音楽
VALSHEインタビュー|新作『ISM』で自身の主義・主張を発信

12年目のVALSHE、目覚めるーー新たなステージへの第一歩としてリリースするミニアルバム『ISM』「原点に立ち返って自分自身に矢印を向け返してみようと思ったんです」

ミニアルバムは「絶叫系セットリスト」

ーーオープニングのインストナンバー「ISM」はどのように作られたんでしょうか。ジェットコースター的な、激しい展開の曲ですよね。

VALSHE:「ISM」という曲だけでアルバムのすべてを表現したいと思ったときに、自分の頭の中に流れているものをどうやって再現したらいいんだろう、というところからはじまりました。先ず困ったのが、自分の頭の中に流れている音って不協和音なんですよ。

ーー実際、「ISM」には不穏な雰囲気が潜んでますもんね。

VALSHE:そうなんです。だからサウンドディレクターに相談するときも「不協和音なんだよね」って話をして。この11年を踏まえて主義・主張というコンセプトを掲げたとき……美しいだけでもなく、カッコいいだけでもなく、壊れているだけでもないところから見えた自分の感情の流れを表現したいなと。でもそうすると「破綻しちゃうんだよね、どうしよう(笑)」と。今回珍しくインストでG’n-さんに編曲をお願いしているんですけど、彼は自分のデビュー当時からアレンジを担ってくれていて。この人であれば自分が表現したいものを落とし込んでくれるんじゃないかと思って、この楽曲を託しました。「破綻するギリギリのところを保ちながら、一定の感情で聴けないような曲にしてほしい」とお願いしたんです。「キレイだな、美しいな」ってところから心臓がグッて掴まれるようなターンがあったり、それがまた美しい音色に戻っていったり。テクニックをふんだんに使って、絶妙に均衡を保っている曲に仕上がっています。で、そこから「GIFT」につながっていくという。

ーー「GIFT」はVALSHEさんの原点でもあるデジタル・サウンドの最新バージョン。いつも以上にソリッドだったり、ラウドだったり。作曲はShun Satoさんとの共作(「バルと瞬さん★」名義)で、ご自身で歌詞も書かれていますが、どのような思いを込められたのでしょうか。

VALSHE:今作のリード楽曲です。だからVALSHEの活動そのものの主義を据えて作りたいと思っていました。サウンド感においては、自分の源流になっているデジタル・サウンドに対して、新しいアプローチをしたいと。いちばん楽曲の方向性が決まっていた曲でしたね。その中でも、今回はビート感に着目しています。踊っているのがふさわしくもあり、ひとりでマイクを持って歌っているのがふさわしくもあり、バンドを背負って歌っているのがふさわしくもあり……そういう(視覚的な)サウンド感も落とし込んで。初回限定盤に同封されているミュージックビデオは、それが視覚的に再現されています。

ーーVALSHEさんの中で明確にイメージがあったんですね。

VALSHE:そうですね。「このパートではこの絵が見える」というのがそれぞれにあって。自分がメロを打ち込む段階からディレクターに共有していました。

ーータイトルが「GIFT」っていうのがまた良いですね。

VALSHE:と、思うでしょ?

ーーはい! あれ、なにか違う意味が?

VALSHE:それも間違ってはないんです。でも贈り物という意味以外に、もうひとつ、ドイツ語で「毒」という意味もあるんです。

ーー知らなかったです。そんな真逆の意味があったとは……。それが<気まぐれで逆らえない衝動に振り回されていたい 果実に潜む抜けない毒のようだ>という歌詞にもつながっているんですね。

VALSHE:そう。だからこの曲は誰かにとっての毒かもしれないです。それを踏まえると、ジャケットやミュージックビデオのイメージが膨らませやすくなると思います。

ーーVALSHEさんにとっての、毒ってなんなんでしょう?

