JUNNAさん2ndアルバム『20×20』発売直前インタビュー|20歳になった今、JUNNAさんが想うこととは?
「どの曲にも新しい挑戦が詰め込まれていて、新しい私を聴いてもらえると思う」
20歳になったJUNNAがそう語る、2ndアルバム『20×20』が完成した。
自身で初めて作曲をした「いま」も収録した全11曲。
彼女の歌の力を信じる想いが感じられる名盤だ。
無観客ライブで「いま」を弾き語りで披露したときのエピソードとは?
──今年は特殊な状況でもありましたし、何かと考えることが多い1年だったのではないですか?
JUNNA:いろいろと考えましたし、歌に対しても自分に対しても向き合えた1年だったと思います。意外とネガティブに考えることもなく、前には進んでいけたのかなと思っています。
──さらに歌に向き合えた?
JUNNA:はい。歌うことが自分にとってどれだけ大切なのか、その重みを感じることができました。より自分はこうしたいという意思を、前よりも持てるようになったと思います。
──歌に対する思いは、JUNNAさんが作詞作曲した「いま」にも込められていますよね。自分で作詞作曲をしようと思ったのも、前向きな気持ちの表れかもしれないですが、なぜやってみようと?
JUNNA:前々から自分で曲を作ってみようと思っていたんです。作詞はしていたけど、そんなに音楽知識があるわけではないので、私が作れるものなのだろうかという不安の気持ちが大きくて、一歩踏み出すまでにすごく時間がかかっていたんです。歌としっかりと向き合えたからこそ、曲作りもしっかりとやってみようと思いました。
──この状況もあって、一歩踏み出せたんですね。でも、すごく良い曲ができて、しかもアルバムでもすごく輝く曲になっていました。やはりJUNNAさん自身が放つ言葉って大きいんだなと、あらためて思ったというか。
JUNNA:いや、そんなことは……。自分が何を歌いたいのか、何を表現したいのか明確だったので、いつもより気持ちを込めて歌えたかもしれません。
──配信で先行リリースもされていましたが、反応はどうでした?
JUNNA:配信で聴いてくれた方からは「すごく良い曲ですね」など好意的な感想をたくさんいただけてうれしかったです。20歳の誕生日当日11月2日に実施した配信ライブ(無観客生配信ライブ『JUNNA ROCK YOU STREAMING LIVE 2020 ~MOVE ON~』)では、ピアノの弾き語りでこの曲を歌ったので、ピアノと歌だけだからこそ、私の気持ちがより伝わってくれたたと思います。
──すごく感動しましたから。
JUNNA:良かった……。
変拍子が難しい「我は小説よりも奇なり」。意外な歌うときのコツ
──2ndアルバム『20×20』は、20歳になって初めてリリースする約2年ぶりのアルバムになります。どういう作品にしようと思いましたか?
JUNNA:20歳になるタイミングで作品をリリースできたらいいねという話をしていたんです。ただ、2020年って、いろいろと記憶に残る年になったと感じていて。私は、20歳という、ひとつ大人になったタイミングでもあったのでタイトルも、その2つをかけて『20×20』になりました。
コンセプトとしては、今の私を切り取って、それを歌詞やメロディ、全部含めて表現できたらいいなと思っていました。
──まさにJUNNAさんの“今”が詰まっているような楽曲たちでした。ちなみに今作での新たな出会いというと、誰になりますか?
JUNNA:最果タヒさんです。「波打ち際」の作詞をしていただいたんですけど、本当に詩的で、これを歌にするのか!?というのが最初の印象でした。
最果さんが書いてくれた歌詞を、多保孝一さんが曲にしてくれて、Schroeder-Headzさんがアレンジをしてくださったんですけど、今までにない新しい私がみせられた曲になったと思います。
──そもそも、なぜ最果さんに詩を書いてもらおうと思ったのですか?
