angela『はめふら』2期OP曲「アンダンテに恋をして!」発売記念インタビュー|『はめふら』との出会いから生まれた新しい引き出し。今作も『はめふら』ファンへのサプライズや仕掛けもいっぱい!
歌詞のフランス語はKATSUさんのオーダー。主人公・カタリナらしさも
――ベートーヴェンはドイツの作曲家ですが、歌詞にはたくさんのフランス語が?
KATSU:作品はヨーロッパ風の世界観なので、フランス語を歌詞に入れたいとatsukoに言って。「ボンジュール」とか単純な単語を。
atsuko:「ボンジュール」なんて入ってないよ! 超テキトー(笑)。
KATSU:そうだった。「ウィ セボン」とか「トレビアン」とか。作中に出てくる文字を見ると、どの国のものでもない異世界のものだったので、アニメ制作サイドに「歌詞にフランス語を使っていいですか?」と確認を取らせていただいたら「大丈夫です」と言っていただいて。
――「愛してる」とか「素晴らしい」、「良い」を意味する聞き慣れたフランス語なのも。
astuko:「乙女のルートは―」で急に3拍子になったり、「運命」のフレーズが入ったり、声色が変わったりといろいろやりましたが、この曲ではそういうトリッキーさではなく、意味はよくわからないけどキラキラ感がある言葉を散りばめて。
メロディを言葉で着飾っている感じでしょうか。内容もただのラブソングではなく、ヒロインのカタリナに寄せていて。彼女は深刻なシーンになるとお腹が鳴ったりしまうので、そういう部分も伝わるといいなと。
――ちなみにタイトルになぜ「アンダンテ」を使われたのでしょうか?
atsuko:「歩くくらいの速さ」を意味する音楽用語で、シナリオを読むと、1期よりもカタリナがモテて。いろいろな人に言い寄られて、抜けがけを狙う人が出てくるくらい。男性陣が結論を急ぐけど、ゆっくりと歩くくらいのスピードで恋をしましょうという意味で付けました。
KATSU:2期のタイトルに「ダブルシャープ」があるからじゃないの? Xみたいな記号はシャープの1つ上を意味していて、アニメの2期ということにつながっているから、曲名にも音楽用語を使ったのかなと。
atsuko:歌詞を書いている時は「ダブルシャープ」が付くことを知らなかったから。
KATSU:じゃあ、音楽用語に合わせましたということで(笑)。
――コミカルで楽しい曲なのに音楽性から歌詞、タイトルまで深い曲ですね。
atsuko:嬉しい! 私の悪いクセでシナリオを読ませていただいている分、内容を知り過ぎてしまって、説明くさくなる時があるんです。デモをレコーディングする時に「難しい」とか「わかりにくい」と言われて、何度も書き直して。
やっぱり聴いていただく人にすっと入るものがいいと思っているので、簡単に考えているように見えて、実は深いんですねと言われることは嬉しいです。
『はめふら』と出会うことで、生まれた楽曲であり、本来、自分にはない引き出しから出てきた不思議な感覚で。長く続けてくると自分たちの中でも「angelaってこういうもの」とイメージが固まりがちですが、『はめふら』のおかげで、私たち自身も「angelaってこんなこともするんだ!?」という発見をさせてもらえて新鮮な気持ちです。
――いろいろと詰め込まれたサウンドなので、TVサイズに合わせるのは大変だったのでは?
KATSU:「乙女のルートは―」のほうがスムーズだったかも。キャッチーな部分は『はめふら』の曲としては必要不可欠で、どう視聴者の方の心に引っかかるようにするのかは悩みました。なにせ「スーパーアニメイズム」枠なので。
atsuko:そこにこだわるね(笑)。
KATSU:だって、『呪術廻戦』がやっていた枠だよ! そこはヤバいぞと。
――atsukoさんの歌い方もニュアンスをたっぷり込めたり、コミカルで楽し気なのがいいですね。
atsuko:実は歌うのはすごく難しくて。サビはキーが高いんですけど、それ以外のところは私にとっては低めで。これ以上、低くなったら声が抜けてしまうし、かといってAメロを高く歌うとサビが高すぎて歌えなくなるし。
ギリギリのところで歌ったんですけど、それでもAメロが低くて。そのまま歌うと重苦しく聴こえてしまい、監督が求めていたステップを踏むような軽やかさが出なくなってしまうし。
オケのテンションに合わせるのにかなり苦戦しましたし、今後ライブなどで歌う時も大変だと思うので、一生懸命練習しないといけないと思っています。
KATSU:17年前のシングル「Shangri-La」の時も同じこと言ってました。
atsuko:「Shangri-La」は最近やっと歌えるようになって(笑)。当時は絶対歌えないと思っていました。
MVではangelaもポルカに挑戦! 撮影への姿勢でわかるKATSUさんの意外な生真面目さ!?
