メメンプーとガガンバーの親子関係から見出した普遍性とは──秋アニメ『サクガン』天希かのんさん×東地宏樹さん×豊永利行さんインタビュー
作品成功の鍵は、メメンプーの可愛さ!?
――では、3人のキャラクターについてお聞きします。それぞれ、演じてみてどういうところに魅力を感じましたか?
天希:メメンプーは男手ひとつで育てられたゆえに、いい意味で少年味があるというか、いわゆる「女の子らしい少女」ではないんです。そこがとても魅力だと思いますし、演じる上でも“ガキ大将”のような部分を大事にしています。ただ難しいのは、経験値がないから幼いのであって、経験値があるのに幼くしようとしたら偽物になってしまうというか。
メメンプーは9歳ながらにして天才で、むしろ私よりも頭がいいから、想像で経験値を補っていると思うんですよね。それでいて体だけ9歳なのが面白いですし、あの小さい体から生意気な言葉がどんどん出てくるのも本当に可愛らしいです。
東地:和田(純一)監督が最初に、「メメンプーが可愛ければ、この作品は成功する」と言っていたんですが、確かにそうなんですよね。僕の役(ガガンバー)はメメンプーのことが大好きなので、僕の目にメメンプーがどう可愛く見えるかを気を付けて演じています。可愛く見えるのであれば面白い作品になるだろうなと。メメンプーっていろいろな表情を見せるじゃないですか。その可愛さと頭の良さのミスマッチも、キャラクターの魅力を醸し出している気がします。
豊永:そうやっていろいろな表情を見せるメメンプーに振り回されているのが、ガガンバーですよね。だから、男目線だとガガンバーに感情移入するというか、そこに自分を照らし合わせて「メメンプー可愛い」になる気がしていて。ガガンバーのリアクションが、見ている自分たちを代弁する形になっているのでは?と思うんです。
ガガンバーがいてくれるからこそ、「そうそう、そうだよね」と。そうした共感性によって、よりメメンプーの解像度が鮮明になっていると思うので、ガガンバーが(魅力を引き出す)一助をしている感覚もありますね。
――完璧なパスをありがとうございます。その流れで、ガガンバーの魅力についてもお聞かせください。
東地:(普段は)だらしない感じの中年男性が、やる時はやるって素敵じゃないですか。しかも、子供思いで。昔、石立鉄男さんと杉田かおるさんが出演していた『パパと呼ばないで』というドラマを思い出したんですよね。真似するとかではなく、石立鉄男さんならこういう風にやるだろうなとイメージして。
おそらく、こういう親子関係に共感を覚えるのは、普遍性があるからだと思うんです。だらしなく生きているようで、娘には軽んじられているけど……というのは、親しみやすいですし。でも、自分が同じようにだらしなく生きられるかと言ったら、難しいですよね。家庭を持っているとなおさら。だから、擬似的にそういうことをやるのは、演じていて楽しかったです。
――キャラクターの説明文に「かつては『疾風のガガンバー』の異名をとる凄腕のマーカーだった」とありますから、そういう面での活躍も期待されるところです。天希さんだったら、こんなお父さんどうですか?
天希:だらしないとおっしゃいましたが、ガガンバーの魅力は「メメンプーが上に立っている“つもり”でいられる」ことだと思うんです。「本当にうちの父親はだらしなくて、頼りなくて。だから私がしっかりしてるんだ」って自尊心を保たせるために、普段はだらしないフリをしているのかなって。「疾風のガガンバー」と呼ばれていることをメメンプーが知らないのも、親の愛ですよね。
そうやってオーバーにだらしなく、敢えて格好いいところを見せないでいるのに、いざメメンプーが危機に陥ると、「娘には指一本触れさせねぇ!」って頼りがいがある。そういうところが本当に憎たらしくって格好いいなって思います。
――その2人と絡んでくるのが、ハッキングの腕が超一流であるユーリです。
豊永:ユーリも(メメンプーと同様に)IQがすごく高いと思うんですよね。組織のリーダーではあるけど意外と子供っぽいところもあって、メメンプーの二面性と相反するポジションのような感覚を受けました。だからこそ、ちょっとメメンプーと気が合うというか。
やる時はしっかりやりますが、ガガンバーと一緒に悪ふざけをすることも結構あって、やっぱり男の子だなと感じますね。メメンプーからしたら、年齢が近い人との出会いは珍しいので、なんとなく近い感じの人という感覚だったと思います。とはいえ、ガガンバーっぽさもあるから、やんややんや言ってくるんでしょうけど(笑)。
天希:お兄ちゃんっぽいところがあったりしますからね。原案を読んで、私はユーリが一番好きなんですよ。メメンプーは「自分が見たいものを見に行く」、ガガンバーは「自分の大好きな娘を守る」と、自分の目標を遂行していくんですけど、ユーリの目的は「この世界を変えたい」なんです。
PVでも「そのぐらいしないと、このコロニーは変わらない!」と啖呵を切るシーンがありますし。それもある種のエゴなのかもしれないですけど、自分の能力を周りのために使うことを芯に置いているところが、本当に格好いいなって思います。
豊永:なんか一人だけ哲学なんだよね。
天希:そうなんです。正義のヒーローというか、憧れる存在だなと思って。PVの第2弾では、このセリフを抜き出してくれてすごく嬉しかったです。
クオリティの高い映像は、毎回300カット超!
