峰不二子という大女優といろんなドラマの撮影に行っている気分――秋アニメ『ルパン三世 PART6』沢城みゆきさんインタビュー│ずっと見ていた小林清志さんの戦い
ちょっとずつ自分に寄せ、自分の血をどう混ぜれば成立するのか試していきました
――沢城さんが峰不二子役を引き継いだのは2011年のテレビスペシャル『ルパン三世 血の刻印 ~永遠のMermaid~』ですから、そこから10年経ちました。改めて10年間演じてみていかがですか?
沢城:慣れの怖さですよね。今回(PART6)の収録では、全然清水さんからダメ出しがなく「安定の峰不二子」とか言われちゃって……。以前はあんなに一言一言ダメ出しが入っていたのに、私の峰不二子を聞き慣れているんですね。私もみんなも。この恐ろしさよって感じがします。
――視聴者もそうだと思いますが、自分も聴き慣れましたね。今は沢城さんの不二子が当たり前になったというか。
沢城:あーやだやだ(笑)。
――最初は当然葛藤や苦労もあったと思います。10年間で特に印象に残っていることや、ターニングポイントになった作品はありますか?
沢城:やっぱり『LUPIN the Third -峰不二子という女-』(以下、『峰不二子という女』)ですね。この作品ですごくスタミナがついたというか、いろんな意味でキャラクターとがっちり向き合った印象が強いです。
――しっかり向き合ったことで咀嚼できた、ご自身の中で自然になってきた感覚ですかね。具体的にここが変わった、といったことはありますか?
沢城:“地声で喋ること”ですね。少し増山さんの音域を超えても大丈夫なんだって確認できたというか。それまでは(私の地声のような)ここまで低い音色だと峰不二子にならないんじゃないかと思っていたけど、意外と役の真ん中さえブレなければ音のレンジってあんまり関係ないんだなって。
このシリーズでは最後すごく取り乱したり、不二子自体がいつもの不二子を踏み越えたところにいってしまったので否応なしに、地声で表現しないとならないシーンもあって。やってみた結果、ここまでなら大丈夫、というラインを自分の中で把握することができたと思います。ちょっとずつ自分に寄せる、自分の血をどう混ぜれば成立するのか試していった感じでしたね。
――2019年の映画『LUPIN THE IIIRD 峰不二子の嘘』でインタビューした際には、「不二子さんはすごく遠くにいる人なんです」と話していました。そこから2年経ち、距離感は変わってきましたか?
沢城:それは変わらないです。ずっとカバン持ちです(笑)。ただですね、私自身は年齢を重ねてきまして、皆さんがおそらく認識しているであろう“20代後半”という不二子さんの年齢の前から演じ始め、同年代になり、通り越えたんですよね。
そう思った時に、自分の中でもう少しきちんとキャラクターを把握しなければいけないなと感じたんです。(声の)音色や心の軽さも含めて、私自身は昔と同じではないとよくよく分かった上でもう一度スタートを切りたいなと。
――原作では最初年齢の設定もあったようですが、今は見る人それぞれの不二子像がありますからね。
沢城:それが『ルパン三世』のいいところです。もしかしたら私よりもまだまだ年上の美魔女かもしれない(笑)。
――そんなさまざまな見え方のする不二子を、どのように色付けしていきたいですか?
沢城:そうですね、今回はいわゆる“令和の峰不二子”ですよね。ただ、現代っぽければそれでいいのかといえば、必ずしもそうではないかもしれない。そこは作家側が一番センシティブに扱っていると思います。
しかも、歴代の不二子さんはその当時の最新のファッションをしているんですよ。ボディコンが流行っていた時はボディコンを着ていましたし、私がやっているシリーズでは結構パンツスタイルも増えてきて。ファッションアイコンとしても常に時代の最先端を行っているので、そこも楽しみにしていただきたいです。
メンタル的にどういう女性が素敵なのかは過渡期にあると感じていますが、不二子さんは普遍的な魅力を持っていますので、私はそこを捉え続けていけたらと思っています。
――ちなみに、演じていてファッションの影響を受けたりすることもあるのですか?
沢城:私ですか? ボディコンを着られるものなら着たいですけど、真逆ですね(笑)。
――確かに、沢城さんにボディコンのイメージは全くないですね(笑)。
沢城:私もないです(笑)。井上喜久子さんが前に着ていて素敵だったけど、私はまだ……。
――じゃあ、そのくらいの年齢になったらということで。
沢城:今は想像できない未来の自分の姿に、期待したいです(笑)。