『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』ファイルーズあいさんが出会いの重力を心と身体で感じる「ジョジョという作品に惹かれるのは、運命だった」
空条承太郎役の小野大輔さんから受けた「オラオラ」のセリフレッスン
――鈴木健一総監督が今作では原作以上に空条承太郎を意識して作っているとお話されていました。徐倫は承太郎の娘ということで、承太郎らしさやジョースター家の血統を継ぐ者として、演じる際に意識されたところはどの辺りでしょうか。
ファイルーズ:鈴木総監督から「承太郎の娘感を大事にしてほしい」というディレクションをいただいていたので、最後の方の覚悟が決まった徐倫の感じが最初のアフレコ時ではなかなか抜けなかったんですよ。かっこよくとか、声を低くとか、そういうところを意識するばかりで、堅苦しくなっていました。
でも、承太郎って確かに声は低いんですけど、力が入っているわけではなくて、脱力しているとまでは言わなくても、「やれやれ」感(承太郎の口癖「やれやれだぜ」)が大事じゃないですか。だから私もディレクションをいただいて、親子の絆として「やれやれ」感を意識して演じました。
刑務所へ面会に来た承太郎との会話を経て、徐倫は強い目的を持つようになるので、そこからが『スターダストクルセイダース』においての母親を助けるという目標を持った時の承太郎と重なる部分がありますよね。その辺りはけっこう意識していました。
――親子役ということで、空条承太郎役の小野大輔さんと演技のお話はされましたか。
ファイルーズ:「オラオラ」のセリフレッスンはしていただきました。最初は「オラオラ」のセリフに苦戦していたので、いろいろと教えていただいて、「オラオラ」メモというのがあって、そこにメモしていました(笑)。
「オラオラ」メモは、例えば「肩の力を抜く」、「あまり早さを求めない」、「オラオラ」の「オ」にアタックを付けるとか、専門的なことをいろいろと教えていただいて、それを意識しながらやっています。
でも、承太郎と徐倫は親子ですけど、一緒にいた時間も少なくて、生い立ちも違うので、完全に一緒というわけでなくて、ベースの性格とか、血統を感じる部分などは作りつつも、徐倫の過ごしてきた人生や人格形成期にあったこととかを想像しながら、落とし込んで演じました。
――徐倫の成長とともに、「オラオラ」というセリフも変わっていくんですか。
ファイルーズ:私は器用なタイプではない方なので、計算して変えるというのが難しいんです。ですから「オラオラ」というセリフは最初から全力でやりましたね。歴代ジョースター家のキャストみなさんの中では、私は声優のキャリアが一番少ないですし、アフレコ収録を通じて、徐倫と一緒に成長していけたらいいなと感じています。
もしかしたら、最初はお聞き苦しい部分もあるかもしれませんが、プロデューサーの方も「どんどんオラオラのセリフがうまくなってきている」とおっしゃってくださっているので、精神的、技術的な成長も見ていただけたらと思っています。
共演キャストと深めるジョジョの絆
――収録現場の雰囲気はいかがですか。
ファイルーズ:細かくグループに分かれて収録しています。その中でも、徐倫はいろいろなキャストの方と一緒に収録させていただけるとことが多いです。
たまにちょっと現場へ早く行って、前の収録グループを見学しています。気になってしまうので、ご迷惑にならない範囲でしっかり対策を取った上で、早めに来て別室からアフレコの様子を見たりもしていますね。
――共演者についてお聞かせください。
ファイルーズ:大輔パパはジョジョのお話をたくさんしてくれます。『ストーンオーシャン』以外のお話もしますし、アニメオリジナルの演出に萌えるのは特に私と大輔パパなので……(笑)。
――大輔パパというのは……。
ファイルーズ:空条承太郎役の小野大輔さんです。役柄だけでなく、たまに本当のお父さんに見えてくるんですよね。
――小野大輔さんも『ジョジョの奇妙な冒険』がお好きでしたよね。
ファイルーズ:そうなんですよ。意外な共通点もたくさんあったりして、他人とは思えないぐらい仲良しです。(書き留めているノートを見ながら)大輔パパが「声に芯がある」と言ってくれました。それがとても嬉しかったです!
