すべてが明かされる最終回。二組の兄弟に託された役割とは……TVアニメ『NIGHT HEAD 2041』原作者・飯田譲治さんインタビュー│信じているものを組み換えなければいけないとき、人間はどうなるのか?
現在、フジテレビ「+Ultra」ほかにて絶賛放送中のオリジナルアニメ『NIGHT HEAD 2041』がついに最終回を迎えます。
本作は1992年にテレビドラマとして放送されカルト的人気を誇った衝撃作『NIGHT HEAD』のアニメ化。超能力を持つが故に世界から迫害され逃げる霧原兄弟、国家保安本部特務部隊として能力者を追う黒木兄弟という“2組の兄弟”が出会い、翻弄されるストーリーです。
最終回を迎えるにあたり、テレビドラマでも今回のオリジナルアニメでも原作・脚本を務めた飯田譲治さんにインタビューを実施しました。
どこか今の世界とリンクしているように感じる『NIGHT HEAD 2041』の世界。この物語で飯田さんが伝えたかったことは何なのか、深いところまで語っていただきました。
今の世界を反映した物語に……
——飯田さん自身のTwitterでアニメのご感想を呟いていらっしゃいますが、アニメーションとしての『NIGHT HEAD』をご覧になっていかがでしたか?
飯田譲治さん(以下、飯田):アニメに関してはほとんど初心者なので、本当にいろいろな人たちの力でここまで出来上がっているんだと実感しました。
約5年間、打ち合わせをしながら進め、後半くらいからはアニメーション制作の白組の方たちと一緒に脚本をブラッシュアップしていったのですが、すごく健康的だったんです。
——“健康的”とは?
飯田:実写の世界において“良い台本”はまったく価値がないもので、“できる台本”というものに意味があります。“良い台本”を読み込める人や判断できる人が本当に少ないので、実写では“できる台本”にしようとする人たちが多いんです。
アニメも制約はありますが、面白いものを作ればマーケットにも良い循環が生まれるので、集まっている人たちがみんな“良いものを作ろう”という意識を持っていました。そういう意味で、すごく健康的な環境だったと感じます。
——テレビドラマの登場人物と同じ名前のキャラクターがアニメでも登場しましたが、これには何か意図があるのでしょうか?
飯田:『NIGHT HEAD』のキャラクターは自分の中でどんどん出来ていったので、キャラクター1人1人にすごく親しみがあります。なので、テレビドラマの登場人物たちをアニメのキャラクターで使いたいという気持ちがありました。
新しい作品ではありますが、テレビドラマの人たちを集めて物語を作るみたいな感覚で。よくリブートやリメイクと言われますが、この『NIGHT HEAD 2041』はリブートでもリメイクでもないので、何か違う言い方がないかと模索中です。
——何かしっくりくる言葉は見つけられました?
飯田:そうですね……「スクイーズ」はどうでしょう? 搾って練りだすみたいな。同じキャラクターを使っていて別の物語が生まれるけどテーマは同じ。そういう意味も含めていいんじゃないかな。
——いいですね! ちなみに自分はアニメから『NIGHT HEAD』に触れましたが、特に、第7話から一気に物語が広がったように感じました。
飯田:第7話に関しては、“よく分からない”と言われるだろうなと思っていました。実は、スピリチュアルの世界で昔から“アセンション”という言葉があるんですが、“地球は次元移動する”とずっと言われているんです。
僕自身、“変革の世界”をアニメで描きたいと思っていたので、アセンションが起きた後の地球の物語という設定にしました。
まさに『NIGHT HEAD』の世界では今、物質世界から精神世界に人間が移行している狭間。だから能力がある人がどんどん出てきていて、そのうちに変革が訪れることが第7話で語られています。
——『NIGHT HEAD』はスピリチュアルな世界が混ざっているので、個人的にも未知の世界に興味を持つようになりました。
飯田:スピリチュアルというと、ちょっと触れづらいところがあるかもしれませんが、まったくそんなことはないんですよね。
たとえば、アニメの世界で並行世界(パラレルワールド)があったり、ドッペルゲンガーがいたり、時空を超えたり……“アセンション”についてよく分からない人でもそういうことは全部受け止めていると思います。
昔はそういう発想が独創的で突拍子のないものと思われていましたが、今はアニメ産業が進展していることもあって、特に若い世代やアニメファンが自然に受け入れられるようになっているんです。そういう人たちが世界を少しずつ変えていくんだと、それが“変革”に繋がっていくんじゃないかと。
今の現実的な世界では地に足がついた話というか、日常的なものを欲しがっているように感じる反面、 SF的な世界がどんどん広まっているのも確かです。
たとえば、『鬼滅の刃』がヒットしているのもその例ですし、『ドラえもん』が国民的な人気を誇っているのもそうですよね。両極化しているけど、これからは地に足がついたものじゃないものを欲しがる人が増えていくんじゃないかと思っています。
この『NIGHT HEAD 2041』もそのきっかけになってくれたら嬉しいですし、地に足がついたものと繋げたい。最初から“この作品は突拍子もないものです”と始まるのではなく、日常とすごくリンクしている中で物語が進んでいくような話にしたいなと。
今はネットワークが発達しているので昔みたいにいろいろなことが隠せなくなっていて、かと思えば、フェイクニュースが溢れていて。混沌とした世界になっている“今”を反映した物語にできれば良いなという想いもあります。
——お話を伺っていると、飯田さんが御厨さんそのものなんじゃないかと思えてきました……。
飯田:そんな大層なものじゃないです(笑)。でも、最後までみんながついてきてくれれば良いなと思っています。