アニメ『さんかく窓の外側は夜』安田好孝監督インタビュー|もう一度見返したくなる裏話は必読! 思惑以上の出来上がりになったシーンとは?【連載08】
シーンに散りばめられている細やかな技術と工夫
——個人的に除霊シーンや、所々に紛れているつい笑ってしまうシーンが好きなのですが、監督自身がとても印象に残っているシーンや回があれば教えてください。
安田:冷川の心象風景の描写には「リキッドライティング」という、舞台やライブで使用する特殊照明の手法を取り入れたのですが、2話の三角の契約のシーンや、4話で三角が垣間見る冷川の「中」のシーンで使われた特殊な映像は、自分の思惑以上の出来上がりになっているので、注目して欲しいところです。
5話の過去のシーンは全般的にチーフディレクター・岩永大慈さんの力作なので、三角母役の本田貴子さんの熱演も含めて、この作品の大きな見どころになっていると思います。
自分がコンテを描いた3話も、ファミレスの駐車場での非浦英莉可の絵面も含め画面の流れを工夫した回ですので、とても気に入ってます。
——本作は三角×冷川、英莉可×逆木というように“バディ”が見どころでもあります。特に、三角と冷川の関係性がどのように描かれるのか作品ファンは気になっていたと思いますが、監督自身2人の関係性についてどう解釈されたのでしょうか。
安田:冒頭から冷川のもたらす未知への好奇心に翻弄されてゆく三角という構図は、まさに恋愛関係のそれだなと思いました。受け入れるか、拒絶するかは会った瞬間にもう決まっていて、それでも足りないと感じるから「展開」があるなと。
冷川の束縛感の強さは、少年時代に誰からも理解されなかった「自分を認めて欲しい」という欲求そのもの。それが、互いを理解するという形でしか成就しない事を、「他者を感じ取れてしまう」冷川は理解出来ない。
一方の三角は、母親の影響があってか、来る者は拒まぬ性格ゆえに放っておけない。三角は最初から冷川をかなり「受け入れて」いるんですね。
——これまで、キャストの方々にもインタビューさせていただきましたが、特に、羽多野さんは冷川というミステリアスな人物を表現するのが大変だったとお伺いしています。監督から見て収録現場はどのような雰囲気でしたでしょうか。収録エピソードや裏話などがあれば教えてください。
安田:自分自身も、冷川以外の登場人物の様に「冷川を理解出来ない」んです。
声優の方々はオーディションから原作を読んでいただいてますから、収録時には各々の中にキャラクター像が構築されていたと思いましたので、特に自分の方から指示した事はありませんでした。
漠然と「皆さんミステリアスな雰囲気で……」みたいにしか言えませんでしたが、冷川に関してだけはチーフディレクターの岩永大慈さんが「言葉のキャッチボールをしない」キャラクターだとおっしゃって、それで冷川をどう演じてもらうのかが決まった感じです。
自分も含め、誰も冷川は理解出来ないんだな、と。
本作は声優の方々がベテランぞろいで、実に豪華な布陣だったと思いますが、先生役の平田広明さんの演技に翻弄されるのも今となっては楽しかったですし、半澤役の三上哲さんは御本人も大変カッコ良くて、礼儀正しくて、若い声優さんとご一緒の時はリードしてくれる頼れる兄貴みたいな方で、惚れ直しました。
最終回の収録が終わって、もうこの現場は味わえないのかと思うと寂しかったですね。
——これから物語は佳境に入っていくと思います。最後に、本作をご覧になっている皆さんへ、これからの見どころをお願いいたします。
安田:原作のセリフのやり取りの魅力は、シリーズ構成の関根アユミさん他ベテランの脚本家の方々がぎゅっと詰め込んでくださり、アフレコや劇伴等もバキバキに作り上げていただいた音響に大勢の映像制作スタッフが1年以上かけて絵を付けました。
辛さや楽しさが詰まった映像になっていると思います。美術・色彩・撮影処理等、チーフディレクターの岩永さんが色味での見せ方にこだわった采配が後半いかんなく発揮されています。
既に原作を最後まで読まれた方にはお分かりだと思いますが、結末に向けてそれぞれのキャラクターたちの見せ場がたくさん用意されていますので、楽しんでご覧になっていただければ嬉しいです。
連載バックナンバー
□第1回 三角康介役・島﨑信長さん□第2回 冷川理人役・羽多野渉さん
□第3回 迎系多役・斉藤壮馬さん
□第4回 非浦英莉可役・安済知佳さん
□第5回 半澤日路輝役・三上哲さん
□第6回 逆木一臣役・諏訪部順一さん
□第7回 先生役・平田広明さん
TVアニメ「さんかく窓の外側は夜」作品情報
心霊探偵バディによる新感覚”霊感エンターテインメント”
放送・配信情報
TOKYO MX:10月3日スタート 毎週日曜 22:00~
サンテレビ:10月3日スタート 毎週日曜 23:30~
BSフジ:10月5日スタート 毎週火曜 24:00~
CS「ホームドラマチャンネル」:11月19日スタート 毎週金曜 深夜2:00~(2話放送)
FOD先行独占配信:10月3日スタート 毎週日曜 22:00~ 最新話配信
イントロダクション
「わたしの運命だ、君が。」
除霊師&助手による史上最強の心霊探偵バディが誕生!
昔から不気味なモノを「視て」しまう体質の三角康介は、偶然出会った除霊師・冷川理人にその才能を見い出され、心霊探偵コンビを無理やり組まされてしまう。
「これは運命の出会いですよ」
三角に執着する冷川と、危うげな冷川を放っておけない三角。数々の事件を解決していくなか、浮かび上がる“運命” の真実とは──。
ヤマシタトモコによる漫画『さんかく窓の外側は夜』(クロフネコミックス/リブレ刊)。
累計発行部数200万部を突破したベストセラーコミックスが、実写映画化に続きTVアニメ化!「ホラー×ミステリー×バディ愛」の三拍子そろった新感覚“霊感エンターテインメント”がこの秋、幕を開ける!
原作
ヤマシタトモコ「さんかく窓の外側は夜」(クロフネコミックス/リブレ刊にて全10巻発売中)
スタッフ
監督・キャラクターデザイン:安田好孝
チーフディレクター:岩永大慈
シリーズ構成:関根アユミ
アニメーション制作:ゼロジー
製作:さんかく窓プロジェクト
主題歌
オープニングテーマ:フレデリック「サイカ」
エンディングテーマ:羽多野 渉「Breakers」
キャスト
島﨑信長(三角康介役)
羽多野 渉(冷川理人役)
斉藤壮馬(迎 系多役)
安済知佳(非浦英莉可役)
三上 哲(半澤日路輝役)
諏訪部順一(逆木一臣役)
平田広明(先生役)
ほか