VALSHE:この作品で言えば、自分の発信するもの、そのものです。というのも、それを受け取った人にとってどう感じるか、自分がわかないから。自分が生きてくる中で得てきた価値観や考えを強く提示したときに、誰かにとっては共感できることかもしれないし、誰かにとっては耳の痛いことかもしれない。自分の価値観とは相反していて毒のような存在かもしれない。だけど、それでも自分自身の主義を主張することに強くこだわって作っている作品である、ということがこの『ISM』全体に落とし込まれているのかなと思っています。

ーーそこから、飛び抜けてポップな「シープランド」に向かう流れがまた面白いですね。

VALSHE:そうですね。サウンド感が多岐にわたっています。今回は曲の順番を決めるときにいろいろなパターンを試したんです。「ISM」「GIFT」というオープニングの流れと、最後の楽曲が「INTRODUCTION」ということは決まっていたんですけど、中に関してはいろいろと組み替えました。でもどうひっくり返して組み替えてみても「えっ?」って驚くような流れになるんですよね。これまでになかったことでした。だから今回は「絶叫系セットリスト」と呼んでいます(笑)。一曲一曲の落差を楽しんでもらいたいなと。それがいちばんわかりやすい並びということで「シープランド」がここにきています。

ーー「アンプレイアブル」では叫び声からスタートします。そこにも「絶叫系セットリスト」感がありますね。

VALSHE:「アンプレイアブル」はアニメソング感のある、デジタルなサブカルチャーポップサウンドの流れを意識していました。「これまでアニメソングは王道感のあるものを作ってきたからちょっと変えたいんだよね」とサウンドディレクターに相談したときに「ちょっとデスゲームっぽいのはどう?」って提案をもらって。二つ返事で「いいね!」と。テーマが決まったらサクサクと曲を作れましたね。

ーー続く「cue.」はケルト音楽風のバラードです。

VALSHE:以前からこの曲を良きタイミングで出したいなと思っていた温存楽曲です。作曲・編曲はdorikoにお願いしているんですけど、dorikoもずっと一緒に音楽を作ってきた仲間なので、今作ではdorikoのバラードを歌いたいなと。その時は土台のようなものしかなかったので、「じゃあどういうサウンド感にしようか」と話し合って。それで結果、ケルト音楽風にしようと。

ただもともとのケルト音楽って変拍子が多いんです。だからあまりポップスとはそのままだと相容れないこともあって。楽器の編成や構成でケルトの楽器を組み込むことで調和が取れたら面白そうだよね、と制作も盛り上がりました。『PRESENT』という作品内でも民族楽器を使ったんですけど、その時は海賊船のイメージで、もう少し全体的な質感としてゴリっとしたサウンドで。こっちは北欧系の透明感のあるイメージでした。

ーー「Lingerie」はダンサブルな曲ですが、K-POPをイメージされたのでしょうか。

VALSHE:そうです! 

ーーなんだかずっと答え合わせのようになっててすみません(笑)。

VALSHE:合っております! ありがとうございます(笑)。

ーー今作で唯一VALSHEさん以外が作詞された曲で、作詞を手がけられたのはdorikoさんですね。

VALSHE:この曲での主義・主張って「信頼」についてなんです。自分が信頼を置いているクリエイターと音楽を作っていることがここに紐付いてくるんですが、曲だけ決まったあと「自分は何も関知しません!」と宣言していて。だからサウンド感もすべておまかせで、なぜこういう歌詞やタイトルになったのかは後から聞いたんです。テイク選びも自分は参加せずに、彼らが「良い」とするものを選んでもらっています。話を聞きながら「あ、このテイクを選んだんだ」って答え合わせして(笑)。

ーーある意味、周りの方がVALSHEさんを料理した曲なんですね。

VALSHE:まさに料理してもらった曲です。ここまで手放しで作った曲ってなくて。自分がタッチしていたら「Lingerie」というタイトルの曲は先ずできないと思うんですよ(笑)。ファンの方と『ISM』の試聴会をしたんですけど、そのときにものすごく反応がよくて。自分がすべてを管理・料理するんじゃなくて、「VALSHEが素材となって料理されたものも美味しいんだよ」という提案が伝わったら嬉しいなと思っています。

ーー「doctus-7.8.6.9-」は舞台『Wizards Storia』テーマソングで、ファンタジックな雰囲気です。

VALSHE:このサウンドのテーマはまさにクラシック・ファンタジー。VALSHEが出演した舞台『Wizards Storia-initium-』に徹頭徹尾、120%寄り添いました。結果として混声合唱の壮大な作品を知らずとも面白い楽曲が作れたと思っているんですが、この「doctus-7.8.6.9-」という曲は舞台を見ていないと「どうしてこういう言葉運びなのか」「そもそもどうしてこういう曲調なのか」など、疑問もたくさん浮かぶと思うんですね。その制作スタンスそのもので、「作品に寄り添う創作」を主張した曲なんです。自分が携わった舞台や作品までぜひ興味を持ってほしいという気持ちもあります。舞台自体は先日千秋楽を迎えましたが、pixivで小説も公開されているんです。気になった方はぜひチェックしてほしいですね。

◆小説はこちらから!