JUNNA:ツイッターなどで最果さんの作品をいくつか拝見した機会があって、いつかご一緒したいと思っていたんです。
──歌詞だけ見ても成り立っているというか。本当に詩なんですよね。
JUNNA 歌詞だけ読んでもいろいろと想像ができて、歌にするにはどうなるのだろうかと思っていたんです。作曲をしていただいた多保さんもめちゃくちゃ難しかったとおっしゃっていました。
私自信この詩は、失恋の曲なのかなと感じたんです。なので、読み込んでいくと面白くて。私はあまり恋愛ソングも失恋についてとかも歌ったことがないんですけど、この詩のもつ切なさを歌で表現したいと思いました。
──その他での新たな出会いというと?
JUNNA:「La Vie en rose」の作・編曲のK-Mutoさんもそうですね。ダンスチューンなんですけど、新鮮だなと思いながら歌っていました。ただ歌が難しいから、はたして踊れるのだろうかって思っていますけど(笑)。
──石川智晶さんも新たな出会いだと思います。アルバムのオープニングナンバーである「我は小説よりも奇なり」を作詞していますが、とても独特な世界観ですね。
JUNNA:哲学的だなと感じていて、私なりの解釈で歌いました。しかもこの曲のタイトルは、石川さん自身の(18年11月に行った)ライブのタイトルと同じなんです。そのくらい大切にされている言葉を、私の曲のタイトルに使ってくださったということをすごくうれしく思いました。それを自分の力にして歌えたらいいなと思いました。
──どんな気持ちでその言葉を贈ってくれたのか聞いてみたいですね。ただ、すごく評価してくださっているんだろうなと感じました。
JUNNA:そうだったらうれしいんですけど……。
──楽曲自体は、すごくカッコ良くて、まさに1曲目にふさわしかったのですが、すごく複雑な楽曲だったので、白戸佑輔さんの名前を見て納得しました。
JUNNA:今回のアルバムで、たくさんの曲の中から私が選んだ曲の1曲なんです。だから白戸さんだと知らずに選んだら、白戸さんだったという(笑)。
──自ら難しい白戸さんの曲を求めにいったんですね(笑)。
JUNNA:何故、求めてしまったのだろうか……っていう(笑)。でもすごく良い曲だと思って選ばせていただいたんです。あともう一曲私が選んだ曲が「Sleepless」なんです。ライブで盛り上がりそうだなと思って曲を選ぶと、難しい曲になりがちなんです。
──「我は小説よりも奇なり」は配信ライブで歌っていましたけど、初めて聴くのにカッコよくて、難しい分、カタルシスがあるというか。特に〈ぬかるんだ土に沈む夢〉からの展開が凄まじいですよね?
JUNNA:そこはバンドメンバーのみなさんに、どうやって歌っているの? と聞かれました。リズムと一切合っていないよねって。そのときは「何も(音を)聴いてません」と答えたんですけど、「どういうこと?」って言われて(笑)。でも、感覚的に白戸さんの曲に慣れてしまっているのか、変拍子を物ともせずに歌えるようになってしまったんですよね……。だから逆に、演奏している方のほうが大変だと思います。
──しかも、そのあと突然「ああああああ」って雄叫びがあるじゃないですか。いったい何が起こったんだ!と思いましたからね(笑)。
JUNNA:急に曲が止まって突然言い出すから不思議な感覚ですよね。でもあれがあることでライブの熱量が増すようになると思うし、どのライブでも同じ叫びはないと思うんですよ。それが面白いだろうなと思いました。
──アルバムの1曲目が、ものすごくクセのある決め球の変化球みたいな感じだとしたら、2曲目の「FREEDOM~Never End~」は、剛速球のストレートというか。JUONさんは、一流のギタリストでもありますけど、この1~2曲目の流れは素晴らしかったです。
