしているけど中身は高校生みたいな感じで、“大人”が誰も出てこないような作品も見かけたりするんですよ。
『グリザイア』は可愛い女の子が出てきますけど、そのフィルターを取っ払ったとしても、いろんな世代や性別のキャラクターたちがいて、ひとつの世界としてきちんと成立しているところがすごくいいバランスだと感じています。ある意味、オーソドックスな構成といいますか、普遍性のある作りをしているんじゃないかなと。
――作品を見始めるきっかけが可愛い女の子だとしても、世界観や設定がしっかりしているとやはり違うというか。可愛さを取っ払っても面白いと感じますね。
村山:そうですね。可愛い女の子だけで終わらず、ちゃんとその先にいろいろ用意されていて、どんどん展開していく。そういうところも『グリザイア』シリーズの魅力だと思います。
――ゲームとかも含めると、可愛い女の子が銃を持っている作品はそれこそいっぱいありますからね。
村山:差別化じゃないですけど、同じ要素がありつつ“プラスα”でこういうものもあるよ、という作品の方がお客さんに満足してもらえると思うんですよね。
――その可愛い子たちを演じるキャストの皆さんについて、今回のアフレコをご覧になっていかがでしたか? 監督からのディレクションもあったのでしょうか?
村山:アフレコは、現場にフロントウィングの方にも立ち会っていただき、ゲームの時とキャラクター性がブレていないかチェックしていただきました。なので、自分の方では芝居や感情がまちがっていないか、そこをちょっと指示するぐらいでしたね。割と分業という感じでやっていました。
――ストーリーにおける感情の微妙なニュアンスとかそういったところですね。それ以外は特に苦労したようなところもなく、といった感じでしょうか。
村山:そうですね。すんなりいった方だと思います。何度もテイクを重ねて、もう無理だなということもなかったです。