アーティスト・斉藤朱夏の勢いが止まらない──強い信念と愛情を注いだ2ndシングル「セカイノハテ」をロングインタビューで語りつくす!
当たり前は当たり前じゃないと気付かされた「秘密道具」
──「止まらないで」がライブに似合うような勢いのバンドサウンドなのに対して、3曲目の「秘密道具」はアコギとタンバリンとハーモニカとピアニカ……と小さな編成によるサウンドで。
斉藤:そうなんです。静かなサウンドで。
──静かな曲だからこそ思いが光る曲になりましたね。シングル曲の「36 ℃」では<愛してる>は特別で別格な言葉だからこそ、その重さを感じたってことをインタビューでおっしゃっていましたが、「秘密道具」では<君に会いたいよ>という<こんなありふれた たった 7 文字ぽっちの想いがこんなに苦しいんだね>と。
斉藤:こういうご時世で会いたいのに会えなくて、君のことが知りたいのに知れなくて。やっぱり今一番会いたい人って応援してくれるみんなで。どうしてもみんなに会いたい。でもそれって……言葉はシンプルだけど、伝えるのが難しいなって。
<会いたい>って言ったらより会いたくなるじゃないですか。今この会いたいって言葉を言ったら会いたくなって苦しくなって、ずっとその繰り返しだなと思っていて。それは応援してくださる皆さんに対して思っているんです。会えないことが当たり前にという、こんな日がくるとは思ってなかったので。18歳くらいからこの仕事を始めてそれまでは頻繁にみんなと会える機会があったのでまる1年会えないってとんでもないなと(苦笑)。
──本当ですよね。
斉藤:「この1年でみんなガラって変わってるんだろうな」って。髪型も洋服も。環境によってひとって変わるので喋り方も、もしかしたら性格も少し変化してるかもしれない。そういうことを考えていると、どんどんみんなのことを知りたくなるんです。SNS上で「みんなの近況を知りたい」って書いたら、みんな優しいので書き込んでくれるんですけど、見た目は見られてなくて。みんなは私を見てるので「斉藤朱夏、髪型変わったな」とか気づくところも多いと思うんですが──。
──まさに今、変わっていますしね(笑)。
斉藤:そうなんです(笑)。でも私はみんなの姿がどう変わったか分からないから、私の情報だけを伝えるのもなあって……。
──そうなんです?
斉藤:私だけが近況を教えていて、私はみんなの近況を知らない……そんな状況はズルいんですよ! 私も知りたいのに(笑)。すごく便利な時代になって、SNSが発展して、良いところもあれば、悪いところもあって。正直、2020年の上半期はSNSが本当に嫌いだったんです。時間が増えてしまったこともあって、見たくもないものを見てしまったり、目に留まってしまう。いろいろな意見を言いたいこともあるけど言えないこともあって。
当たり前だったことが当たり前じゃなくなるってこんなにも苦しいんだなって思いました。その反面、会えることが当たり前って思ってたこともよくなかったなって。いろいろなことに気付かされましたね。
──それでも会いたいっていうシンプルな願いを叶えてほしいという、切実な思いが込められていて。「秘密道具」ってタイトルがストレートですよね。<ネコ型ロボット>って言葉もあったり……。
斉藤:まあ「何か」とは言えないんですが(笑)。でもみんな知ってるもので。「秘密道具」は音数も少ないから聴きやすいのかなと思います。ライブで披露できることが楽しみです。難しいんですけどね(笑)。
──ただ単純にミディアムナンバーってだけではなく、結構難しいテンポ感ですよね。
斉藤:難しいです! 音が少ないですし、絶妙なテンポ感ですし(笑)。でもケイさんには「常に私に試練を与え続けてください」「簡単なモノは渡さないでほしい」とお願いしているので……自ら壁を作ってはいるんです。
──朱夏さんのその信念はどういうところからきているものなんでしょうか。
斉藤:なんだろう……? (少し考えて)この業界に入る前にいろいろなオーディションを経験して、オーディションですぐに受かったわけではなく、何回も落とされて。そういう経験からきているものなのかもしれません。
学生時代は友だちと遊ぶことも好きでしたけど、とにかくダンスをすることが好きで、オーディションが決まるとそこに向かって走っていたんです。でも落ちてしまって。「またかよ~なんでだろう~」って悩んだり、自分に腹が立ったりするんですけど、それは自分の魅力がまだ足りないんだろうなと。正直、10代のときに受けたものって……語弊があるかもしれませんが、(年齢的に)技術が足りなくても輝くものが勝っていれば受かる可能性って高いと思うんです。
でもそれすらないという状況も経験してきたので……私は天才じゃないからこそ、いろいろなことを重ねたうえで、やっとできるタイプの人間だから積み重ねが大切なんだろうなって。
そうやって試練を与え課題を乗り越え何かを乗り越え、また試練がくる。それを繰り返していたから、常に自分に試練を与え続けているんです。成長しつづけていたいって思いがあるからこそ、そうお願いしていると思います。
──素晴らしい姿勢だと思います。それにしても「止まらないで」ってまさにピッタリのタイトルですね。もはや止まりたくないというか。
斉藤:止まるのが怖いのかもしれない。何かしら挑戦していないと「私、終わっちゃうのかもしれない!」って。でも、2020年からケイさんに支えていただき、本当に感謝しています。ケイさん自身がなんていうかはわかりませんが、2ndミニアルバムの「ひまわり」をいただいたときにも助けてもらって、今回の曲でまた助けてもらったので。アーティスト活動していくなかで、1個でも2個でも恩返しがしたいです。だからこそ、自分を強化していく作業はずっと続けていきたいと思っています。
──十分、恩返しはされていると思いますが……。
斉藤:いやぁ(笑)。まだまだ。未熟で、常に何かにおびえ、何かと戦い(笑)。
──そして止まれない(笑)。
斉藤:おまえどんな世界線で走ってるんだよ!っていう(笑)。それが自分の人生だなってすごく思います。