劇場版『Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 後編Paladin; Agateram』島﨑信長さんインタビュー|1部第六章から劇場版[HF]、『月姫』まで、TYPE-MOONの魅力を語り尽くす
[HF]ルートの魅力と、TYPE-MOON作品の未来
ーー第六章は、『Fate』シリーズの顔ともいえるセイバーと深く関わりのあるストーリーでもあります。島﨑さんにとってのセイバーの魅力や存在というのは、どんなものでしょうか?
島﨑:僕が当時セイバーにめちゃくちゃときめいたのは、『hollow ataraxia』で、シャツとGパン姿でサッカーをしていたシーンなんですよ。穏やかなセイバーの笑顔と『stay night』本編とのギャップもあって、今でもすごく記憶に残っていて。
けど、改めてセイバーの魅力について考えると、本当にいっぱいあるので、どこか一点を挙げるのって結構難しいですね。『Fate』シリーズのサーヴァントに共通したことですが、原典が存在しているので、バックボーンがすごくしっかりしていて、その背景を知れば知るほど好きになっていったり、何気ない一言にすごく深い意味を感じられるようになったりする。とくにセイバーの場合は、TYPE-MOONらしいおふざけでよりキャラクターとしての幅が広がったりもしていて、もうデフォルメされた存在じゃなく、一人の人間に近い魅力が詰まっているというか……。
ーーキャラクターの人生のようなものを感じられると。
島﨑:そう、それに僕ら自身もセイバーと一緒にいろんな思い出を経験してきていますから。長く『Fate』シリーズに関わって、その存在について深く知った人ほど、よりセイバーを好きになっていくんじゃないかなと。
そういう意味でも、僕がプレイした『hollow ataraxia』のサッカーのシーンには、『stay night』を含めた1人の人間の変遷を見た時のような感覚があって、グッと来たんじゃないかと思います。
ーー昨年には劇場版『Fate/stay night [Heaven's Feel]』が完結し、ついに『stay night』の物語が最後まで映像化された形になりました。
島﨑:あれは本当にいいアニメでした……。僕自身も感無量で、『stay night』の中でも[HF]ルートが一番好きなのですが、それをこれ以上考えられないくらい最高の形でアニメ化していただいたなと。ちょっと感想を聞かれても、「本当に良かった」という言葉しか出てこないくらい、本当に良かったんですよね。制作陣の方々には、ただただ「ありがとう」という気持しかないです。
……というのも、僕って人間じゃない人が人間になる物語に弱いんですよ。
ーーなるほど。まさに[HF]ルートはそのテーマですよね。
島﨑:そう、正義の味方マシーンだった衛宮士郎が、人間になるまでの物語が[HF]だと僕は思っていて。それまでの[Fate]、[UBW]ルートで築き上げてきた士郎にとっての“正義の味方”の位置づけが、[HF]だとガラッと変わるんです。だからどのルートが好きか、プレイヤーの間でも結構意見が別れたんですが、僕にはそこが一番ときめきのポイントでした。
ストーリーの雰囲気も結構違っていて、[UBW]が少年マンガ的だとしたら、[HF]は伝奇モノ的な雰囲気が強くて。『月姫』のアルクェイドや琥珀ルートにも通じる話ですけど、そういう人間ではなかった存在が人間になるというお話には本当に弱いですね。
しかも[HF]ルートが面白いのは、人間になったのが桜ではなく士郎の方だということなんですよね。そのあたりは『月姫』と違うところで、桜の方は物語を通してすごく人間臭く描かれている。そういうちょっと変わった構造も、[HF]ルートのすごいところだと思います。
ーー今回の第六章に加えて、終章の映像化も決定していますが、他にも映像化がみたい『FGO』のエピソードはありますか?
島﨑:前のお話とも被りますけど、ドラマCDでもアニメでも『CCC』コラボを何らかの形で見てみたいです。それ以外なら、もう第2部を全部映像化して欲しい(笑)。
もちろん、第1部の他のエピソードとか、1.5部も見てみたいですけどね。とくに1.5部は、OVAとか劇場アニメの尺にもハマりそうですし。けどやっぱり個人的には、第2部を最初から最後まで映像化できるなら最高だなと思います。
ーー藤丸立香役として、アニメの『FGO』に関われる醍醐味は、どんな点だと感じられていますか?