JUNNA:やっぱり私はロックが大好きなので、アルバムの中に1曲は絶対にロックを入れたいという思いがあるんです。それでお願いしたら、めちゃめちゃカッコいい曲ができたという。
──曲自体が、ポジティブなオーラがあるというか。
JUNNA:Aメロとかはネガティブな不安とかイライラが出ているんですけど、Bメロで自分に問いかけ、サビでは、それらを全部取っ払って前に進んでいくんだ!っていう感じになるんですよね。本当にポジティブにさせてくれる、誰かの背中を押してくれるような曲になっているなと思いました。歌っていてもすごくパワーをもらえる曲ですね。
──こういう激しいサウンドでも、声がズバッと届くところもすごいですが、得意なジャンルということなんでしょうね。
JUNNA:この曲は私が思い描いていたイメージがすんなりハマったんですけど、その中でも課題はあって、落ちサビで、強さを持たせつつ、ボリュームを下げてくださいというリクエストがあったんです。
それは自分の苦手分野でもあって、大きな声で高音を出すのは難しくないんですけど、高い声を裏声を使わずに小さく出すというのはすごく難しくて。それは何度もトライしました。
JUNNAにしかできないこと。彼女が歌うことで、何ができるのか
──「Sleepless」は、先程ライブで盛り上がりそうな曲ということでしたが。
JUNNA:はい。ライブで歌っている自分が見えたんです。スポットライトが当たり、みんながクラップしている映像が浮かんで、良い!って思って選びました(笑)。
自分で選んだ2曲って、これまでの自分の曲にないようなものをと思って選んだところもあるので、歌うのはすごく難しかったんですけど、歌えたら絶対にカッコよくなるし、きっと新しい自分になれると信じてレコーディングをしました。
──気になったのが「Now or Never」で、全編英語詞というのもチャレンジだったのかなと。
JUNNA:全編英語というのは初めてだったので挑戦でした。自分の軸として、英語と歌の二つはずっと持っていたいものなので、このアルバムでそれを掛け合わせた歌×英語曲を入れられたのはすごくうれしかったです。
──それは世界のJUNNAになるために?
JUNNA:頑張りたいなって思っています(笑)。
──でも、日本語で歌うのとは全然違ったのではないですか?
JUNNA:メロディに対する言葉のはめ方が独特で、日本語は音符ひとつに一文字ということが多いけど、英語だとひとつの音に単語がハマることも多いので、そこは発音もきれいに出さなければいけないので難しかったです。
──聴いていても、ネイティブな感じがしたのですが、これは誰かにレクチャーをしてもらったのですか?
JUNNA:この曲を作詞をしてくれたTahiti 80のグザヴィエ・ボワイエさんが参考用に歌ってくれた音源を送ってくれたんです。だからネイティブな歌を聴いて覚えたので。
──それはすごく贅沢なことですね(笑)。
JUNNA:当日も海外経験を持つエンジニアさんに分からないことを聞きながらレコーディングをしていました。私自身は発音的に歌えていると思っていても、客観的に判断してもらわないと分からないところもあったので、すごく助かりました。英語って省略しても通じることって結構あったり、単語と単語を繋げられたりするので、そういうことは教わりながらでした。
──そして、「あばよイエスタデイ」は岩里祐穂さんの歌詞ですが、この曲も“今”を切り取った歌詞で、ちょっとラップっぽいなと思いました。
JUNNA:確かに。強く攻撃的な言葉が多いし、岩里さんの歌詞は表現するのがすごく難しいから、歌っていても面白いんです。
──キラーフレーズが多い曲ですよね。
JUNNA:〈生きて死んでみませんか〉って歌詞がすごいですよね。普通に生きていたらこんな言葉は使わないですし、それが面白いんです。
──どんな意味だと思いました?
