ぼくらの人生を変えたアニメ11選【2015年編】|『響け!ユーフォニアム』やらない理由を探すよりまずやってみる、少しだけそう考えられるきっかけに
陰キャオタクが青春部活アニメから得られたものとは!?
まず一つ目は「とりあえずやってみる(見てみる)のも悪くはない」というキッカケになったこと。
人気作品や人気が出そうな作品は、まず敬遠するところから入る悪癖があった筆者。実はこの作品に関しても、第1話放送当時から見ていた訳ではありませんでした。放送中に評判を調べる中で「意外と悪くないのかも?」と思い、後から追いついてハマっていったクチなのです。
最初見なかった理由が酷いもので、京都アニメーション制作で女子高生の部活ものと聞き、また可愛い女の子が放課後にお菓子を食べてどうこう……みたいな作品なんだろうと決めつけていました(「どうせ『けい●ん!』ならぬ『すいおん!』なんだろ!」とか言ってたクチ)。
自分で言っておいて最低にも程があるなと思えて来るわけですが、拗らせためんどくさいオタクだった筆者は、とにかく「女子高生の緩い日常物だろう」という勝手なレッテルを貼ってしまっていたのです。
そこから評判を受け放送中の話数に追いつく頃にはもうドハマりしており、その時ほど自分の斜に構えた態度を恨んだことはこれまで無かった記憶があります。もしかしたらこの作品以外にも、変なプライドから見なかった作品の中に面白いと思えるものがあったかもしれない。そんな事を考え始めたのもこの頃でした。
また主人公の黄前久美子をはじめ、共感しやすかったり、思わず応援したくなるキャラクターばかりが登場していたことも、ちょっとだけ前向きになれたキッカケだったように思えます。なんというか、凄く登場キャラクターたちが身近に感じられたのです。
この頃から好きになる作品の傾向も少し変わっていきました。それまで好きで見ていたジャンルの作品は今でももちろん引き続き好きなのですが、「俺が見ているこのジャンルが1番だな!」という考えはしなくなりました。
その他にも、主役のようなキャラクターばかりに注視していたのですが、『響け!ユーフォニアム』を見るようになって顧問の滝昇はもちろん、塚本秀一や後藤卓也のような立ち位置のキャラクターの活躍も、もっと見たいと思えるようになったんです。
そういう意味でもこの作品は転機だったと言えます。好みの女性キャラクターばかりを見ていた僕が、今では好きなキャラクターを聞かれたら男子の名前が先に出るくらいですから。
体験してみて聖地巡礼の良さを始めて実感
アニメの舞台となった地に実際に赴く“聖地巡礼”。筆者が聖地巡礼を始めて体験したのも『響け!ユーフォニアム』でした。
そもそも昔からロクに旅行した経験が無く、記憶に残っているのは興味のない修学旅行のみだったのですが(奇しくも同じ京都)、本作の聖地である京都府宇治市に関しては一日かけてかなりのスポットを回ったものです。
同じような体験をした人は共感してくれると思いますが、旅行の経験が修学旅行しかないおひとり様ということで、旅行という行為に大した思い出がないことはわかると思います。修学旅行は、目的があって行った訳ではないので、やっぱり記憶に残らないんですよね。
明確に自分で目的を持って行こうと決めたのは、作品の面白さがあってこそ。例によって偏見で凝り固まっていたので、最初はネットで写真を眺めているだけで満足していました。
ことのきっかけは覚えていないのですが、アニメを見れば見るほど、いつの間にか聖地の場所を調べたり、実際にその場所に行った人のブログを読んだりと、聖地巡礼への期待と関心が高まっていたのです。
それでもどこかで「アニメの舞台になった場所に行ってもそこまで感動することは無いだろう」と思っていたのですが、気になった場所を調べれば調べるほど、いてもたってもいられなくなり、その内「やっぱり行ってみたい……!」と思い、行動に移したのでした。
