【BLのことさらに知ってみませんか?】オメガバースの基本知識からBLの時流に乗ろう!の巻 【アニメイト編集部BL塾・応用編】
「オメガバース」のオススメ作品
阿部:とはいえ、やっぱり特殊設定だから掴みづらいと感じる方も多いと思うので、作品を読んで理解を深めてほしいなと!
石橋:センセイ、オススメの作品紹介をお願いします!
阿部:まずは設定や世界観を掴みたい初心者さん向けに4作品をご紹介します。
阿部:『狂い鳴くのは僕の番(※5)』。一つの会社の中で物語が繰り広げられます。アルファ、ベータ、オメガが社会の中でどのような立ち位置なのか、オメガバースで描かれる社会階級が深く理解できる作品です。あと、タイトルからお察しかと思いますが、かなりえちちな作品なので、エッチな作品を読みたい人にもオススメ。
※5:狂い鳴くのは僕の番
竹書房にて刊行された楔ケリさんの漫画作品。一流企業に転職したサラリーマンの高羽慧介。Ω嫌いのαである高羽の直属の上司・烏丸雅はなんとΩ。さらには、自分の体を武器に大企業のキャリアの地位におさまっていた。
石橋:オメガバース自体はファンタジーだけど、こういうリアル寄りな作品もあるんですね。
阿部:ファンタジー寄りの作品もありますが、会社や学校の中でのドラマが描かれるお話は多いかもしれません。
続いて『狂い鳴く~』とは打って変わり、『滅法矢鱈と弱気にキス(※6)』と『めぐみとつぐみ(※7)』はラブコメディです。ほとんど差別的な表現がないから、気軽に手を出しやすい作品かなと思います。
※6:滅法矢鱈と弱気にキス
東京漫画社にて刊行された腰乃さんの漫画作品。第二次性別検査でαの結果が出た男子高生の横須賀。相性の良い人を見つけるお見合いで彼女ができると思いきや、相性診断で92%を叩き出した相手は不愛想で目つきの悪いΩの男だった。
※7:めぐみとつぐみ
竹書房にて刊行されたS井ミツルさんの漫画作品。仲間が他校のヤンキーに襲われたと聞きつけたαのヤンキー高校生・九重恵。敵を討つべく喧嘩をしようとするも、相手はいかつい強面ヤンキーのΩで、まさかの発情期中!?ヤンキー×ヤンキーのラブコメディ。
石橋:へぇー。こういう作品もあるんですね。
阿部:オメガが受け受けしく描かれるのが、オメガバース作品あるあるなのですが、この2作品はそういう感じではないのがまたいい。
そして、『先生のせんせい(※8)』はオメガバース作品にしては珍しく、エッチなシーンが一切ありません。ほのぼの系の作品です。
※8:先生のせんせい
ふゅーじょんぷろだくとにて刊行されたnojiさんの漫画作品。小学校教師でαの大路。学生時代に自身の性に悩んでいた大路を救ったスクールカウンセラーでβの保美と偶然再会を果たす。保美に失恋した過去を持つ大路の恋心が再び目覚めていく。
石橋:表紙が素敵ですね。
阿部:差別的な表現はないのですが、自分自身の“第二の性”に対する悩みや葛藤が描かれているため、オメガバースの世界観が理解しやすいのではないかなと。
また、『先生のせんせい』を出版している『ポーバックスTHE OMEGAVERSE PROJECT COMICS』はその名の通りオメガバース専門のレーベルとなっています。商業BLにいち早くオメガバースを取り入れた出版社であり、レーベル独自のオメガバースの型が決まっているのが特徴です。ほかのレーベルにはない「すべての性別が妊娠する、させることが可能」という設定があるんです。
石橋:男女、第二の性、関係なくということですか?
阿部:そうなんです。本レーベルでは「人口の減少から人体が変異(進化)を遂げ、第二の性が出現。全人類が妊娠可能な世界に」といった人類の歴史的背景から世界観を構築しています。
石橋:SFみたいな世界観ですね!
阿部:「オメガバースをもっと気軽に多くの人に楽しんでもらいたい」という想いで立ち上がったレーベルのため、しっかりオメガバースの世界観がつくり込まれています。単行本内にはオメガバースの説明が分かりやすく記載されているので、初心者の方でも手に取りやすいのではないでしょうか!
