「SSR鉄平」が果たした沙都子というキャラクターの掘り下げ──アニメ『ひぐらしのなく頃に 卒』川口敬一郎監督が自信をのぞかせる原作と旧作の終着点【インタビュー 前半】
視聴者目線で見たら「なかなか酷いアニメ」
――ここからはチャプター毎に振り返っていただきつつ、制作時のエピソードを伺いたく思います。まずは「鬼騙し編」「鬼明し編」です。
川口:奇しくも『業』の第1話の裏側を描いた内容でしたが、「新しい『ひぐらし』」を出せていたなと思います。『業』では描かれなかったレナの裏側を期待していた方も多かったと思いますが、沙都子が魔女化したからこそあのレナがいるのです。視聴者の方々は色々と思うところがあったのではないかと思いますが。
――「鬼騙し編」「鬼明し編」を通した、視聴者の反応をご覧になっていかがでしたか?
川口:やはり沙都子がすごく嫌な人に映っているなと(笑)。ほかにも(間宮)リナが良い人になっている点など、随所で大きなインパクトを与えられたのではないかと思います。
――仰る通り、あのリナの言動や展開には驚かされました。
川口:リナはループを繰り返すことで懺悔の気持ちが芽生えていましたが、レナにとっては彼女が改心していようがいまいが関係がなくて。
ふたりの気持ちを知っている視聴者目線では、すごく絶望感があったのではないかと思います。我々としては責任を持って表現することが出来たと思いますし、視聴者として見てみたかったという気持ちになりました。
――監督自身オンエアをご覧になっていかがでしたか?
川口:なかなか酷いアニメだと思いました(笑)。
――(笑)
川口:制作していた頃から期間も空いているので、意外と新鮮な気持ちで楽しめました。監督の仕事は、アニメ制作工程においては、絵コンテのチェックを終えると一段落つき、その後は諸々のチェックが仕事のメインになるので、実際に手を動かして作業をしていたのはかなり前の事になりますので。
だから視聴者の反応に納得することが多々あるくらいには視聴者目線で楽しめています(笑)。しかし、色々な目線で見返しつつも「これが『ひぐらしのなく頃に 卒』ですよ」という部分は、第25話・第26話(鬼明かし編)でしっかりと提示出来たと思っています。
――「鬼騙し編」「鬼明し編」の印象的なシーンを挙げるなら?
川口:ゴミ捨て場でのレナとリナのシーンはよく出来ているなと思います。作画も頑張ってくれました。特にレナ役の中原(麻衣)さんのお芝居が本当にすごかったです。『業』ではそれほど狂ったお芝居をお願いすることがなかっただけに、このシーンの狂いっぷりはより印象に残りました。