【ネタバレあり】TVアニメ『マブラヴ オルタネイティヴ』西本由紀夫監督インタビュー前編|新たな物語が展開される第一話、その構成意図やスタッフィング【連載 vol.00】
フジテレビ「+Ultra」ほかにて2021年10月6日(水)よりスタートするTVアニメ『マブラヴ オルタネイティヴ』。この作品は、06年発売のâge(アージュ)が企画・製作したアドベンチャーゲームを原作としたアニメーションである。原作においても今回新たに次世代に向けて『マブラヴ』を続けていくために、ロゴやキャストを一新している。
TVアニメ『マブラヴ オルタネイティヴ』は、意思疎通ができない地球外起源生命体であるBETAとの絶望的な戦いが繰り広げられている世界で、人類がいかに立ち向かっていくのかを描く作品だが、この作品の監督を務める西本由紀夫氏に、スタッフィングやCG、音楽へのこだわりをたっぷりと語ってもらった。
また、アニメの放送がスタートしてからは、監督やキャストへのインタビューを掲載していくので、そちらも楽しみにしてほしい。
※本編一話のネタバレを一部含む内容となっているためご注意ください。
初めて触れる人にも分かるよう心掛けたというシナリオ作り
――いよいよ『マブラヴ・オルタネイティヴ』がアニメ化されます。膨大なゲームの設定やストーリーがあったと思いますが、シナリオ会議はどのように進めていったのでしょうか?
西本由紀夫監督(以下、西本):おっしゃる通り、まずこの作品にはゲームがあり、それは、吉宗鋼紀(âge)/aNCHORさんによる原作なのですが、それをアニメーション化するにあたって、まずどこまで描いていくのか、というところから始まりました。
アニメーションというのは尺が決まっているものなのですが、それと同時にゲームと違って動いたり、画面の情報量が多いので説明せずとも理解してもらうこともできます。なので本当に必要なところを抜き出してもらう、ということになりました。
監督として、ここは抑えましょうとか、シナリオ会議で出た意見をジャッジメントしていきまとめていくのですが、みんなが「やりたい!やりたい!」というシーンはなるべく残しつつ、尺的なことも考えて判断していった形になります。
このアニメーションで初めて『マブラヴ』に触れた方が、「これはゲームを遊んだほうがいいのかな?」と思うところが少しあるかもしれないですが、基本的には初めて見る人にも分かりやすい感じで作ったほうがいいと思っていますので、そういうシナリオ作りは心がけていました。
――ちょっと分からないところが出てきても、見ていくうちに分かっていくとか、少し謎だったところの説明が、あとにあるような印象は受けました。
西本:そうですね。お話の中で伏線は散りばめていたり、後で出てくるからここはオブラートに包んでおこうとか、逆にここは盛り上げたほうがいいだろう、という話し合いはしていました。何度も同じことが出てきたりするときは重要なんだろうなとか。そんなことを考えながら見ていただければと思います。
誰も見たことがない第一話 BETAとは何なのか
――第一話では、新しい物語が展開されていて驚いたのですが、そのような構成にした意図を教えてください。
西本由紀夫監督(以下、西本):アニメとして、企画の段階から第一話から戦術機とBETAの戦闘があってインパクトがあるもの、という意見があり、ゲームでも描いていない、コミックスにもなっていない、誰も見たことがないものを見せたらインパクトがあるよね、というのが前提としてありました。
それと、佐渡島を舞台にしたらどうだろうというのは、原作者の吉宗鋼紀さんが出してくださったアイデアでもあります。
何せCGカットが200カットくらいあったので、グラフィニカ的にも僕的にも何カットチェックをするんだろう…と思いましたし、シナリオ会議が難航に難航を重ねたので、作っている時間もいちばん少なかったんです。
ただ、とても大変だけど、第一話でこれを見せることができたら、今回作品に初めて触れる人も、人間が戦術機を使って、得体のしれないBETAという生命体と戦っているんだ、ということが分かりますよね。BETAという生命体は、この世界の人類からすると地球に来た目的がわからないんですよ。言葉を話さないし、知性も分からないので、見ているほうからしたら「何だこれは?」となる。どうやらそこに意思があるわけでもないんです。しかも相手が攻めてくるから攻撃をする、みたいな感じなんです。
だから第一話も防壁があるところで、開けてくれー開けてくれーってなっているんです。攻撃をするというより、前に進むのに邪魔だなあという感じ。人間側も要塞(フォート)級が来るまでは守れていたんですけど、その壁を破られてしまったから町も大騒ぎなる。そういうところを映像で見せることで、BETAってそういう奴らなんだなと分かると思うんです。
また、人間側も軍隊が組織されていて、戦艦も出てくるけど航空兵器がないんですよね。これも光線(レーザー)級というすごいBETAがいるからで、戦術機ですらあまり上空は飛べないんです。「光線級が排出したら、終わりだぞ!」ってセリフもありますが、戦術機であれど、レーザー照射されたらコンマ何秒でやられてしまう。それで死んでしまう登場人物もいるのですが、「これをやると危険だよ」「こういう奴らがいるよ」というのを全部見せているので、今後の予習にもなるんです。
――少しグロテスクなシーンもあったので、やはりこういうシーンもあるんですね……と、ある程度の心構えはできました(笑)。
西本:人間が食べられてしまうところとかもありますからね。でも本当にそこで、そういう話なのねというのが分かると思うので、こういう第一話にさせていただきました。
――それにしてもBETAの描写も、なかなか気持ちが悪かったです。
西本:BETAって色が気持ち悪いんですよね。戦術機はミリタリーにあるような色を使っていて、空にも映えるよう青白くしているんですけど、BETAって極彩色というか、見ていて気持ち悪いような、警戒色で周りを脅しているような感じにしたかったんです。毒を持っている魚やカエルって色が真っ赤だったりするじゃないですか。そんな感じで、ゲーム以上に気持ち悪くしようと思ったんです。
それでも、CGチームは「かわいい」って言うんですよね(笑)。「作っていくうちにかわいく見えてきますよ」って言うんですけど、「見えねえよ!」っていうやり取りを何度もしました。作っていて思い入れが強くなると、どうやらかわいく見えちゃうらしいんですよ。
だって、光線級のあの毛みたいなものがぷるぷる動くのなんて、気持ち悪くてしょうがないじゃないですか。動かさないでって言うんですけど「それはダメです」と。監督の言うことも聞いてくれないんですよ(笑)。
――(笑)。おっしゃる通り戦術機やBETAが存分に味わえる第一話だったと思います。
西本:第二話以降は、主人公である白銀武が中心に物語が進んでいくんですけど、
おそらく初見だと少しよく分からない展開だと思うんですよね。それがのちのち分かるような構成にはなっているんですけど、だからこそ第一話でBETAと戦術機の戦いを見せることで、ロボットファンやミリタリーファンの方々にもっかかってくれると思ったんです。