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『スター・ウォーズ:ビジョンズ』「タトゥイーン・ラプソディ」レビュー【全作レビュー連載第2回】

『スター・ウォーズ:ビジョンズ』「タトゥイーン・ラプソディ」レビュー|「声枯らして 歌え」──歌声が銀河に響く! これはSWの世界を生きる、どこにでもいるロックな人々を描いた物語【全作レビュー連載第2回】

ジョージ・ルーカスが公言する日本文化からの強い影響──そして、創造のルーツである日本へ『スター・ウォーズ』が還ってくる!

日本を代表する7つのアニメスタジオが独自の“ビジョン”で9つの新しい物語を描くビッグプロジェクト『スター・ウォーズ:ビジョンズ』がディズニー公式動画配信サービス Disney+ (ディズニープラス)で独占配信中です。

アニメイトタイムズでは、特別タイアップ企画として、9作品になぞらえて、9人の編集者とライターが1作品を担当し、作品の魅力に迫るスペシャルレビュー連載をお届けします。

連載2回となる本記事では、ルーク・スカイウォーカーの故郷でもある砂漠の惑星タトゥイーンを舞台に”ロックミュージシャンを志す主人公たち”を描く『タトゥイーン・ラプソディ』をレビューします。

スタジオコロリドによるデザイン性、色彩豊かな表現が存分に活かされた映像や、声優・吉野裕行さんをはじめとしたキャスト陣によって描かれる、これまでとは全く異なる、ここでしか見ることのできない作品となった本作。

“ロックバンド”をテーマに、木村 拓監督の“ビジョン”によって生まれた新たな『スター・ウォーズ』の可能性は、シリーズファンだけでなく、アニメファンにもオススメの一作となっています。

連載バックナンバーはこちら!

◆【連載第1回】「The Duel」レビュー
◆【連載第2回】「タトゥイーン・ラプソディ」レビュー
◆【連載第3回】「赤霧」レビュー
◆【連載第4回】「T0-B1」レビュー
◆【連載第5回】「村の花嫁」レビュー
◆【連載第6回】「九人目のジェダイ」レビュー
◆【連載第7回】「The Elder」レビュー
◆【連載第8回】「のらうさロップと緋桜お蝶レビュー」
◆【連載第9回】「THE TWINS」

タトゥイーン・ラプソディ

あらすじ

元ジェダイや廃棄ドロイドなど、訳アリのメンバーが集いアウターリムを転々としながらライブ活動をしていたバンド、スター・ウェイバー。バンドリーダーのギーザーはギャング稼業の一族から裏切り者として追われ、ついには凄腕賞金稼ぎボバ・フェットに連れ去られてしまう。ギーザーの公開処刑が近づく中、バンドメンバーは惑星タトゥイーンの犯罪王ジャバに取引を持ち掛けた。自分たちの命と引き換えに、最期のライブをさせてくれないか、と......

スタジオコロリド/木村拓(監督)

長編映画とショートコンテンツに特化した新進気鋭のアニメーションスタジオ。2011年の設立以来、著名クリエイターの参画をはじめデジタル作画へのチャレンジなど制作能力を向上し続けている。第42回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞した初の長編アニメとなる映画『ペンギン・ハイウェイ』、そして昨年公開の映画『泣きたい私は猫をかぶる』は、同社ならではの美しく温かみのあるビジュアルとダイナミックな映像演出が国内外から高く評価されている。

アニメイトタイムズ的注目ポイント!

銀河の片隅度:★★★★★
タトゥイーンの再現度:★★★★☆
ノリノリ度:★★★★☆

『スター・ウォーズ』世界の新たな一面を描いた作品

吉野裕行さんがグローバル版声優を担当する主人公・ジェイが敵の追っ手から逃げるシーンから始まる本作。ジェイの手には『スター・ウォーズ』ではお馴染みのライトセーバーが握られており、ここが『スター・ウォーズ』の世界であることを認識させられつつ、「ブォン」という印象的な音にファン心をくすぐられます。

そうして、追っ手から逃げた先でロックバンド「スター・ウェイバー」のリーダーであるギーザーと出会い、ジェイはジェダイではなくバンドボーカルとしての道へ進むことに。ギーザーを狙う賞金稼ぎのボバ・フェットやジャバ・ザ・ハットの登場など、あの日見た『スター・ウォーズ』の世界が次々に展開されていきます。

ですが、作品を観進めていくと唐突に気付かされるのです。これは『スター・ウォーズ』ではなく、「『スター・ウォーズ』の世界に生きる人々の物語」なのだ、と。私がそれを強く感じたのは、ギーザーがボバ・フェットに連れ去られようとする場面。

ジェイがボバ・フェットに立ち向かうも、ライトセーバーは故障しており、ジェイは何もできないままギーザーが連れ去られるのを眺めるだけ。こんな時、アナキン・スカイウォーカーやオビ=ワン・ケノービであれば、きっとライトセーバーがなくとも守りたいもののために戦ったことでしょう。

ただ、ここで注目したいのは、ジェイが何もできなかったのはライトセーバーが故障していたことだけが理由なのか、ということです。ジェイがアナキンたちのように敵に立ち向かうことができなかったのは、彼が特別な人間ではなく、銀河のどこにでもいる一人の人間であるからではないでしょうか。

そして、ここで木村 拓監督のコメントにあった「この銀河の片隅に生きる人を描きたい」という思いが描かれていることに思い至ります。木村監督の言葉にあるように、これは銀河の片隅での物語なのです。

これまでの作品では光と闇、ジェダイとシスといった、ある種特別な人間たちを中心に物語が回っていました。ですが、本作にそういった特別な人間たちは登場しません。ジェイも元ジェダイではあるものの、一人で強敵と相対することのできるような「特別」な人間ではありませんでした。

つまり、本作『タトゥイーン・ラプソディ』に“選ばれし者”は存在しないのです。アナキンのような絶対的ヒーローも、ダース・シディアスのような絶対悪もいない。どこにでもいる普通の人たちが「自分はこう生きたい」と自らが選び生きている様子が終始描かれているのです。

ジェイが作中で「僕たちは結局、ただのバンドなんだよ」と語るシーンは、等身大の人々が描かれるなかで、ジェイの主人公らしさが光る名場面。本作のすごいところは10分ちょっとという短い時間の中で、ジェイの心の機微や成長がしっかりと描かれていること。

作品冒頭では怯え、自らの名前も答えられなかったジェイですが、後半ではジャバ・ザ・ハットと自らの命を交渉材料にライブを決行するなど頼もしい姿を見せます。ライトセーバーを模したマイクを手にし「これはただのマイクだよ」と笑うジェイの背中はまさに主人公の背中です。

「ジャパン キックオフイベント」にて、木村監督はライブシーンやバンドメンバーの友情と絆が見どころだと紹介されていましたが、ジェイの成長はまさにバンドメンバーとの絆の表れでしょう。

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