テイオーステップを走りに落とし込んだら……こだわりのレースシーンに注目! 冬アニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』監督・及川啓さん×キャラデザ&総作監・椛島洋介さん×制作P・増尾将史さん スタッフインタビュー【連載第1回】
走りの描写やレースのカメラワークは前作以上のこだわり
――第2期を制作する上で、よりこだわった部分がありましたらお聞かせ下さい。
椛島:作画としては、“走り”を強化しました。走りの表現ってなかなか難しいんですよ。でも、大人数のアニメーターで描かないといけないですから、その指針・設計図となるような走りの各アングルを何パターンか自分の方で作成したんです。これを真似して描けば走っていると見えるように。
ただ、トウカイテイオーは今回主人公ということで、彼女だけは別バージョンの走りの設定を作りました。テイオーステップを走りに落とし込んだらどうなるのか考えて。
――人間のトップランナーが走っている姿ともまた違いますからね。
椛島:トウカイテイオーは関節がしなやかで、「膝が肩近くまで上がる」と表現されていたんです。なので、(地面を)蹴っているのとは逆の脚が前の方に上がっていくポーズでは、その膝をなるべく肩の近くまで上げるように意識して作っています。あと、上げている脚が馬の蹄っぽく見えるようにも意識しました。
――それがレースの迫力に繋がっていそうですね。走りに関しては監督からのリクエストだったのでしょうか?
及川:はい。走りのポーズを作って欲しいと依頼しました。走るときの体の傾きを、段階的にAからFぐらい、Aが一番起きているとしたらB、C、D……とだんだん傾いていく感じで6パターンぐらい作ってもらいました。ただ、トウカイテイオーだけ独特な走りにしたいとおっしゃったのは椛島さんですね。
椛島:そうですね。
及川:トウカイテイオー専用の走りを用意してくれたので、第1期よりも迫力や躍動感のある走りに仕上がっているんじゃないかと思います。
増尾:レースのアングルも、各セクションのスタッフみんなで実際の競走馬の映像を見て「こういうアングル使っているね」「このアングル格好いいよね」などと話し合い、迫力を出しています。あと、実際の競馬場は、そのままウマ娘が走ると柵が高かったりするんですよ。そういうところも監督たちが工夫して仕上げていたり、いろいろ強化しています。
及川:カメラワークは3Dの競馬場を使い、ただのフォローの映像だけでなく、回り込んだりカメラを振ったりすることで、細かい動きや躍動感のある走りになるように心がけています。
――話を聞くと、実際の映像がますます楽しみになります。レース後にはウイニングライブもあると思いますが、こちらもパワーアップしているのでしょうか?
椛島:しています。自信を持って太鼓判を押せますね。これが俺たちのライブだ!というのは提示できていると思いますし、愛を込めてやらせていただきました。
増尾:レースやウイニングライブ以外のことでは、最初のシナリオに入る前に「2回視聴者に見てもらえるような作品にしたい」という話を監督としていたのですが。競走馬のトウカイテイオーは何回も怪我をしてしまう人気馬ですが物語にするには大変な馬です。
本来そのままアニメにしてしまうと暗い話になってしまうかもしれない、しかし「アニメウマ娘のトウカイテイオー」はあの様なキャラクターですから、そのキャラクター像を基に皆さんに愛して頂いているテイオーが気持ちで頑張って乗り越えていくところもしっかり描くことによって、2回でも3回でも見たいと思えるようなストーリー作りを心がけました。
及川:そうですね。あまり暗くしすぎちゃうのはどうかと議論があって。僕は暗くてもよかったんですけど(笑)。
増尾:でも、及川さんのコミカルなギャグがあるおかげで、全体的に明るく見えますよ。
及川:え? 今回はあんまりギャグやっていないよね??
椛島:いやいやいやいやいやいや(笑)!
――第1期も及川監督がかなりギャグを入れて、それを周りの人が削っていったとお聞きしましたが。
及川:……はい。今回もそんな感じです(笑)。
椛島・増尾:あははははは!
椛島:シナリオになかったギャグシーンもありますからね。
及川:やっぱりトウカイテイオーの物語はちょっとシリアスになりがちなので、それを緩和するといいますか、メリハリという意味もあって(ギャグなどの)明るめなエピソードを入れてまとめています。
椛島:それとは対照的に、泣けるところは監督がコンテを修正していたりして。バランスはしっかりされています。
増尾:そうですね。あと、史実を元にした小ネタは今回も散りばめられていますので、いろいろ注目してもらいたいです。
――第1期でもオープニングから本編まで史実を感じさせる小ネタがたくさんありましたが、第2期でも期待できるわけですね。
及川:第2期ではさらに特定できるようにというか、スタッフが頑張って作ってくれています。このウマ娘とこのウマ娘がいて雨が降っているということは……みたいな。
椛島:本編だけでなく、例えばティザービジュアルも増尾プロデュースが入っているんですよ。競馬場がここならあのレースだろうと想定するだろうし、トウカイテイオーは外から指しにかかるはずだから左にいたりとか。
増尾:椛島さんとそのあたりを話して、一番格好いいのはこれじゃないですかと。
椛島:描いてはチェックしてもらってを何回も何回もやって。これを描くならこういうアングルにしようとか、2人でやり取りしながら作りました。そういうところは今回も大事にしています。
――単なる絵としての格好良さだけでなく、競馬ファンが見て納得できる格好良さになっているわけですね。そのこだわりは競馬ファンも嬉しいと思いますし。
及川:そうですね。ほかにも、レースの実況は第1期よりさらに元の実況を拾いつつやっています。
――第1期のときも、「この実況はあの時の!」というのがありましたからね。
及川:ありましたね。スペシャルウィークのジャパンカップで「日本総大将」は使いたいなと思ったので、コンテで勝手に足しておいた覚えがあります。競馬ファンに少しでも喜んでもらえたら嬉しいなと思って。
増尾:先ほどのギャグと同じように、シナリオに書かれていたものだけじゃなく、現場で(競馬に詳しい)いろいろな人にお手伝いしてもらってセリフを増やしていきました。やっぱりレースを見ていると、実況が入って初めて完成された感、泣ける感がありますから、実況は絶対に外せないです。
椛島:実況があることで、レースに感情が上乗せされますからね。
増尾:そうなんです。競馬に詳しくない人でも、実況に引っ張られて感情がグッとくる人が多いんじゃないかと思っているんです。