「お仕事もの」「サスペンス」「恋愛もの」……さまざまなジャンルの要素を内包した、今一番押さえておきたい漫画『【推しの子】』のあらすじや魅力を紹介!【ネタバレあり】
第153話~第162話のあらすじ【詳細なネタバレあり】
アイが初めて愛した人
綿密な取材と、役者陣の迫真の演技によって生まれた『15年の嘘』は素晴らしい映画だと評した上で、それでもこの物語は“フィクション”であると語るカミキ。
実際のカミキとアイは、映画のように気持ちが通じあっていたわけではなく、もっと一方的な依存関係だったと続け、自分はアイに愛されていなかった、逆恨みして彼女を殺した、と淡々と語ります。
自分が裁かれることがアイの望みであると理解し、立ち去ろうとするカミキ。アクアは彼を呼び止め、映画の最後に入れるか協議中であるという一本の映像を見せます。それは、アイが成長したアクアへ向けて撮ったビデオレターの中で、カミキに対する想いを語っている部分でした。
壊れる寸前まで精神的に追い詰められていたカミキにとって、自分とお腹の中の子どもが負担にならないよう、あえて離れる決断をしたこと。それでも本当はずっと一緒にいたかったこと。愛が何なのかわからない自分にとって、初めて愛したいと思った人だったこと。「君を愛せない」という“嘘”をついた後も、ずっとカミキのことを想っていたことが、アイの口から語られていきます。
アイの本当の想いを15年越しに受け取り、カミキは膝から崩れ落ちるのでした。
最後の嘘
カミキへの復讐を終え、いつもの日常へと戻っていくルビーとアクア。B小町のライブツアーがスタートし、ルビーは今まで以上にまばゆい光で、多くの人を魅了していきます。
しかし、まだすべてが終わったわけではありませんでした。裏でカミキとつながっていた、B小町の元メンバー・ニノが、ルビーの殺害を企てていたのです。アイを妄執するニノが、彼女以上の輝きを持つ者を排除する可能性がある、と察知したあかねによって、なんとか阻止に成功します。
そんな騒動があったライブツアー最終日の夜。カミキは海辺で一人、何事もなかったかのようにライブ配信を眺めていました。今度こそ決着を付けるべく、アクアが現れ、彼を「醜悪な嘘つき」と罵ります。その言葉にもまるで動じず、どす黒く輝く光を目に宿しながら笑みを浮かべるカミキ。彼の心はすでに壊れ切っており、アイを絶対の存在にするために、周囲の人間をそそのかして、他の“才能ある者”を殺害していくだけの怪物となり果てていました。
カミキが決して更生することはなく、妹の未来を脅かす存在でしかないことを確信したアクアは、ナイフを彼に向けます。カミキはなおも笑みを浮かべ、自分を殺せば、ルビーは「人殺しの妹」として生き続けることになると脅します。
脅しに屈し、思いとどまるかに見えたアクアでしたが、彼はすでに覚悟を決めていました。カミキを殺した上で、ルビーに「人殺しの妹」という十字架を背負わせない、ある“シナリオ”を用意していたのです。それは、「自伝映画によって罪を告発され逆上したカミキが、アクアと刃傷沙汰になり、ともに転落死した」というもの。
妹を守るための最後の“嘘”を演じ切る決意を胸に、アクアは自身の腹にナイフを突き刺し、カミキとともに海へと落下します。抵抗を続けていたカミキでしたが、ついには自身の死を悟り、アイへの未練を最後まで口にしながら絶命するのでした。
薄れていく意識の中、自身が生まれ変わった意味を考えるアクア。それはきっと復讐のためではなく、妹を守るためだった、と最愛の人の笑顔を思い浮かべながら、冷たい水底に沈んでいくのでした――。