しかし、ほぼ旅行童貞の筆者。旅館の予約もよくわかりませんでしたし、交通手段もどんなものがあるのかわかっていない状況です(このとき調べて京都は空港がないことを知りました)。
そんな中、ネットで調べた旅行シーズンを外した格安の2泊3日の新幹線とビジネスホテル素泊まりのプランを予約することに。「この値段なら失敗してもいいか」とわりとお金を投げ捨てるような感覚で入金を済ませました。
ここでも消極的な気持ちは捨てられずにいましたが、そんな気持ちとは裏腹に2泊3日にしたのは、1日目は『響け!ユーフォニアム』の観光、2日目は京都の歴史観光をしようと思ったからです。京都観光も予定してしまうなんて、今思えばかなり期待していたんでしょうね。
新幹線で東京から京都まで約2時間。ノートPCで仕事をしながらの移動時間はあっという間でした。
すんなりと到着してしまった京都駅。修学旅行で来たことがあるはずの京都駅構内は、不思議とまるで違う場所へ来たかのような感覚がありました。そこまで建物の造りは変わっていないはずなのに、どこもかしこも目新しく見えたのです。
感じたことのない不思議な感覚が漂う中、「まぁこんなものか」「期待しないで行こう」と考えて宇治駅に向かいます。
移動中は、車窓から見える景色と行く場所とルートの確認に専念。そうしているうちに宇治の駅に到着したところでネガティブな感情は全てどこかへ吹き飛んでいました。
当時の京阪電車の宇治線は、車両が『響け!ユーフォニアム』のラッピング仕様。ドキドキしながら電車に乗り込みます。
作中のキャラクターもこの景色を見ているのかなと考えてみたり、各所にあるスタンドパネルを撮影したり、そんな何気ない一瞬も楽しくて仕方ありませんでした。
この時に各所で撮影した写真は今でもPC内に保存しており、後生大事にする宝物になっています。今もたまに見ては当時を思い出すレベルでして……。
陰な性質から騒いだりはしないものの、聖地になっている各所に行くたびに「あのシーンで見たことある!!」と感動して撮影枚数が凄いことになっていたのは、今となっては良い思い出です。
それまではネットで見た情報で知った気になっていたものですが、月並みながら実際に見聞きした情報とそれらとでは雲泥の差があるというのは本当の話なんだなと、実感を持って知ることができたのは大きな収穫だったと言えます。
なんといったらいいのでしょうか。前述した本作を当初見なかった理由もそうですが、とにかく何でも否定から入っておくのがカッコいいと思っていたのでしょうね(おそらく中二病)。実際はそんなことは一切なく、ただただ良い人生経験になっただけでした。
特に印象に残っているのが、テレビシリーズ第1期 第8話「おまつりトライアングル」などで登場した大吉山(仏徳山)でしょうか。当然劇中とは違って近隣の方の迷惑になったりしないよう昼頃に行ってみたのですが、これが想像以上に大変でして……。
それこそ夜に楽器を背負っていたり、ヒールの高い靴で登るのは、「流石にしんどくね?」とか思ってしまいました。やっぱりああいう無茶は10代の若いうちにやってこそなんでしょうね。これもやっぱり、実際に行ってみないとわからないことのように思えます。
結局、一日中外を駆け回り、狭いビジネスホテルに戻ってからも疲れた体はどこへやら、『響け!ユーフォニアム』を見直し、「今日行ったあそこはこの話に出てたのか!」と確認して、短い夜が過ぎていったのでした。
その聖地巡礼に行ったタイミングは、『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』公開の1年くらい前で、人が集まる時期を避けて行ったお忍び旅行でした(まだ完全に陰キャが抜けていないので……)。
そのおかげで、公開初日に大スクリーンで見た『誓いのフィナーレ』には、「ここ見たことある!」「ここ行ったじゃん!」と思うシーンが各所にあって、映画を見ながらひとりでニヤニヤしていました。
いつかコロナが落ち着いたら、またゆっくりと回ってみたいものです。