島﨑:ごく普通の人間である藤丸立香が、いろいろな英雄と交流を深め、共に戦っていく中で、その生き様を見て成長していくところかなと。藤丸にとって、英霊たちとの出会いや生き様ってどれも衝撃的で、すごく影響を受けていると思うんです。
元が普通だからこそ、その成長を一層感じられるようにもなっていて、とくにバビロニアの時はそれを強く感じました。すごい英雄や神様たちから、いろいろなものを受け取りながら、藤丸と一緒に前に進んでいける感覚が、すごく素敵だし楽しいと感じています。
ーー島﨑さんにとっての『FGO』とは、どんな存在でしょうか?
島﨑:難しいですけど、今まで随分長く一緒に走ってきた戦友のようでもあり、いろんなロマンを与えてくれた作品でしょうか。それは今も続いていて、僕だけではなくいろんな人に夢やロマンを見せ続けてくれているんじゃないかなと。
ーーこれまで長く続くと、『FGO』は日常の一部にもなっているので、終わった時というのがちょっと想像できないです。
島﨑:確かに。……けど、いつか終わりは必ず来るんですよね。その時は皆にとっていい思い出になるような形で終わってくれればいいなと。
それに、終わりというのは新しい始まりでもありますから。いつか気持ちよく終わりを迎えられるなら、それはとても素敵なことなんじゃないかと思います。
ーー劇場版の後も、TYPE-MOON関連は様々な新作が目白押しですが、TYPE-MOONファンとして、とくに島﨑さんが期待されているものはありますか?
島﨑:いっぱいありますけど、そう聞かれたらやっぱり『月姫』リメイクになりますよ!(笑)。自分が最初に触れたのが『メルブラ』でしたし、TYPE-MOONの始まりでもある作品ですから。
『FGO』に関しては、ファンとして楽しんでいるのと同時に、半分くらい制作側としての視点が入ってしまうんですけど、『月姫』にはまったく関わっていないので。純粋に1ファンとして作品に触れられるというのも、楽しみな理由かもしれません(笑)。
けど、今回の劇場版もそうですが、『月姫』リメイクであったり『メルブラ』であったり『月の珊瑚』であったり、それぞれの作品をずっと大事にしてくれる会社がTYPE-MOONなんですよね。こうしている今も、いろいろな作品の企画が、水面下を含めて動き続けていると思うので、ファンとしても声優としても、これからもいろいろな夢とロマンを見せて続けてくれるのを楽しみにしています。
ーー最後に、劇場版を楽しみにしているファンに向けてのメッセージをお願いします。
島﨑:これはずっと言い続けていることなんですが、僕個人の感想として、今回の劇場版は“円卓の物語”だったと断言できます。だからこそ劇場アニメ化する意味があったとも思っていて、原作をプレイされた方も、カルデアの視点から見た時と違う印象だったり、感想を抱けるんじゃないかなと。
僕もまだ完成した映像は見られていないのですが、台本であったり、皆さんのお芝居だったりを通して、そういった新鮮なインスピレーションを得られたのは嬉しかったですし、今回の劇場版をやれてよかったとすごく思いました。皆さんも是非、ベディヴィエールの旅路と円卓の物語を、最後まで見届けていただければと思います。
ーーありがとうございました。
[取材・文/米澤崇史 写真/MoA]
作品情報
『劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット-』前編 Wandering; Agateram/後編 Paladin; Agateram
■公開情報
後編 Paladin; Agateram
2021年5月15日(土)公開
■INTRODUCTION
2004年にTYPE-MOONが発売したPCゲーム「Fate/stay night」を発端に、
壮大なスケールの世界観と重厚な物語が呼ぶ感動がファンを増やし続けてきた「Fate」シリーズ。