――atsukoさんほどのボーカリストが苦戦するほどの難しい曲なんですね!? アイリッシュの雰囲気の部分はライブでもダンサーさんが踊ったりするイメージが湧いてきて。楽しみです。
KATSU:MVでも僕らとダンサーさんが、『はめふら』の世界観のようなお屋敷風の場所で、ポルカっぽいダンスを踊っています。
astuko:KATSUさんが珍しく、ギターも持たずに、振付指導まで受けて、ステップを踏んだりして。
KATSU:しょぼいので期待しないでください。
atsuko:できない部分を大きな動きでごまかしているよね?
KATSU:技術だよ(笑)。「叫べ」とか「SURVIVE!」みたいな音楽をやりたくて、岡山から上京してきたはずなのに、このMVの撮影中にはなぜか幸福感を感じて。振付を教えてもらって、踊るなんて、こんなに新鮮なんだと。
atsuko:意外とまじめだなと思ったのは、河口湖で撮影したんですけど、前日の夜中に出発した車の中で、人間の形で動きを1つひとつ描いたメモをずっと見て覚えていて。
KATSU:振付には譜面がないから。
atsuko:でも振付の先生に教わったことを動画で撮影し、共有して、私はその動画を見ながら家で練習しました。同じ動画が送られているはずなのに、なぜ直筆の絵で、動きを描いたんだろうと、驚きしかなくて。
KATSU:あれが僕にとっての譜面だから。せっかくだからグッズ化する?(笑)
マネージャー:でも撮影当日はダンスNGが1回もなかったんです。
――すごいですね! でも今回踊っているMVを見たら、別のMVを撮影する時にKATSUさんを躍らせる演出をする方が増えるのでは?
atsuko:ライブで披露する時もKATSUさんも一緒に踊ればいいじゃんってなりますよね。
KATSU:いやいや。めっちゃ、大変だったし、あの時のメモもどっかにいっちゃったから。でもあの振りを1時間で覚えてしまうダンサーさんってすごいですね。
atsuko:KATSUさんのダンスと謎の楽器さばきも注目です。
KATSU:それはともかくとして(笑)、僕らとダンサーさん以外に登場する人形たちのドラマもおもしろいですよ。
――カップリング曲「愛を謳う」はどんなイメージやテーマで制作されたのでしょうか?
atsuko:「アンダンテ―」でベートーヴェンの「第九」のフレーズを使っているので、カップリングもクラシックのフレーズを使ってみるのはどうだろう? と。
80年代にヒットした「キッスは目にして!」(ザ・ヴィーナス)はベートーヴェンの「エリーゼのために」のカバー曲ですが、そのようなクラシックのメロディを使ったポップスを作ったらおもしろいかもという発想から始まりました。
そして聴き覚えがあるけど、誰の曲なのかわからない線を目指そうと。そこで、私が小学生の時にトロンボーンで吹いたことがあるムソルグスキーの「展覧会の絵」という組曲の中の「プロムナード」が思い浮かんで。
それをangela流にアレンジしたメロディ感で楽曲を作っていきました。メンデルスゾーンの「結婚行進曲」も入っているのは、制作途中でKATSUさんが「間奏に『結婚行進曲』を入れられるから結婚を意識した感じでよろしく」と。
KATSU:間奏の部分に空白の8小節みたいなものがデモにあったので、埋めなくてはと。「展覧会の絵」は跳ねたシャッフルのリズムではないけど、最初から跳ねて歌ったらおもしろいな。
跳ねてるクラッシックって何だろうと考えたら「結婚行進曲」が浮かんできて、すぐatsukoに電話して、「ハッピーな歌にしてくれ」と頼みました。うまくハマったんですけど、ワグナー作の「結婚行進曲」もあることを知り、そちらも入れて。結果的に3曲のクラシック曲が入っています。
――すごいハイブリッドな楽曲ですね。でも最初に結婚というテーマから制作されたのかと思っていました。
atsuko:完全に後付けで、クラシックのゴーヤチャンプルみたいな(笑)。本当なら「友達や知り合いが結婚するので作った曲です」みたいなエピソードが美しいんでしょうけど……。
KATSU:今、世に出ている音楽の源流はクラシックなんですよね。僕らは以前、『蒼穹のファフナーEXODUS』の特殊ED曲として流れた「愛すること」の中で、カノンというキャラクター回でもあったので、サビにバッヘルベルの「カノン」のフレーズを使っていますが、それも後から思い付いた発想でした。
このメロディとコード進行なら入れられるなと。クラシックの偉大さを改めて実感しました。
――リリース日の7月7日は七夕で、織姫と彦星にロマンスにも掛かっているのかなと。
atsuko:私たち、ロマンチック第一主義なので(笑)
KATSU:それが本来のangelaの姿です。
――それはともかくとして(笑)、結婚式の入場テーマにピッタリですね。
atsuko:今は結婚式を挙げることも難しい状況ですが、いつか式を挙げる方がいらっしゃったら使ってほしいですね。
KATSU:歌詞カードのクレジット等で確認していただきたいんですが、「アンダンテ」にはすごいミュージシャンが参加してくださっていますが、この曲も予算は気にするなと言ってくれたので惜しみなく。ほぼ全部、生というぜいたく極まりないシングルになりました。