――素敵なお言葉ですね。承太郎は徐倫といつも一緒に行動しているわけではないので、アフレコでもそれほど一緒になることはないですよね。
ファイルーズ:そうなんです。ちょうどしばらく承太郎の出番がない時があったんですけど、たまたま別現場でお会いして、そこでもジョジョのお話をして、私が「アフレコ来てくださいよ~」と言ったら、大輔パパが「大丈夫だから! 助けに行くから!」って言ってくれて、「親父~~~!!」ってなっちゃいました(笑)。
――それは素敵なエピソードです。ジョジョを通じて深まった絆ですね。
ファイルーズ:そうなんです。本当にジョジョの現場以外でも、お父さんみたいに接してくれて、すごく優しい方なんです。
あとは、エンポリオ・アルニーニョ役の種﨑敦美さんがアフレコ収録後に、ラインでメッセージをくださったことがありました。「ファイちゃんがどれだけジョジョや徐倫に対する思いがあったかというのをインタビューで見ていたから、本当に嬉しかったし、それほど愛しているという人が徐倫を演じるということがすごく嬉しくて、私まで涙が止まらなかったよ。これからもエンポリオと徐倫として一緒に頑張っていこうね!」と長文のメッセージを送ってくれて、それでエシディシなみに涙が出ちゃいました。嬉しかったです!
――それは感動しますね。
ファイルーズ:それから、エルメェス・コステロ役の田村睦心さんは、第1話からずっとアフレコが一緒なんです。睦心さんが私の影響でどんどんジョジョネタに詳しくなっていっています(笑)。
もちろん睦心さんも原作も読んでくれていて、お話もたくさんするんですけど、コアなジョジョネタを私が話すので、そこでジョジョハラスメントをしてしまいます(笑)。
アニメは今までのシリーズもそうだったんですけど、オリジナルの演出をたくさん入れてくださって、しかもそれが原作の雰囲気をさらにかき立てるような、原作の補完やファンサービスも兼ねていて、それがファンとして本当に嬉しくて仕方ないんですよ。
睦心さんに「ここ原作になかったですよね!」とか、「こういうシーンを入れてくれるのは、ありがたいですよね!」というお話をしてワクワク、キャッキャしています(笑)。
――わかります。嬉しいですよね。
ファイルーズ:嬉しいです。それこそ、『黄金の風』のパンナコッタ・フーゴ(CV:榎木淳弥)の過去を作ってくれたのは「ありがとうございます! グラッツェ!」ってなりましたね(笑)。
――そうですよね。何度も巻き戻して見ちゃいますよね。
ファイルーズ:見ました、見ました! だって、フーゴだけ過去回想がないのかという気持ちを抱えて……。原作なので仕方ないですけど、そこは妄想で補っていたり、友だちと考察したりしていたんですけど、答えを出してくれて本当に感謝です。
最初のシリーズからそうですけど、そういうところもジョジョの制作スタッフさんには敬意しかないです。
――本当に敬意しかないです。アニメを観ていると、いっそう気持ちが盛り上がるんですよね。
ファイルーズ:私もそうなんですけど、ファンの方の原作愛が強すぎるあまりに、アニメ化と聞くと、どうしても斜に構えてしまうんです。「やってくれるんでしょうね?!」みたいな(笑)。
そんな気持ちでアニメを観たら、もう手のひら黄金回転ですよ(笑)。「作ってくれてありがとう! david production(アニメーション制作スタジオ)の技術力は世界一ィィィイイイイ」ってなっちゃうんです(笑)。
――そうですよね。特にジョジョのファンは長く愛している方も多いですし、その分期待も高まってしまいますよね。
ファイルーズ:その期待を飄々と当たり前のように超えていってくれるので、信頼できますよね。