音楽
斉藤朱夏『バック・アロウ』ED「セカイノハテ」インタビュー

アーティスト・斉藤朱夏の勢いが止まらない──強い信念と愛情を注いだ2ndシングル「セカイノハテ」をロングインタビューで語りつくす!

君を少しでも勇気づけられたら

──今作は『コードギアス』シリーズなどの谷口悟朗さんが監督、『天元突破グレンラガン』の中島かずきさんがシリーズ構成、全話脚本を手がけられています。ハヤシケイさんも相当気合いが入っていたそうですね。「マイ・フェイバリット 2 大アニメが『コードギアス』と『グレンラガン』」ということで。

斉藤:そうなんですよ!

──『バック・アロウ』は“信念”がひとつのキーワードになっていますが、「セカイノハテ」は朱夏さんの信念も透けて見える曲になっているなあと。特に<忘れないでいて これから何と出会ったって大丈夫 大丈夫 神様よりも自分を信じて>ってすごく朱夏さんらしい言葉だなって。

斉藤:ありがとうございます。『バック・アロウ』の世界観にも寄り添いつつも、私らしい言葉でも紡いでいきたいなという思いがありました。私にも壁はあるし、みんなにも壁はある。だからこそ共感できる歌詞になっていると思うんです。私自身もすごく勇気づけられました。

コロナになって未来が見えなくなって。正直すごく怖かったんです。私たちの仕事って人を楽しませたり、明るくしたり、前向きに見える仕事なので……いろいろなものがシャットアウトされた状態で、あの時、あの瞬間、みんなが頭を抱えて。何もできないことがこんなにも苦しいだなんてつらいなって改めて思いました。でも、この状況をただ一言「つらい」だけでまとめてはいけないような気がして。あまりに大きな壁が突然できて、いろいろな感情が生まれていったんです。

──そうした中で<さあ一歩 切り拓いていけ 自分で作った壁越えて 転んでも 大丈夫>って言葉をもらったわけですね。

斉藤:そうです。一つひとつの言葉にとても勇気づけられるものがあって。その気持ちのまま、レコーディングでは自分で自分の背中を押している感じで歌っていたんです。でも「そっちの方向じゃないよ」ってディレクションを受けて。「斉藤朱夏の楽曲を聴いてくれた人を包み込むように歌って」と。だからサビの部分ではものすごく力強く、Dメロで静かになるところでは優しさがにじみ出るようにして。

──そうした感情の持っていきかたって言葉以上に難しいような気がします。

斉藤:バランスが難しかったです。いろいろな思いがあった時期だったので、自分自身が苦しい状況なのに背中を押せる余裕はあるのか、果たしてそれがふさわしいのか……って。

でも、もともと私は “君の人生に私の楽曲が鳴って、君を少しでも勇気づけられることができたらいいな”という思いでアーティストになりたいと思ったので。「そんなことで悩んでるヒマないぞ」と少しずつ自分で自分を殴って奮い立たせて。

でも難しかった(笑)。レコーディングではいつも目の前に「ここに誰かがいる」って感覚で歌っているんですが……自分には分かっていても、ひとには伝わらない表現があって、それを具現化することがすごく難しいなって感じていて。それって話していてもそうだなと思っているんです。自分では伝えているつもりだけど、なかなかひとに伝わってないことが多いなって。自分が考えている以上に伝えないと伝わらない。だからこそ、こういう取材でも倍以上のことを話してしまうんです。いつもすみません(笑)。

──いつも楽しいです(笑)。でも本当に人に想いをそのまま伝えるってとても難しいことですよね。今までってどうだったんですか?

斉藤:伝えることが苦手だったんですよね。“今思ってること”を言うのが──実は今でも苦手で。恥ずかしいわけではないんですけど、「今このタイミングでいうべきじゃない」「別に言わなくてもいいことなのかな」って思ってしまって……。

──空気を読みすぎてしまうんですね。

斉藤:なんですかね(笑)。「言ったらどんな表情をするんだろう?」「どんな反応をするんだろう?」「あんまりいい顔しないかも」って思ってしまうと、うまく話せなくなってしまって。小さいころからずっとそうだったんですよね。だからこそ言葉を探して、ひとに害のない言葉を言うことに精一杯力を注いで。大人になるにつれて、そういうことがさらに多くなってしまったんですよね。

そんな自分だからこそ「セカイノハテ」は難しかったですね。マイクを通して表現したいものが全然届かなかったり、表現の難しさを感じたり。自分の技術が届いていない瞬間を見るのがすごく悔しいんです。「なんでだろう」って思いつつも、なぜか頭ではわかっていて。だから途中で歌いたくなくなってしまうんです。そういう(メンタルの)時は、良い歌が録れなくて、自分の憎々しさが出てしまうので……「今歌ってもあんまり良いものにならなさそうだな」って。

──そういう時ってどう気分を変えていくんですか?

斉藤:ケイさんが「そういう時は歌わなくていいよ」と言ってくれるんです。最近おまけテイクを録ってるんですよ。もう何も考えないで、リラックスして、ただ楽しく録るっていう。それが一番良かったりするんですよね(笑)。もちろん何テイクも録っていく中で良いテイクはあるんですけど、ケイさんも「おまけテイクのほうがいいんだよなぁ」って(笑)。人間らしさが出てるんだと思います。何も考えていないときに、自分の素というか、本当に在るものが見えるんだろうなと。曲を聴いてても伝わることだと思いますし、「たぶん、この人ってこういう人なんだろうな」っていうのが、一音でも感じられるので。

──でも朱夏さん、それこそいつも「ゼンシンンゼンレイ」で、ラジオでも声ひとつで感情が伝わってきているんですけども。表現者との宿命なのかもしれませんが、今の時点で“伝える難しさ”は乗り越えられた感じしますか?

