すべてが明かされる最終回。二組の兄弟に託された役割とは……TVアニメ『NIGHT HEAD 2041』原作者・飯田譲治さんインタビュー│信じているものを組み換えなければいけないとき、人間はどうなるのか?
すべてが明かされ、決着がつく最終回
——スピリチュアル、SF要素、オカルトなどなど、『NIGHT HEAD』には惹かれる要素がたくさん詰まっていますが、どこから独特な世界観のインスピレーションが湧いてくるのでしょうか?
飯田:それは僕にも分かりません(笑)。でも、6話の完成版を見たときに手応えを感じました。スタッフのみんなもついてきてくれましたし、ちゃんと理解して描こうとしてくれて。
7話、8話はもっとすごいことになっていますが、12話まで見てもらえれば、どうして二組の兄弟がああいうことになっているのか、すごくよく分かる決着のつけ方になっています。12話まで完結させたときは自分の中でも満足感がありました。
7話で“精神世界というものに目覚める人間はいないほうがいい”という望みを抱いている人たちがいることが判明し、そういう世界を作るために取り残された地球があるという話になっていきます。
それで、黒木タクヤとユウヤは何でこういう世界になっているのか完全に理解したときに、“じゃあ自分たちはどうするのか?”と選択を迫られる。最終回はすべてが明かされ、決着がつきます。
——おぉ〜!
飯田:あと、今の世界は『NIGHT HEAD』の世界に近いところがあるように感じるんですよね。現実世界のことになるとみんな目を背けてしまうけど、人間って結局は“戦うことが好き”なんだなと。
スポーツで戦うこともあれば、それ以外で戦うこともある。そういう火種を作ってガス抜きしていくという循環が生まれ、そこで悪いことをしようとしている人たちもいます。
それは、まさに『NIGHT HEAD 2041』の世界と一緒。だから、作品内でも中東問題がまだ残っていますし、石油に関する意見で争っている世界を存続させる意図があるんです。
平和が欲しいと言いながら戦争が大好きな人間を満足させるための世界を極端に形成していくと『NIGHT HEAD 2041』の世界になる。僕は、そこに気づいてくれる人が少しでもいてくれれば嬉しいですし、もっと良い世界に広がっていくんじゃないかなと思っています。
——飯田さん自身、この『NIGHT HEAD 2041』で織り込ませたかったものはあったのでしょうか?
飯田:みんなそれぞれに信じるものがあり、その信じるものに従って自分の行動を決めていくと思いますが、その信じるものが正しいか間違っているかじゃなくて、すべてはその人自身だということ。
黒木タクヤとユウヤ、そして霧原直人と直也にも自分たちの中に正義がある。両方とも正義と言っているのにどっちかが悪いという話になりますが、“じゃあどうやってその話を消化していけばいいのか?”というところが1番大きな要素でした。
もちろん、人それぞれ信じているものはありますが、だからと言って相手を否定したり駆逐したりすることはできません。なので、“信じているものを組み換えなければいけないとき、人間はどうなるのか?”を考えました。
人間は、絶対に組み換えなきゃいけないときがやってくると思うんです。でも、中にはなかなか組み換えられない人もいる。特に、僕の世代はそういう人たちが多くて。
たとえば、子供に「仲良くしなさい」「人をいじめたらダメだよ」と言っているのに、インターネットでは誹謗中傷をしている。そういう姿をみると、人間って不思議だなと思います。
——インターネットといった技術が発達して便利な世の中になりましたが、驚くようなニュースもありますし、人間にとって大切なものが失われているように感じるときはありますね。
飯田:本当に今は“人が正常じゃない”と感じるときがよくあります。そういう意味では『NIGHT HEAD 2041』の世界に似ていますし、その異常さに気づいてくれればと。
逆に、テレビよりもインターネットと密接に触れてきた若い世代が、僕の世代の大人たちを見て、どういう風に感じているのかな?と時々思うんですよね。
テレビを見てきた僕たちの世代はテレビの言うことをそのまま鵜呑みにしてしまいがちですが、今の若い世代はインターネットで情報を拾うことが多いので、どう感じているんだろう?と。
情報が多く、筒抜け状態になりやすいネットだからこそ、僕の世代よりも若い世代のほうがちゃんと自分で考えて情報を取捨選択できているような気がします。