<こんな私だけど>から「これが伊藤美来です」と胸を張って言えるステージへ――『伊藤美来 Live Tour 2021 Rhythmic BEAM YOU』レポート
「これが伊藤美来です」と胸を張って言えるような人間になれてきたと思います
朝、目覚めて、朝食を準備して食べるというショートムービーを流したあとに歌われたのが「BEAM YOU」。アルバムでもチャレンジだった2曲を、物語にして一気に歌ってしまう演出は見事だった。衣装チェンジした伊藤とダンサーが舞台セットを動かしながら魅せるパフォーマンスも、オシャレだ。
ライブの終盤は、激しい曲を並べて盛り上がる。「Plunderer」「孤高の光 Lonely dark」、そして炎の柱が立ち上がる中で歌った「Born Fighter」と、ここまでのライブの雰囲気とも違う、こういう盛り上がる曲も持っているんだと言わんばかりの3曲を叩きつけると、一転、かわいく「みんなで一緒に踊りましょう」と「恋はMovie」「Sweet Bitter Sweet Days」と続ける。
かわいいとカッコいい、この日はコロコロと変わる伊藤と彼女から生み出されるポップスの魅力にどっぷりと浸れる日だった。
本編の最後のMCでは、15~6歳の頃、初めて立った大きなステージがパシフィコ横浜で、今、ソロでそのステージに立つことができ、自分で成長とヒストリーを感じたと話し始める。
オトナになって不安を表に出さずにごまかすようになったけど、不安になったときに支えてくれたのは、「スタッフや家族や友だち、そして皆さんのコメントだったり、メッセージ……。応援は本当に支えになっていました」と涙ながらに伝える。あまり涙を見せない伊藤の想いがこぼれている姿に、こちらまでグッと来てしまった。
そして「何年か前に書いた『あお信号』という曲で〈こんな私だけど〉という歌詞を書いたけど、皆さんのおかげで、これが私です。これが伊藤美来ですと胸を張って言えるような人間になれてきたと思います」と言うと大きな拍手が起こる。最後は笑顔を見せ、最新アルバムから、これからの決意を自身の言葉で綴った「Good Song」で締めくくる。
最初は涙で歌えないところもあったが、声を出せない中で、ファンが一生懸命クラップで背中を押すと、伊藤も徐々に笑顔になり、〈もっと大きくなるの〉と歌う。そこには確かに「こんな私だけど」と言っていた伊藤はいなかった。
そこにいたのは自分のことを信じることができた……つまり自信を手に入れた彼女だった。
アンコールでは、新曲の「No.6」も初披露。先程大泣きしてしまったばかりに、ちょっと照れながら登場した彼女だったが、新曲を届け、TVアニメ『戦闘員、派遣します!』の期待を煽るという使命をしっかり全うしてライブを終えた。きっとこの曲も、伊藤美来のポップスのひとつとして、どんどん育っていくのだろう。
最後は「みんな大好きだよ」という言葉を残してステージを後にする。
毎回そうだが、結局いつも彼女の虜になってしまう。
こんな見事な成長を見せつけておいて、最後にそんなシンプルでストレートな言葉で終わるなんて、ズルすぎる。
[取材・文/塚越淳一 撮影/江藤はんな]
リリース情報
伊藤美来 8thシングル「No.6」
2021/4/28発売
DVD付き限定盤(CD+DVD) COZC-1743-4 ¥2,090 (税抜価格 ¥1,900)
通常盤(CD) COCC-17871 ¥1,430 (税抜価格 ¥1,300)
<CD収録内容>
1.No.6 TVアニメ「戦闘員、派遣します!」オープニング・テーマ
作詞・作曲:園田健太郎 編曲:千葉岳洋 演奏:Lowland Jazz
2.気づかない?気づきたくない?
作詞・作曲:竹内アンナ 編曲:名村 武
3.No.6(off vocal ver.)
4.気づかない?気づきたくない?(off vocal ver.)
<DVD収録内容>
1.No.6 Music Video
2.No.6メイキング映像