映画『銀魂 THE FINAL』杉田智和さん&阪口大助さん&釘宮理恵さんインタビュー|終わる終わる詐欺もこれで最後ーー終わった気がしないけどこれが15年の集大成
別録りがなかったため、やりやすい一面、1人での収録では戸惑いも!?
――15年の中で『銀魂』らしさを感じた出来事やエピソードはありますか?
杉田:僕らは作品を表現する者ではあるけど、作品そのものを体現することを期待されることが多くて。
かと言って、僕が「自分が坂田銀時だ!」と急に言い出してTVのバラエティ番組でお笑い芸人さんに「お前、銀魂ついてんのか?」と言っていたらぶん殴ってください。
全員:(爆笑)。
杉田:だから、これをやったらマズいという、ネガティブだけど慎重な考え方からまず入るんです。悪ノリに付き合ってしまったら終わりなので、こういう質問も含めて慎重に答えるようにしています。
阪口:本当に慎重に答えているのかな?(笑)『銀魂』のように笑うのを我慢するスタジオは珍しいんですよね。おかしなツボに入ってしまって、テスト中に「ぶほっ!?」ってなることがよくあったのが僕にとって特別かもしれません。
あとアフレコ後のご飯がおいしかったことくらい。長い作品はいろいろとお店を開拓できるので。
杉田:1つの楽しみでしたよね。今日は早く終わったから天ぷら屋さんに間に合うぞとか。
阪口:オリンピック中継を見ながらご飯食べたよね。僕ら3人だけではなく、キャスト間の距離感も近かったかなと思います。
釘宮:毎週スケジュールの終わりもなく、作品もどれだけ続くのかわからないというノリにノッている状態の時があったんです。
そういう時って、みんなと掛け合いすることになじみすぎてしまって、本編以外の収録でたった1人になるとキャラがわからなくなるという事態に陥ってしまうんですよ。
掛け合ってくれる相手がいないと、「自分が普段どんなテンションと温度感で、どういう気持ちでしゃべっていたんだろう?」と迷子みたいになって、シリアスに悩んでいた時期がありました。
阪口:『銀魂』って別録りが少ないんですよね。普段はちょっとでもセリフが重なると「このセリフは抜きましょう」となるのに。そこがサウンドミキサーの野口あきらさんの技術のすごさで、ちょっとかぶろうが、お尻を食っていようが上手に録ってくれるんですよね。
杉田:漫才の掛け合いのように、ボケとツッコミを離してはいけないと。
釘宮:「別(別録り)ないで~す!」って(笑)。
杉田:バツグンの安心感で。
阪口:すごくありがたいことで、テンポ感も全然変わってくるし、ボケた時にツッコミがいないと。ボケを聞いた上でツッコむのと、ツッコミだけを録るのは違うので。『銀魂』の現場は特殊だし、ありがたいですね。
――改めて今回の台本をご覧になった感想をお聞かせください。
杉田:「本当にやるんだ」ですね。それと同時に原作をどこまで読んだほうがいいのかなと。
余計な知識を得たり、先を知りすぎてしまうと新鮮に驚いた声が出ないかもしれないという不安にとりつかれて、実はある時から原作をまったく読まなくなったんです。台本もそうで、チェックしすぎちゃうと慣れてしまって、おもしろくなくなってしまうんですよね。
印象的だったのが(高杉晋助役の)子安武人さんが、テストが終わった後に「大事なシーンだから何回もやりたくないよね」とおっしゃられて、まったくその通りだなと。
テストの時も音声は録っていて、食い入るように高杉のお芝居を見ていて。だからこそ、一緒に録れてよかったです。
その時に出た言葉を信じれば、合っていれば、そうなるから、と思っていて。原作があるからその通りにしなくてはいけないとは思っていないので、極力、台本を見ないようにしていました。
阪口:僕も台本を読み込むのは、極力、避けていましたね。新鮮でありたいですし、新八は基本的に巻き込まれるキャラなので、その時その時のリアクションは用意されたものであってほしくないと思っています。
だから僕も原作は後追いで、アニメの収録後に読むようにしていました。それでも台本を渡されれば目を通しますが、感想は杉田君と同じで「終わるんだな」と感じました。もうちょっと感慨が湧いてくるのかなと思ったけど、そこまでではなくて。
映画で描いているのは大きな事件ですけど、『銀魂』が15年で描いてきたのは基本的には日常です。だからあのエンディングで。この後も日常が続いていくんだろうなという、どこか安心感があるんでしょうね。
「はい、大団円」という終わり方ではあるけど、同時に続きがあるような含みも持たせてなくても日常が続いているのであれば、『銀魂』の世界は終わりではないし。僕と新八とのつながりはもしかしたら終わってしまうかもしれないけど、『銀魂』の世界に終わりがなかったとハッキリわかるエンディングだったので、悲しさや寂しさという感情がそこまでなかったのが正直なところです。
釘宮:終わるということはわかりきっていたので、「ああ、終わるんだな」と思いましたが、台本を読み進めていくうちに「こういう終わり方なんだ」と腑に落ちましたし、さわやかな気持ちにもなれました。
大きな事件を経た後も当たり前の日常にみんなそれぞれに戻っていくんだなと思えたし、「未来を自由に思い描いていいよ」と許された気がしました。
変に落ち込むこともなく、むしろ「ここまでやらせていただいてありがとう」とか「皆さんのおかげです」という感謝の気持ちも湧いてきて、幸せな作品だなと思いました。