冬アニメ『無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜』前世の男役・杉田智和さんインタビュー│あのとき、もしオーディションに応募していなかったら……ルーデウスに見る“あり得たかもしれない自分”

内山夕実さんとの複雑なキャッチボール

——『無職転生』という作品は役が決まる前からご存知でしたか？

杉田：ええ、知っていました。ただ、自分とはあまり縁のないジャンルかなと思っていたのも確かですね。考え方としてポジティブな人、主に若い人が中心になって作っていく作品。……と、勝手に思っていたのですが、新しい感性に触れるチャンスを貰えて良かったです。

——転生後の世界では、実際の発言をルーデウスとして内山夕実さんが、モノローグ部分を杉田さんが演じる形式を採用していますね。比較的特殊なスタイルだと思うのですが、収録の際に意識していることなどはありますか？

杉田：収録の際には、可能な限り転生後のルーデウスの声を聞かせてもらって、それに合わせるようにしています。重要なのは“今のルーデウス”の喋り方をよく見ることで、そこでは複雑なキャッチボールが行われています。（ルーデウス役が）ちゃんと向き合える方に決まってよかったです。

——同じキャラクターを複数の人間が演じる、ということはほかのアニメでも往々にしてある状況ですが、リアルタイムではなかなかありませんよね。

杉田：別の作品で、僕がやったキャラクターの子供の頃を演じてくれた女優さんが、すごくちゃんと僕の演技を見てくれていて。あの時には普段以上の感動を覚えましたね。「どれだけ僕を研究してきたんだ！」って驚きと共に、良い役者さんだなと思いました。

——岡本監督や音響監督から受けたディレクションなどがあれば教えてください。

杉田：そもそもテスト収録がなぜ存在するかというと、演者が（台本を読んで）用意してくる芝居があって、それを確認して微調整をするためなんですね。シーンへの解釈の違いがある場合は、ハッキリと「ここはこういうシーンだよ」と言ってくれるんです。そういう意味で、問題なく調整することができました。

ディレクション側が考えていた芝居とは方向性が違った場合も、逆に「それも良い！」という形になることもあります。極めて誠実に収録が進行しているんじゃないかと。

——ルーデウス以外で、気になる登場人物はいますか？

杉田：まだ登場していない、あるキャラクターです。実態が掴めない謎の存在で、普通とは違う怖さがありますよね。その実態も性別も何もかもが分からないのに、ひたすら自分に語りかけてくる……。これはとてつもない、並行宇宙の僕以上の恐怖です。

なにかの集合体かもしれないし、別の可能性に進んだルーデウスかもしれない。あるいは世界を滅ぼそうと目論む邪神かもしれない。そういう意味で、気にならざるを得ない存在です。