『スター・ウォーズ:ビジョンズ』「のらうさロップと緋桜お蝶」レビュー|アニメファンの心をくすぐる美術背景とウサギをモチーフにした主人公!涙なしでは見られない家族の物語【全作レビュー連載第8回】
ジョージ・ルーカスが公言する日本文化からの強い影響──そして、創造のルーツである日本へ『スター・ウォーズ』が還ってくる!
日本を代表する7つのアニメスタジオが独自の“ビジョン”で9つの新しい物語を描くビッグプロジェクト『スター・ウォーズ:ビジョンズ』がディズニー公式動画配信サービス Disney+ (ディズニープラス)で独占配信中です。
アニメイトタイムズでは、特別タイアップ企画として、9作品になぞらえて、9人の編集者とライターが1作品を担当し、作品の魅力に迫るスペシャルレビュー連載をお届けします。
連載8回となる本記事では、日本の風土を感じさせられる“惑星タオ”を舞台に、帝国に対する考え方の違いから家族がバラバラになってしまう『のらうさロップと緋桜お蝶』をレビュー!
家族の絆の物語でもある『スター・ウォーズ』を背景に、“本当の家族とは何なのか?”を考えさせられる本作。「家族」や「繋がり」をテーマにしたストーリーが好きな方はもちろん、これまで『スター・ウォーズ』に触れてこなかったアニメファンにも入りやすい作品となっています。
では、具体的にどのようなところが魅力的なのか、『スター・ウォーズ』ではアナキンとオビ=ワン・ケノービの師弟関係が大好きな筆者が注目ポイントをご紹介します!
連載バックナンバーはこちら!
◆【連載第1回】「The Duel」レビュー◆【連載第2回】「タトゥイーン・ラプソディ」レビュー
◆【連載第3回】「赤霧」レビュー
◆【連載第4回】「T0-B1」レビュー
◆【連載第5回】「村の花嫁」レビュー
◆【連載第6回】「九人目のジェダイ」レビュー
◆【連載第7回】「The Elder」レビュー
◆【連載第8回】「のらうさロップと緋桜お蝶レビュー」
◆【連載第9回】「THE TWINS」
のらうさロップと緋桜お蝶
あらすじ
銀河帝国の強制労働者として捕らえられていた孤児のロップは、ある日辺境の惑星タオに生きる一家の長・弥三郎と、その娘・お蝶と出会う。3人は種族を超えて「家族」となるため日々を穏やかに過ごしてきた。しかし、帝国に対する考え方の違いから、弥三郎とお蝶は徐々に擦れ違い、ついに弥三郎が独断で帝国基地への爆破テロを強行する事態となってしまう。ロップが二人の仲を取り持とうとする中、帝国将校が目の前に立ちはだかってきて...!?
ジェノスタジオ/五十嵐祐貴(監督)
アクションやサスペンスなど、重厚な世界観や絵作りが得意なスタジオ。2015年に設立され、鮮烈さ際立つ劇場アニメ『虐殺器官』を世に送り出した。また、2018年~2020年にかけ、TVアニメ『ゴールデンカムイ』を3シーズン制作。放送終了後もなお高い人気を集め続け、スタジオにとっての代表作となった。実力派スタッフが集結し、スタジオの描く世界観を形にするため、熱く・強い作品づくりに日々取り組んでいる。
アニメイトタイムズ的注目ポイント!
日本のアニメ度:★★★★★
「スター・ウォーズ」度:★★★★☆
ドラマチック度:★★★★★
涙なしでは見られない家族の物語
本作の軸になっているテーマは「家族」。銀河帝国の強制労働者として捕らえられていたロップが逃げ出した先で、惑星タオに生きる一家の長・弥三郎と、その娘のお蝶に出会うところから物語が始まります。
行く当てのなかったロップに、「家族になろう」と手を差し伸べるお蝶。弥三郎も一家の長としての責任を感じつつも、優しくロップを一家の一員として受け入れます。
しかし、帝国に対する考え方から弥三郎とお蝶は少しずつすれ違ってしまい、家族はバラバラに。以前のように、家族として一緒に過ごしたいという想いだけで行動するロップは、帝国側についてしまったお蝶を連れ戻そうとしますが……。
帝国のやり方に反対している弥三郎、帝国の力なしでは生きていけないと帝国側につくお蝶、そして、そんな2人を仲直りさせようと必死に説得するロップ。唯一、血の繋がりがないロップが“家族”のために何かできることはないかと考えて行動する姿に感極まります。
物語の着想について、監督を務めた五十嵐祐貴さんは「本来ジェダイの物語はスカイウォーカー家やパルパティーン家の血縁の物語にとどまりません。そういった『スター・ウォーズ』の拡張可能性を表現するために、主人公は非血縁であり、その絆をめぐってライトセーバーが継承される話にしようと思いました」と語っています。
世襲を重視するのは世界で共通していることですが、特に、日本では世襲や家の存続、血筋というものを大切にしてきました。でも、今は新しい時代。種族を超えた3人の「家族」を描く本作を通して、“家族は血の繋がりだけじゃない。もっと大切なものがあるんだ”と改めて強く思います。
約20分という短い映像でも、ロップ、弥三郎、お蝶がどれだけ家族のことが大好きで想っているのか伝わってくるからこそ、最後のシーンは涙なしでは見られません。私自身、最後のロップのセリフを聞いた瞬間、自然と涙がこぼれ落ちてきました……(ロップとお蝶の姉妹関係には、どこかアナキンとオビ=ワンの師弟関係に通ずるものを感じます)。
短編アニメとは思えないほど、家族の絆や3人が紡いできた時間がどれだけ素敵なものだったのか感じ取れる濃厚さ、ドラマチックな展開になっています。最後までご覧いただくと「続きが見たい!」「シリーズ化してほしい!」という気持ちになること間違いありません。