【連載】TVアニメ『WAVE!!~サーフィンやっぺ!!~』秋月ショウ役・小笠原 仁さんインタビュー vol.1|ショウの根本にあるのは誰にも負けないサーフィンへの愛
ショウの根底にあるのはサーフィンへの愛
——ご自身が演じる“秋月ショウ”について、最初はどのようなキャラクターだと思われましたか?
小笠原:実年齢よりもずっと大人びているキャラクターだと感じました。彼が背負っている事情や想いなど、楽しいことだけじゃないものを背負っている子なんです。
でも、だからといって、“儚げ”な部分だけではありません。彼が暗い人間になっていないのは、一重にサーフィンへの愛情が根本にあるからだと思っています。
自分が愛しているサーフィンを通じて、マサキやナルたち、かけがえのない友達と出会い、彼らとのエピソードがどんどん増えていくので、ショウの中で1番大きい感情は暗いものというよりもサーフィンへの誰にも負けない燃えるような情熱なんじゃないかな、と。
あと、マサキやナルとは違う、いつでも波に揺られているような、消えていっちゃいそうな雰囲気を持つキャラクターだな、と思いました。
——小笠原さんのおっしゃっているように、ショウは浮いているような感じがします。
小笠原:そうですね。マサキとナルは中学生という感じがしますけど、ショウは良い意味で現実味のない子だと思うんです。
『WAVE!!』はサーフィンを中心としたみんなの日常がキャラクターごとに進んで行きますが、ショウは1人だけ浮いているというか、その日常の中にいるようでいないというか。
本当にそこにいるのか定かではないぐらいのイメージで、非実在性というところを大事にしながら演じています。
——前野さんにインタビューをさせていただいたとき、第1話のアフレコで小笠原さんがすごく緊張されていたとお伺いしました。
小笠原:本当に緊張しました! 人生初の劇場公開かつTVアニメのメインキャラクターですし、役柄的にもマサキという太陽のような主人公にサーフィンを好きにさせる、憧れられる存在でもあります。
序盤はショウを中心に物語が動きますし、マサキがショウに対して抱く感情をきっかけに予想外の展開が起きることが多かったので、常に“ショウはマサキから憧れられる存在でなければならない”と気負いみたいなものはありました。
——第1話の収録はいかがでしたか?
小笠原:収録がついに始まるんだなと嬉しい気持ちや、キャラクター1人1人に声が入っていくんだ、今からその現場が始まるんだという感激に打ち震えました。
ラジオドラマで作ってきたショウのキャラクターは、すでにマサキと仲良くなったショウの世界線を演じていたんです。
なので、ショウとマサキが初めて出会いから仲良くなっていくTVアニメでは、まだよそよそしさがあるショウに切り替えていかなきゃと、いろいろなことを考えていました。
でも、本当に第1話の収録は嬉しい気持ちが1番強かったです。
——小笠原さん自身、ショウを演じるにあたり最初から意識していたことはありますか?
小笠原:“現実味のなさ”と“浮いている感じ”の2つを意識しようと思って収録に臨みました。1番最初にマサキとショウが出会ったシーンは、すごくドラマチックなんです。
朝陽をバックにショウが波に乗っていて、マサキから見たら天使みたいに映った存在で。マサキからすると崇高というか、憧れ以上の気持ちを抱いていると思うんです。
あのとき、あのショウを初めて見た景色をマサキはずっと忘れないと思いますし、日常パートでもショウはそういう存在でありたいと思いました。
だからといって、常に天使みたいなキラキラを意識したわけではありませんが、ショウが纏っているオーラや、ショウが“そこにいる”というのが日常に溶け込みすぎないようにしよう、と。
少し現実味がない、少しこの子だけ浮いているな、と見ている方に感じていただけると、後々の展開に生きてくるかもしれないと意識しながら演じさせていただきました。
——なるほど。
小笠原:ただ、浮いているから、現実味がないオーラを纏っているからといって、ショウのサーフィンに対する愛が嘘っぽくなるのだけは絶対に嫌だったので、マサキが初めてボードに立ったときやマサキが偶然にもすごいライドをしたときに感じたショウの喜びは、年相応に切り替えて演じていました。
——収録が始まるにあたり、具体的にこうしてほしいなど、ディレクションはあったのでしょうか?
小笠原:こうしてほしいというディレクションは、あまりなかったような気がします。それまでにドラマCDやラジオドラマである程度、形が出来上がっていたこともありましたし、TVアニメだからこうというものもありませんでした。なので、第1話はみんなと初対面ということで、自分の中でショウの温度感を意識しました。
——話が進むたびに、マサキとナルの中に、少しずつショウが溶け込んでいく様子が確かに感じ取れます。
小笠原:最初はショウの抱えているものを見せるところではなかったので、仲は良いけどどこか“?”になる感じを出していけたら良いな、と。
マサキとナルは幼馴染でずっと一緒にいることもあり、あの2人には2人だけのオーラや雰囲気というものがあると思うんです。
そこに、ショウが同じ温度感で入ってくることはありませんし、出会ってサーフィンという共通の趣味を通したとしても、すぐにそれ以上の温度感になることはないだろうな、と思っていて。
でも、その中に絆みたいなものは芽生えるはずだから、といろいろ考えながら自分で試行錯誤しながら演じていました。