斉藤:いやーまだまだですね(笑)。私、最近……この本を読んでるんですよ。(バックから取り出して)『伝わるちから』(松浦 弥太郎・著)という本なんですけど、テレビ番組でこの本の存在を知って。もともと本が好きで、いろいろ読んではいるんですけど「伝え方ってなんだろう?」って考えていたときに出会った本だったので、ああ、タイミングだなって思って。勉強しているところです。

言いたいことが詰まってしまうことが結構多いんですよ。例えばラジオでメッセージをひとつ読み上げるにしても「私としてはこの言葉は傷つかないけど、もしかしたら傷ついてしまう言葉かもしれないな」と考えてしまってズバッと言えないことも。「果たしてこの言葉で合ってるのかな?」って思ってしまうと躓いてしまって、でもラジオだから無言はダメですし(笑)。常に言葉を探して、選んで、ひとに伝えていて、それはこの先年を重ねても変わらなさそうだなとも思っています。「もっと良い表現があるんじゃないかって一個一個考えてやってるので、クセがついてるんだろうなって。」

──そう考えると、朱夏さんにとってステージは本当に自由の場所というか。

斉藤:いちばん自由にできる場所ですね。MCも……ある程度は決めてますけど、自分のステージでは「そのときに感じたこと」を言いたくて。考えていたことと違うことを言ってしまうんですよね(笑)。「いまその瞬間」を大切にしたいタイプなので。それでゴタついてもライブだし、それも味かなって(笑)。

──信頼関係もありますしね。

斉藤:めちゃくちゃ緊張して死にそうになってるんですけど、ステージに上がって、何曲か歌ってしまえば「やっとみんなと喋れる!」って。まだ自分のライブは、フリーライブ、配信ライブ入れて3回なので、どうしても慣れないんですけどね。

──話は変わりますが11月14日(土)にYouTube Liveにて配信されていた、ミニ配信ライブ<Your Way My Way>のときはどうでした?

斉藤:(スタッフに向かって)私、ヤバかったよね?(笑) 緊張しすぎて心臓をバンバン叩いてました。

──リアルタイムで拝見させていただきましたが、歌はもちろん、ひまわりが飾られたセットもカメラワークもすごくステキでしたね。ミュージックビデオの撮影かな?ってくらい綿密に作りこまれていて。

斉藤:あそこまでセットが組まれてるって思ってなかったんですよ(笑)。現場に着いたら「めっちゃ花がある!」って。コメントを後から見たら「え? これMV?」「無料で良いんですか?」っていうものがあって「良いんですよ。こんなご時世だから無料で見てください」と(笑)。

──今作にはあのときの配信ライブ映像もBlu-rayにパッケージされます。プラス2曲収録されていますが。

斉藤:そうなんです、だから私はあのあと続いていたんですよ!

──あの直後、そのまま!?

斉藤:そうです。しゃがんでカメラを覗き込んだところでいったんライブは終わりましたが、そこから「しゅしゅしゅ」「セカイノハテ」を。みんなから「3曲であっという間だった」ってお言葉をいただきましたが「いやいや、5曲やってるのよ」と(笑)。

「しゅしゅしゅ」に関してはひたすらはしゃいで、間奏のときは自由に動いて。1月3日の武道館ライブ(Sony Music AnimeSongs ONLINE 日本武道館)で、そのときに「しゅしゅしゅ」を歌ったんですが、メイクさんに「しゅしゅしゅって振付の先生っているの?」って聞かれて(笑)。自分で考えてるって言ったらすごく驚いていました。10年以上ダンスをやってるからこそできることなんだろうなと。

もう一方の「セカイノハテ」は本当に丁寧に歌っていきました。たぶん、「セカイノハテ」を歌ってる姿を始めてみる映像になると思うので、一つひとつの言葉をかみしめて届けています。それが映像でも伝わればいいなって。

──配信ライブも定着しつつある昨今ですが、配信ライブで伝える難しさも感じているかと思います。挑戦してみていかがでしたか?

斉藤:寂しかったですね(苦笑)。なんでカメラに向かって歌ってるんだろうって。だから私にとってはカメラが壁(笑)。壁を越えたらみんなが向こうにいるんだろうなって想像しながら歌ってました。でも配信でこれだけのモノを届けられたことはとてもうれしいことです。配信するにあたっていろいろな方が駆けつけてくれて、一緒に作り上げてくれて。こういうタイミングで配信ライブができて良かったなって。

少し前だったら、こんなに映像もキレイに届けられなかったと思うんですよ。こうしたご時世になってみんな家にWi-Fiを置いたんじゃないかと(笑)。だから「みんなの家、Wi-Fi強いよね?」「ちょっと重くても気軽に観られるよね?」って。

ライブだといろいろな事情で行けないこともあると思うんです。配信で私のライブをみんなに見せられたのはすごく大きいです。「ライブに行ってみたい」という声もいただけて、みんなの「ライブに行きたい」という気持ちが一歩前に進んだのかなと。

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