ーー「浪漫主義」(ロウマニズム)は和風テイストの曲ですが、VALSHEさんの楽曲ではめずらしいですよね?

VALSHE:単体発表やリード楽曲という意味では、そうですね。ジャンル感で言うと、和ファンクのテイストを目指した楽曲です。文化放送『矢野・小南 絵物語WA-GEI』というラジオドラマのエンディングテーマになっていて。落語や講談をベースにしている作品なので、世界観、時代感でも歩み寄れたらいいなと思っていました。楽曲を聴いたときに「傾いてるな!」と情景を感じるようなサウンドになればいいなと。

ーー最後は「INTRODUCTION」。はじまりの意味を持つタイトルの曲が最後に収録されているというのも斬新だなと思いました。

VALSHE:そうですね。受け取ってくれる方にとって、『ISM』のその次を想像できる曲になればいいと思ったことも理由のひとつです。

ーーすごくカッコいい曲ですよね。メタリックで。

VALSHE:初めて王道のメタルに挑戦した曲です。最後にふさわしい曲……バラードだったり、シンガロングできるような曲だったりを収録するのも素晴らしいと思いますし、自分自身もそういう流れにすることもありますが、今回のアルバムに関しては「今」と「ここから先」をこのアルバムで持って帰ってほしくて。

ーー12年目の幕開けとなる曲を最後に、ということですね。それぞれの曲に主義・主張があって。これがミニアルバムっていうのがまた贅沢ですね。

VALSHE:ミニアルバムという括りはひとつのコンセプトを描くのにジャストサイズなんですよね。ボリューム感としては過不足ない気がしています。

ーー最後に “これから”のことについても教えてもらってもいいでしょうか?

VALSHE:正直、次の曲のことっていうのは具体的には考えていなくて。単独ライブが決まったので、今はそこが自分の脳を占めています。ここから先のライブなどでまた新たなものを吸収して、感じて、持ち帰って、『ISM』の次に挑みたいなと思っていて。矢印がどの方向に向かうかは、2022年のVALSHEが知ってるんじゃないかなと思っています。

[インタビュー・逆井マリ]

VALSHE 6th mini ALBUM『ISM』

発売日:2021年12月22日(水)

◆初回限定盤 【CD+DVD】

 
価格:¥4,500(税込) ¥4,091(税抜)
品番:JBCZ-9125

<特典DVD>
・「GIFT」Music Video
・Making of 「GIFT」

◆通常盤 【CD】 ※白皙描き下ろしイラストジャケット

 
価格:¥3,500(税込) ¥3,182(税抜)
品番:BCZ-9126 

◆収録楽曲 ※全形態共通
1. ISM
作曲:VALSHE 編曲:G’n- [instrumental]
2. GIFT
作詞:VALSHE 作曲:バルと瞬さん★ 編曲:Shun Sato
3. シープランド
作詞:VALSHE 作曲:向井健太(Dream Monster) 編曲:高木龍一(Dream Monster)
4. アンプレイアブル
作詞・作曲:VALSHE 編曲:G’n-
5. cue.
作詞:VALSHE 作曲・編曲:doriko
6. Lingerie
作詞:doriko 作曲:平間光 編曲:山崎佳祐
7. doctus-7.8.6.9-
作詞・作曲:VALSHE 編曲:松岡美弥子(未来古代楽団)
※「Wizards Storia」テーマソング
8. 浪漫主義
作詞・作曲:VALSHE 編曲:G’n-
※文化放送「矢野・小南 絵物語WA-GEI」エンディングテーマ
9. INTRODUCTION
作詞:VALSHE 作曲・編曲:山本伸弘
計9曲収録

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