そこから2015年に生まれたゲーム「Fate/Grand Order」は、今や全世界で5900万ダウンロードを突破。
現在進行形でさらなる世界の広がりを見せている。
そんなゲームの中で、全体構成を担当する奈須きのこが自らシナリオを担当し、
プレイユーザーの中でも人気のエピソード・第六特異点が「Fate/Grand Order」初の劇場アニメーション化。
2020年12月に公開された『前編 Wandering; Agateram』では、かつて仕えた王を討つべく彷徨う遍歴の騎士・ベディヴィエールが、ともに戦う仲間たちと出会い、運命に翻弄されながらも進み続ける姿を、主人公の心情に寄り添い丁寧に描き出した。
そしていよいよクライマックスを迎える『後編 Paladin; Agateram』では気鋭の演出家・荒井和人が監督を務め、キャラクターデザインは前編に続き細居美恵子、黄瀬和哉、温泉中也らが名を連ねる。
アニメーション制作は「攻殻機動隊」シリーズや「PSYCHO-PASSサイコパス」などを手掛けるProduction I.Gが担当。
物語の結末を壮大なアクションと世界観、繊細なキャラクター表現により、美しく、悲壮に描く。
ひとりの騎士が辿り着く、旅の終わりとは―――
■後編「Paladin; Agateram」 STORY
「私は今度こそ、この手で、我が王を殺すのだ――」
遍歴の騎士・ベディヴィエールとカルデア一行が足を踏み入れた特異点――西暦1273年のエルサレム。
そこは民たちが住処を追われ、三つの勢力が対峙する不毛の地であった。
白亜の城を築き、民を殺戮する獅子王と「円卓の騎士」を討つべく、ベディヴィエールらは「山の民」と協力し立ち向かう。
大切な仲間をも喪う死闘を終えた彼らは、強大な力を持つ「太陽王・オジマンディアス」に同盟を持ち掛ける。
しかしオジマンディアスは獅子王の計画を明かし、自らの民を守るためにその提案を一蹴する。
獅子王の真意を知り慄くベディヴィエールたちだったが、仲間たちとともに、その目的を阻止すべく、聖都・キャメロットへの進撃を決意するのだった。
そしてついに、聖都決戦の日を迎える。
冷酷非道に成り果てた獅子王の真の狙いとは。
滅びの約束された世界で、人類を救済する方法とは。
赦されぬ罪を背負い続けたベディヴィエールの迎える結末とは。
―――最も哀しく、美しいFate、ここに完結
■後編「Paladin; Agateram」 STAFF
原作:奈須きのこ/TYPE-MOON
リードキャラクターデザイナー:武内崇
監督:荒井和人
構成:小太刀右京
脚本:小太刀右京・荒井和人
キャラクターデザイン:細居美恵子・黄瀬和哉・温泉中也
サブキャラクターデザイン:乘田拓茂・山本彩・原由知
総作画監督:椛島洋介
プロップデザイン:吉田大洋・原由知・岩永悦宜
美術設定:小木斉之・イノセユキエ・伊井蔵・吉田大洋
コンセプトアートデザイン:竹内敦志・coralie nagel
美術監督:野村正信
色彩設計:上野詠美子
撮影監督:荒幡和也
3Dディレクター:名倉晋作
3DCG:I.G3D・directrain
モーショングラフィックス:大城丈宗
編集:濱宇津妙子
音楽:芳賀敬太・深澤秀行
音響監督:明田川仁
アニメーション制作:Production I.G
配給:アニプレックス
主題歌:宮野真守「透明」(キングレコード)
■後編 Paladin; Agateram CAST
ベディヴィエール:宮野真守
藤丸立香:島﨑信長
マシュ・キリエライト:高橋李依
レオナルド・ダ・ヴィンチ:坂本真綾
獅子王:川澄綾子
ガウェイン:水島大宙
モードレッド:沢城みゆき
ランスロット 置鮎龍太郎
トリスタン 内山昂輝
アグラヴェイン:安元洋貴
オジマンディアス:子安武人
ニトクリス:田中美海
玄奘三蔵:小松未可子
呪腕のハサン:稲田徹
静謐のハサン:千本木彩花
ロマニ・アーキマン:鈴村健一