1年半ぶりに有観客で『FLOW THE CARNIVAL 2021~新世界~』開催! 我慢の時期は続くけど音楽は無くならない。一人じゃない。孤独じゃない。──FLOWライブレポート
FLOWが2021年8月9日(月・祝)、ワンマンライブ『FLOW THE CARNIVAL 2021~新世界~』を東京・LINE CUBE SHIBUYAで有観客&配信にて開催した。
全アルバム再現配信ライブ「FLOW SPECIAL ONLINE LIVE 全アルバム網羅 炎の12ヶ月」で画面越しでライブを届けてきたFLOW。有観客ライブは、昨年2月幕張メッセで行った『FLOW 超会議 2020 ~アニメ縛りリターンズ~』以来、約1年半振りとなる。しかも7か月延期の末での待望のライブとあって気合十分。しょっぱなから、宮城県名取市の「閖上太鼓保存会」との和太鼓のサプライズ生演奏で観客を歓迎してみせた。
和太鼓特有の力強い音が身体に振動し、血湧き肉躍る。実は閖上太鼓保存会とFLOWの付き合いは長く、東日本大震災でのボランティア活動で知り合ったことをきっかけに交流を深めてきた。エイズ啓発活動と震災復興へのチャリティーイベント「Act Against AIDS in SENDAI」では7年連続でオープニングアクトをお願いしている。そのため、久しぶりの再会を喜んだファンも多かったのではないだろうか。「大きな声を発せられないからこそ」と、グッズで作られたFLOWお手製の鳴子やペンライトでファンが応戦した。
待望の有観客 だからこそ気合い十分
お祭りならではの和のパフォーマンスで「新世界」の入り口に立った私たち。カラフルにライトが反射する中、その名の通り初期衝動たっぷりの「衝動」で、新世界への狼煙を上げる。
「衝動」は今年1月にリリースしたシングル「新世界」に収録されたハードなナンバー。冒頭の<ピンチはチャンス 痛みとダンス 塞いだ悲観さえ吹き飛ばす ピンチはチャンス 光のバウンス 災い転じて福となす>という言葉は、コロナ禍だからこそ、脳天を劈くメッセージとして響く。さらに、<オーディエンス ディスタンス スタンス>と時代を見透かしたかのような、インディーズ時代の楽曲「プラネットウォーク」、『サムライフラメンコ』OP「愛愛愛に撃たれてバイバイバイ」で序盤を畳みかけた。
「みんな超久しぶり!元気してた!?」と手を振るKEIGO(Vo.)。ファンが拍手と鳴子で返事をすると「新しいなぁ」とKOHSHI(Vo.)と笑う。「1年半振りだね。本当に、来てくれてありがとう! 声が出せない状況だけど、今やれる全力で、今日しかできないライブを、ここにいる全員と配信で参加してくれるみんなと一緒で、思いっきり楽しんでいこうぜ!」と叫んだ。
「最後までよろしく!」という掛け声から始まったのは「CALLING」でオーディエンスを色とりどりの世界へと誘っていく。
『HEROMAN』のエンディングテーマであり疾走感あふれる「CALLING」、疾風とフィーチャリングした「魑魅魍魎」、GOT'S(Ba)が作詞作曲を手掛けた低音ベースと高速ラップがフィーチャーされた「秘密の作戦」、『コードギアス 反逆のルルーシュ』前期オープニングテーマを彩った「COLORS」と、四者四様の楽曲を披露。中でも「秘密の作戦」の盛り上がりは凄まじく「皆さん頭振る準備はできてますか⁉ 全員で頭振るぜい!」と間奏でヘッドバンギングの嵐を巻き起こした。だからこそ、凪のように穏やかな「COLORS」が映える。
閖上太鼓保存会と名曲「メロス」を
「FLOW THE CARNIVALはすごく久しぶりで。“アニメ縛り”日本青年館(2017年12月)になります。まさにここ、“渋谷C.C.Lemonホール”という名称だったときの2008年にFLOW THE CARNIVALをやっているんです。その時もオープニングは和太鼓でした。で、今日は閖上太鼓保存会の皆さんと和太鼓で」とKIEGO。すかさずKOHSHIが「閖上太鼓保存会とはズブズブの関係でね……」とニヤりと笑い「いやいや、言葉選んで!」とKEIGOにツッコまれながら、閖上太鼓保存会との交流を振り返った。そして再度、閖上太鼓保存会をステージに招き客席から鳴子が響いた。