JUNNA:死ぬ気で生きろを通り越しているのかなと思いました(笑)。生きることにすべてを懸けているというか、命を削っていくという意味なのかなと思いながら歌っていました。
──コモリタミノルさんの作・編曲なので、曲調的には、これまでのJUNNAさんらしさもあるんですよ。
JUNNA:私を初期の初期から知ってくださっているコモリタさんだからこそ、歌いやすさも考えてくださっていると思います。でもDメロの雰囲気がガラッと変わるところは、これまであまり経験したことがない感じだったので、そこも歌っていて楽しかったです。
──同じ岩里さんの歌詞でも「Sky」は全然雰囲気が違うんですよね。
JUNNA:この曲は、『魔法使いの嫁 学院篇』コミックス宣伝PV用に作った曲だったので、主人公の智世のことをイメージしているんです。アニメの主題歌だった「Here」では、居場所を見つけられなくて、もがいている感じでしたけど、この曲は居場所が見つかったところから始まっているのかなって。でもそんなに自分を好きなわけではなく、自分を肯定できない自分がどこかにいる感じが曲に入っていて、そこから心を開いていくところが見える歌詞だなと思いました。
──あらためてアルバムに入ると、新たな聴こえ方がしますよね。〈誰だって自分勝手な生き物でいい 自分だって好きに愛していいよ〉と聴くと、すごくスッと楽になるというか。「Sleepless」もそうですが、聴くと気持ちが変わるような曲が多い印象でした。
JUNNA:背中を押してくれる歌詞は多いですよね。今こういう時期なので、自分のことがイヤになったり、ネガティブな気持ちになっちゃう人もいると思うんですけど、そういう人にも、届いてほしいと思います。
──そういう流れがあるからこそ、ラストの「いま」がすべてを受け止めているというか。こういう曲を、私はこれからも歌っていくんだ!っていう強い想いを感じるし、やはりキラキラと輝いている曲だなと思いました。
JUNNA:良かったです(笑)。島田昌典さんのアレンジで最後にふさわしい曲にしてもらったんだと思います。ラストに向かって突き進んでいける、明るい未来を想像させてくれるような曲になったと思いました。この曲が(アルバム収録の新曲の中で)最初に出来上がったので、みんなの中でも、この曲に向かって作っていくという思いはあったのかなと思います。
──歌詞にある通り、自分にしかできないことは歌うことだ!という思いはずっと変わらないですか?
JUNNA:変わらないです。
──コロナ禍の中でも思いましたけど、歌に勇気づけられることって多いし、歌で変わることって多いと思いました。
JUNNA:それこそ『マクロス』ではないですけど、歌うことで誰かの心を救えるんじゃないかと思うんです。本当は歌でコロナもなくなってくれればいいんですけど、それは難しいので、誰かの心の暗さとかに、ちょっとでも光を与えられたらなと思います。
[取材、文:塚越淳一]
アルバム情報
発売日:2020年12月9日
価格:初回限定盤……4,400円(税込)、通常盤……3,300円(税込)
≪収録曲≫
01.我は小説よりも奇なり
作詞:石川智晶
作曲:白戸佑輔
編曲:白戸佑輔
02.FREEDOM~Never End~
作詞:JUON
作曲:JUON
編曲:JUON
03.Sleepless
作詞:藤林聖子
作曲:黒崎ジョン
編曲:NAOKI-T
04.La Vie en rose
作詞:唐沢美帆
作曲:K-Muto
編曲:K-Muto
05.イルイミ
作詞:降谷建志
作曲:降谷建志
編曲:降谷建志
★TVアニメーション「BEM」エンディングテーマ
06.波打ち際
作詞:最果タヒ
作曲:多保孝一
編曲:Schroeder-Headz
07.Now or Never
作詞:Xavier Boyer
作曲:中塚武
編曲:中塚武
08.コノユビトマレ-20×20 ver.-
作詞:尾上文
作曲:白戸佑輔
編曲:白戸佑輔
★TVアニメ「賭ケグルイ××」オープニングテーマ
09.あばよイエスタデイ
作詞:岩里祐穂
作曲:コモリタミノル
編曲:コモリタミノル
10.Sky
作詞:岩里祐穂
作曲:白戸佑輔
編曲:白戸佑
★「魔法使いの嫁 学院篇」コミックスプロモーションビデオテーマ曲
11.いま
作詞:JUNNA
作曲:JUNNA
編曲:島田昌典
【Blu-ray】(※限定盤のみ)
01. コノユビトマレ Music Video
02. イルイミ Music Video
03. 我は小説よりも奇なり Music Video