――PVの話も出ましたが、実際の映像を見たときはいかがでしたか?
東地:クオリティの高いワクワクする仕上がりになっていて、改めてすごい作品に出させてもらっているんだなと再認識しました。やっぱり絵のクオリティの高さは重要じゃないですか。見ていると大体わかるんですよ。「このアニメはいくらかかっている」とか「有能なスタッフが集まっているんだな」とか(笑)。これだけ多くのアニメ作品がある中で、今期はどれを見ようかなと考えた時に、あのPVを見てオンエアを見ない人はいないんじゃないかと思います。
天希:この作品は、ものすごくカット数が多いんですよ。最初の頃、私が台本を見ていろいろ勉強していると、その横で「今回も300カット超えたね。こういうことあんまりないんだよ」と毎回毎回言われて(笑)。
豊永:300カット超えているのは、本当にすごいと思いますね。
天希:そう言われてからは、私も気にするようになって。今では「今回も300超えましたね」って自分から言ったりしています(笑)。
豊永:映像に関しては、3Dと2Dの境界線というか馴染ませ方にも力が入っていると感じました。東地さんがおっしゃる通り、「金かかってるぅ〜!」と(笑)。
あと、僕は「ザツダン」を通して制作にどんな人が関わっているかまで知っているので、いよいよここまで来たな、って感覚もありました。どちらかというと、作り手側の感覚というか。実際に動いている映像を見て「うわっ! すげー!」と思ったのと同時に、「作監さんすげー頑張った!」とか思っちゃって(笑)。これが、一所懸命作ったものが世に出た瞬間の感覚なのかなと思って、声優だけの参加とはちょっと違いましたね。
――制作陣でいえば、例えば河森正治さんがカイジュウコンセプトデザインで参加されていますし、とても豪華ですよね。
豊永:そうですね。クレジットを見てテンションが上がるタイプの視聴者さんにとっては、コアな楽しみ方もできるんじゃないかなと思います。
――いろいろな面で楽しみです。それにしても、3人は世代がそれぞれ違っていて、バランスも面白いですよね。
東地:そうですね。この3人でラジオをやっているのも不思議ではあります。
豊永:ご本人を目の前に言うのもあれですけど、東地さんめちゃめちゃ優しいんですよ。こんなに同じ目線に立って喋ってくださる先輩はなかなかいないと思いながら、いつもお話しています。以前、舞台でご一緒したこともあって、ラジオのパーソナリティが決まったときに「東地さんだ! 嬉しい〜」とすごく思いましたね。
東地:そのまま言葉を返すようですけど、トシがいなくてこっちが番組を仕切らなきゃいけなかったと想像したら……ゲロ吐きそうになります(笑)。
豊永・天希:あははははは!
東地:トシがいてくれる、仕切ってくれる、というのがまず先に立っちゃって。トシとは偶然2回ほど舞台を一緒にやっているんですけど、トシとじゃなかったらこんな風にラジオを出来ているのかな?と思ったりします。やっぱり相性ってありますから。トシは本当に何を言っても拾ってくれるので、気を使う必要がないんですよ。
気を使うことがあると辛いし、楽しめないじゃないですか。それが全くなくて。これだけ声優がいる中で、この3人でやらせてもらっているのはラッキーだなと思います。