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カナタの新シリーズ「トライアングル」いしいのりえ×岩田光央 特別インタビュー【後編】

小野大輔さん、日野聡さん、菅沼久義さんとつくりあげる優しい作品――いしいのりえさん・岩田光央さんが“大人の女性の恋愛”をテーマに活動するカナタ、11年目の新シリーズ「トライアングル」特別インタビュー【後編】

イラストレーター・いしいのりえさんと声優・岩田光央さんのふたりで活動中のクリエイターユニット「カナタ」。活動11年目に突入し、新たに「トライアングル」シリーズを始動させた。

インタビュー記事の前編では、10年前から作り続けてきた「あぶな絵、あぶり声」について振り返っていただいたが、後編では新シリーズ「トライアングル」について語っていただいた。

★後編はコチラ

恋愛を研究しつづける作家から見た時代の変化

――いしいさんは「官能小説研究家」としても活躍されていますが、この10年間で恋愛のカタチはどのように変化しましたか?

いしいのりえさん(以下、いしい):大きく変わってきていると思います。「恋愛対象が同性」という人を、ちらほら聞くようになりました。私の周囲にもいます。カナタとは別の仕事ですが、私は不倫をしている方のインタビューを書いたりしているのですが、先日お話を聞いた方は不倫相手が同性の女性とおっしゃっていました。しかも、それをサラッと言うんです。

――男性と結婚をしているのに、女性と不倫しているということですね。

いしい:そうなんです。それと、ここ10年で変わったことと言えば、恋愛に興味がない人も増えてきたと感じています。「恋愛するくらいなら家でゲームを遊んでいたい」と言うんです。

岩田光央さん(以下、岩田):それは僕も感じますね。僕は以前、若い女の子たちが出演する朗読劇を演出させてもらったのですが、テーマが恋愛だったんです。出演者10人くらいと会話をしていたら、その中で「現実世界での恋愛はあまり興味がない」と言う子がいたんです。いまの時代はバーチャル世界で満たされるコンテンツが多すぎて、その世界に夢中になることで足りてしまっているそうなんです。それを聞いてびっくりしました。

――アニメやゲームなど、コンテンツがたくさんある時代ですからでしょうか。

岩田:別件でも若い男の子と話したときに、同じようなことを言っていました。没入できるコンテンツがここまで豊かになって、それを見ていると足りてしまうそうです。僕は昭和の人間なので、若いころは頭の中が「車、女、セックス!」でした(笑)。いまと比べると、とても単純な青春時代を送ってきました。

一同:(笑)

岩田:いまの時代は「LGBTQ」のように、性が細分化されてきています。セックスに対して興味はないけど、行為だけする人もいます。僕らは恋愛をテーマにした作品を作って演出しているので、「いつまでも昭和のおじさんのままでいてはいけないんだな」と、若い子とコミュニケーションを取っていて痛感しました。

この部分をしっかり理解していかないと、恋愛をテーマに活動している団体でいられません。僕も、のりえちゃんも、時代としっかり向き合って考え続けていかなければならないと思っています。

――おっしゃる通りだと思います。

岩田:言葉遣いひとつにしても、注意しなければなりませんね。間違ったら謝るしかありませんが、発信する側としてはそこまで意識して作品を作らないと。僕らものづくりの人間は、変えないことと変えるべきことを、うまくバランスを取る必要があります。実はそれが楽しいところでもあるんですけどね!

鋭意製作中の「トライアングル」は“魅力”より“身近”に感じられる作品に進化

――11年目として再始動するカナタの次の公演「トライアングル」について伺います。現在はどのような状況でしょうか?

いしい:まずは原稿ができて、チェックをしている状態です。チェックが終わったらアートディレクターとイラストについて打ち合わせをして、私が絵を描いていきます。それと同時に、岩田さんが演出を考えて、それに合った音楽を発注します。

岩田:いつも先行して忙しいのが作家ののりえちゃんで、僕はその後に忙しくなります。まずは舞台よりも先に朗読を収録するのですが、今回の「トライアングル」からはCDではなくて、デジタル配信になります。

――CDがなくなってデジタルダウンロードのみですか? それも時代ですね。

岩田:ですよね! いま僕もすべてスマホなどで音楽を聴いてます。CDからデジタル配信になって、僕はとても助かっています。いままではCDの制限で74分までしか収録できなかったけど、デジタル配信は上限がありませんから。

――ですが、尺が長いとそれだけ編集作業が大変なのでは?

岩田:それが違うんです。いままでのカナタは74分に収めるために、ものすごく時間を費やしてきたんです。もっと“間”を大切にしたいのに、もっと曲を入れたいのに、74分の制限のためにカットしてきました。デジタル配信になる次回からは、尺を気にせずに、自分の思い描いた間で物語を作れます。

――いままでは74分にまとめる作業に時間がかかっていたんですね。

岩田:ものすごくかかっていました。役者さんの間が素敵だから大切にしたい、でも音楽ももっと入れたい……。ずっとジレンマと戦いながら編集していました。そうそう! 音楽に関してですが、「トライアングル」からはピアノだけでなく、楽器をひとつ増やします。

――楽器が増えると雰囲気も変わりそうですね。

岩田:そうだと思います。ひとつ増えるだけなのでそれほど大きくは変わらないと思いますが、いままで楽しんでくれたファンの方は変化を感じてもらえると思います。

――先程の年齢制限やデジタル配信など、いままでの「あぶな絵、あぶり声」シリーズからリニューアルしてよかった部分が、とても多いですね。

岩田:そうなんです。でも、これはいままで10年続けてきたから、このようなポジティブなリニューアルができるのだと思います。この10年間はもちろん楽しかったけど、これからの10年はもっと楽しみです。もちろんプレッシャーはあります。「いままでと変わらないじゃん」と言われたら、すごく悔しいからね!(笑)

一同:(笑)

岩田:いい意味で変わらないのは喜ばれると思いますが、演出が変わらないと思われたり、以前のほうがよかったと思われたくありませんからね。「カナタの世界観が膨らんだ」と思っていただけたら。これから大変ですけどがんばります。

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