続いては、「オメガバース作品はいくつか読んだことある」「初心者向け・王道じゃない作品も気になる…」という方向け。王道のアルファとオメガ以外のカップリングで、ちょっとディープなオメガバース作品を2作品ご紹介します。
阿部:まずは『αがαを抱く方法(※9)』。タイトル通りアルファ同士のお話です。
※9:αがαを抱く方法
三公社にて刊行されたときしばさんの漫画作品。αのみを集めたタチ(攻め)専門の高級出張ホストクラブのNo.1ホスト・流華は、自分の地位を脅かすNo.2のレオの存在が気がかり。そんな二人が客の要望でセックスすることになり……。
石橋:イケメンオラオラ系が好きな人にはたまらなそうな作品ですね。
阿部:アルファは攻めとして描かれることがほとんどなので、「アルファの受けもいいな!!」と思ってしまう。「男前受け」好きにオススメでございます。
続いて『きみはもう噛めない(※10)』。こちらはベータ(攻め)とオメガ(受け)のお話です。アルファとオメガではないので番にはなれません。番という関係性で繋がることのできない彼らが最終的にどのような繋がりを得ていくのかが描かれています。
※10:きみはもう噛めない
リブレにて刊行されたあさじまルイさんの漫画作品。βの青年リアムの新しい仕事は、番に捨てられた影響で年中発情を持て余しているΩのオリヴァーを抱くことだった。強気な態度でありながら弱さを垣間見せるオリヴァーへリアムは次第に惹かれていく。
石橋:切なそうですね。
阿部:『αがαを抱く方法』『きみはもう噛めない』どちらも番になれないカップルです。運命という最強の繋がりにどう向き合っていくのか気になる人はぜひお手に取ってみてください。
そして最後は、毎度恐縮ですが私の好きなオメガバース作品を3作品紹介していきます!
阿部:『リバース(※11)』はオメガバース作品じゃなくてもおもしろい! ストーリー構成がとても秀逸で、ミステリー要素があります。作中に潜む伏線が回収されるラストはあっぱれ。ネタバレになるので詳しいことは言えませんが、とってもオススメです。
※11:リバース
海王社にて刊行された麻生ミツ晃さんの漫画作品。警察官の吐木と小説家の円は同じ施設で育った孤児であり、そして番同士だった。吐木が担当することになったΩを狙うレイプ事件。この事件がきっかけとなり、円の抱える“とある秘密”が明かされていく。
石橋:絵がすごくカッコいいですね。これは読んでみたい!
阿部:おそらく石橋さんがお好きな絵な気がします。線が細めで美しいので、ぜひ!
続いて『アンチアルファ(※12)』。アルファとして生きてきたオメガが主人公です。第二の性に抗いたくても抗えないという葛藤が描かれます。「運命の番」の概念が覆るような物語でもあって……。エッチシーン多めなので、「エッチな作品が読みたい!」という人にもオススメです。
※12:アンチアルファ
新書館にて刊行された奥田枠さんの漫画作品。αのみが通う学園で2トップとして君臨する上代と瀬名。αと思い18年間生きてきた上代のもとに、なぜか発情期が。そんな上代に対して、瀬名が取った行動とはーー。
阿部:最後に『捨てられオメガは二度啼く(※13)』。番に捨てられたオメガと義理の息子のアルファのお話です。
※13:捨てられオメガは二度啼く
三公社にて刊行されたいさか十五郎 さんの漫画作品。番に捨てられた過去を持つΩの恭壱。養子として引き取った音々が16歳を迎えた日、αのオーラを身にまとい恭壱に迫ってきた。番に捨てられ、一度も発情期が来なかった恭壱の体に変化が起こる。
石橋:設定がすごいですね(笑)。
阿部:盛り盛りな設定ですよね(笑)。ただ、内容は王道寄りかと思うので、読みやすいと思います。何より「黒髪メガネ受け」なのでね。
石橋:あ! そういうことか!! ちょっとセンセイに気を許し過ぎましたね。ここでそっと入れてくるとは……。
BLの可能性をさらに広げる「オメガバース」
阿部:4回目にして相当踏み込んだ内容でしたが、いかがでしたか?
石橋:読んでみないと分からないというのが正直なところですね。ただ、過去の3回があったから何となく理解はできました。僕も成長しているなと(笑)。
阿部:難しい内容なので、作品を読んで理解していただくのが一番良いと思います! とはいえ、今回お話した内容(オメガバースの特徴)はどのオメガバース作品にも共通しているので、何となく「あー、なるほどね!」と思いながら読めるのではないかなと。
石橋:たしかに難しさは感じますけど、何となくの設定は理解できました。作品によって微妙に特徴が違うのも、おもしろいですよね。社会的ルールは共通部分として持っているけど、それぞれの作品で見せ方が異なる。
阿部:オメガバースと一括りにしてはいるものの、自由度が非常に高いですからね! それはやっぱり二次創作から生まれた設定というのが大きいのかも。
嫌悪感を持つ人に無理して読んでほしいとは全く思ってはいません。だけど、作品によって表現が違うし、BL作品としておもしろい作品もたくさんあります。少し身構えている人もこの講義でちょっと足を踏み入れてもらえたら嬉しいですね。
石橋:うんうん。何か一助になればいいですね。いや~、BLってやっぱり可能性が無限大!
阿部:では、その可能性をさらに理解してもらうべく、今回も読書感想文お願いします!
石橋:かしこまりました! 読者のみなさんも一緒に踏み込んでみるもよし、僕の感想文を読んでから考えてみるもよし。今回の講義が参考になればと思います!