閖上太鼓保存会と温かなやりとりを交わしたあと「せっかくなんでコラボやっちゃってもいいですか?」と、応援歌「メロス」を競演。曲中、客席がたびたび明るくなり、クラップと鳴子で参加する観客も含めてのコラボレーションであることにハッとさせられた。閖上太鼓保存会の中心人物のひとり“ジイ”の「カンッ」という少しユルめの締めに、TAKE(Gt.)が思わず笑みをこぼす。そしてメンバーが次々と「ジイ~!」と愛を込めて叫び、拍手を送った。
「それじゃあもっともっとあがっていこうぜ!」とKEIGO。高速スカが盛り込まれた「休日」、ライブで育ててきた「アイオライト」、KOHSHIがギターを持ちロックンロールナンバー「Shakys」と、ハートフルで眩しいナンバーを連射した。
中盤は“聴かせる”ブロック。KEIGOがハーモニカを添えたバラード「旅人」は、鳥が世界中を旅する映像と共にお届け。「みんな一緒に」とTAKEがハンズクラップを呼びかけた「光」では<だからとてつもなく楽しくて だからとてつもなく愛しくて だから大切なんだ>と目の前にいるファンと画面の先にいるファンへと優しく語り掛けるように歌った。
2組目のゲストとの芸術的なコラボレーション
ここでTVアニメ『バック・アロウ』2ndクールエンディングテーマ「United Sparrows」の幻想的なイントロが流れると、MVに出演したダンサーふたりが白の衣装をまとってステージに登場(!)。MVで水中パフォーマンスを披露したRuu、YOHがコンテンポラリーダンスで壮大な世界を魅せた。実はダンサーふたりは「United Sparrows」の撮影が初対面だったそう。MV制作の裏話を披露しつつ、「Ruuさん、YOHさん、ふたりのおかげで今までにないMVになった」とKEIGOが拍手を送った。KOHSHIが「俺たちにないような芸術性を見せてくれた」と言うと、「芸術指数がめちゃくちゃ高いからね。俺たちはいつも“イエーイ!”だから(笑)」とKEIGO。
そんな“イエーイ!”なハイテンションなライブを繰り出したクライマックス。「もっともっとやっちゃうよー!」と宣戦布告すると、「AWAKE」を投下。鳴子にハンズクラップ、さらにワイパーと、<まわれまわれ地球よ>という歌詞がピッタリなほど観客の動きも目まぐるしい。そこから思いきり天高く拳を上げた「虹の空」(アニメ『NARUTO - ナルト- 疾風伝』エンディングテーマ)。さらに“心の声”でシンガロングをした「風ノ唄」。FLOW恒例の “ビック・ウェーブ”をぶちかました「GO!!!」(メンバーそれぞれがマイクを回し、それまで寡黙にドラムをたたき続けてきたIWASAKI参加!)と、ファンは声こそ出せないものの、ライブならではの極彩色の光景を一緒に作ってみせた。
そんな景色を嬉しそうに眺めながら「まださ、我慢の時期はちょっと続いちゃうかもしれないけど、音楽はなくならないでしょ!? これからも作っていこうよ、全員で! 俺たちが新しいもの、作っていこうぜ!」とKEIGOが叫び、本編ラスト、1月に発売したシングルのタイトル曲であり、ライブタイトルでもある「新世界」へ。
TVアニメ「シャドウバース」オープニングテーマ「新世界」は<僕らは 愛のまま 愛のまま 飛び出すのさ>と新世界へ突入することを高らかに歌った曲。FLOWはこれまでも“世界”という言葉をたびたび曲の中に入れ込んできた。中でも世界ツアーを終えた後に発表したアルバム『TRIBALYTHM』では、世界中の楽器を入れて、“国境を越える”というメッセージを明確に発信。そんな本作の軸となったのが『テイルズ オブシリーズ』に提供した3曲である。
だからこそ、クライマックスにおける流れ──アニメ『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』の第1期オープニング主題歌「風ノ唄」、初アニメタイアップで世界中にその名を広げることになったアニメ『NARUTO -ナルト-』第4期オープニングテーマ「GO!!!」」、次の世界へと飛び立つ「新世界」という流れは、実にドラマティックであった。
アンコールでは“あの”4ziUがステージに!?
感動的な本編クライマックスとは打って変わってアンコールはコミカルにはじまった。メンバー全員参加のラップナンバー「Tick Tack」の、FLOW公式TikTokアカウントで公開中の“踊ってみた動画”のレクチャー映像が流れ、そこからヘッドセットマイクをつけたメンバーが横並びで登場。そして“昭和平成令和を生きる我らこそが4ziU”、FLOWのメンバーと共に、時計の動きを模した「Tick Tack」ダンスを全員で踊ってみせ、笑顔があふれた。
ここでKEIGOが感謝を伝える場面へ。
「この状況下の中で、今日ここに来ていただきありがとうございました。迷っている方もいらっしゃっていただろうし、会場にこれず配信で見てくれる人もいると思います。今でしかできない楽しみ方を全力でやってくれた皆さんに感謝です。そして準備をしてくれたスタッフの皆さん、ありがとうございました。
さっきもちょっと言いましたけど、思いきり声を出したり、タオルをブン回したり、ライブハウスでもみくしゃになったりするまでには、もう少し時間が掛かってしまうかもしれないですけど……でも、決してマイナスなことばかりじゃなかったなと思います。FLOWとしていろいろな挑戦をさせてもらったし、やったことのない配信を続けて “つながれている”ことを感じられた。絶対にライブは無くならない。今日はみんなが元気なことが分かったから。今度思いっきりライブで遊べるときは、一歩一歩進んできた笑顔のみんなに会いたい。僕らも進んで進んで、笑顔で、会いたいなと思ってます。やっぱり今日思いました! 同じ空間で、みんなでやるライブが最高です! これからも変わらず、つながっていきましょう。みんな孤独じゃないよ、一人じゃないよ。周りみたらみんながいるし、俺らが作ってきたライブがある。俺たちもまだまだ音楽を、ライブを作っていきます!」
そのMCからつながるように、ラストはポジティブオーラ全開の「Garden」を贈った。レゲエ調のゆったりとしたリズムにのせ<笑顔が揺れてる手を繋いで輪になって 描き出すよ>と誓う。ラストの<なんだかんだ言って祭りだ オレ達だけのシャングリラ 笑い出す騒ぎ出す じっとしてるなんて無理さ… やっぱこの地球(ほし)が大好きさ>というKIEGOのラップは、“FLOW THE CARNIVAL 2021~新世界~”の締めくくりにピッタリだったように思う。FLOWと私たちの“新世界”の旅はこれで終わりではなく、これからも続く。その旅路がどうか明るいものになりますようにという願いを、「Garden」の最後のピースサインに託した。
FLOW SPECIAL ONLINE LIVE 全アルバム網羅 炎の12ヶ月の最終公演は、8月26日、彩の国さいたま芸術劇場 小ホールで開催。10月から放送する『15周年 コードギアス 反逆のルルーシュ』 ではオープニングテーマを担う。
[文・逆井マリ]
イベント情報
【公演名】FLOW THE CARNIVAL 2021 〜新世界〜
【日時】2021年8月9日(月・祝)
【開場/開演】17:00/18:00
【会場】LINE CUBE SHIBUYA