今年のBLは何があった?「BL定着期」の2021年を総まとめしてみた!の巻 【アニメイト編集部BL塾・応用編】
2021年オススメ作品
阿部:それでは、毎回恒例のオススメBL作品をご紹介していこうかなと……。
石橋:お願いします!!
阿部:今回は3つにカテゴライズして紹介していきます。
石橋:「ギャップ受け」……?(また新しいワードきた……)
阿部:例えば、見た目はすごく強面なのに中身はすごく甘えん坊、みたいな。
石橋:ああ!なるほどね!
阿部:今お話したのはまさに『甘えたい獣(※14)』という作品です。受けの子はすごく強面で不良っぽい見た目なのに、誰かに甘えたくて「レンタルお兄さん(攻め)」に甘えまくるお話。今年のギャップ受けオブザイヤーを表彰したいです。
※14:甘えたい獣
ブライト出版にて発売されたゆいつ先生の漫画作品。レンタルお兄さんのアルバイトをしている大学生・新。依頼主を名乗る高校生・潤太は高校生の超強面ヤンキーで……。男前なのに甘える潤太に、新は次第に惹かれていく。
石橋:ギャップ受けオブザイヤー(笑)。以前読んだ『REVERSE(※15)』の作者さんですよね? こういう作品も描かれるとは!気になる!
※15:REVERSE
コアマガジンにて刊行されたゆいつさんの漫画作品。刑事の浮島は危険な状況に陥ると興奮を覚えてしまう性癖の持ち主だった。とある事件をキッカケに知り合った真壁という謎の男とセフレ関係になった浮島。真壁との出会いから事件が進展していく。
阿部:しっかりカッコいい男性が甘えてしまう姿に、キュンとします!
もう1作品は『拒まない男(※16)』。昼は笑顔を崩さない完璧なホテルコンシェルジュ、夜は探偵(攻め)の助手と、2つの顔を持つ受けが登場します。
※16:拒まない男
竹書房にて発売された三月えみ先生の漫画作品。浮気調査中の探偵・黒瀬望海がひそかに想いを寄せている優秀なホテルコンシェルジュで黒瀬の探偵助手・白石 律。思いがけず両思いであることが分かるのだが、律は何かを隠しているようで……。一筋縄ではいかない恋愛模様が描かれる。
阿部:この時点でギャップがあるのですが、表層的なギャップだけではなく深層的なギャップを持ち合わせているのがポイントです。徐々に明かされていく内面はギャップの嵐。
石橋:面白そ~!
阿部:続いてはこちら。
石橋:どちらも表紙がオシャレ……。
阿部:シンプルな美が詰まっていますよね……。『メロンの味(※17)』はまさに表紙買いしてしまった作品です。
※17:メロンの味
大洋図書にて発売された絵津鼓先生の漫画作品。ライブハウスで働く同性愛者の中城は、常連客の木内から急な同居を頼まれる。中城は自身のセクシャリティを木内に打ち明けるも気にしない様子。しまいには人肌が恋しいからと一緒に寝る習慣ができ……。
阿部:現代社会に生きる上でのままならなさがリアルに描かれていて、じんわりと共感が募る作品でした。上下巻なのでストーリーの濃さは十二分にあり、満足度高しです。
石橋:上下巻あるとお話に奥行きが出て、より濃密になりますもんね! これも読んでみたい。
阿部:そして、もう1作品は『大人倶楽部(※18)』。
※18:大人倶楽部
海王社にて発売された吉田ゆうこ先生の漫画作品。両家の子息が多く通う学園に転校してきたはるかの目的は、“大人倶楽部”でおもちゃとして男に抱かれ実家の援助を得ることだった。そこで、一人の部員・永良に体を暴かれるも、後に同室だということが判明する。
阿部:最初学園が舞台で始まるのですが、物語の中盤から社会人に移ります。「学園BL」「大人BL」1冊で2つのジャンルが楽しめるんですよ! しかも1冊完結ではあるもののページ数が多いため、駆け足に感じることもなく。前半から後半にかけてしっかりとストーリーが帰結していくので、1冊なのに満足度がめちゃくちゃ高いです。
石橋:一石二鳥…いや、三鳥・四鳥にも感じられそう! 絵もすごく素敵です。気になる!
阿部:そして最後はこちら。
石橋:出た!! 今回「黒髪メガネ受け」作品がなかったので、あれ?と思っていたのですが……最後に入れてくるとは、さすがセンセイ。抜かりない(笑)。
阿部:(笑)。まず1作品目の『CALL(※19)』。フリーターでそこそこクズな攻め(表紙の人)をお金で買う「黒髪メガネのオジサン受け」が登場します。
※19:CALL
オークラ出版にて発売された朝田ねむい先生の漫画作品。バイトが長続きしないフリーターのハルヒコは、興味本位で見ていたウリ専デートサービス店の前で偶然出会ったアキヤマに従業員だと偽ってしまう。金をもらうためにアキヤマをだますハルヒコだったが、アキヤマの純粋さに徐々に惹かれていく。
石橋:「黒髪メガネのオジサン」「フリーターを買う」……要素が盛り盛りだ……。何か抱えていそうな雰囲気を察知しました。
阿部:お察しの通りオジサンはいろいろ抱えています。そんなことは梅雨知らず次第に惹かれていく攻めというお話です。
くたびれた黒髪メガネのオジサンってなんかエッチなんですよね、謎の色気がある……。物語終盤にタイトルの意味が分かるのですが、それがまた秀逸で。朝田先生の作品はどれも構成が面白くジェットコースターのように読者の気持ちを動かす方だなという印象があります。オジサンの色気とストーリーの秀逸さを楽しんでほしい1冊です!
石橋:今までに読んだことのないような黒髪メガネ受けだし、ストーリーも気になるし……!
阿部:そして、最後に紹介するのは『Badass(※20)』。こちらは表紙を見ていただければお分かりになるかと思いますが、攻めはガッツリ人外です。
※20:Badass
プランタン出版にて発売されたハジ先生の漫画作品。とある理由から害獣駆除をするチームに左遷された竜族のアルフォンスは、左遷先で自由奔放な上司・ダンテと出会う。相棒として扱ってくれるダンテに惹かれていくが、華r4絵は出生に何か秘密を持っているようだった。
石橋:ケモミミは見たことありましたけど、ここまでしっかりと人外なBL作品ははじめてみました!
阿部:こちらは「お仕事×ファンタジーBL」です。とにかく世界観が丁寧に作り込まれていて、ストーリーだけでもしっかり楽しめます。こちらの黒髪メガネ受けはいわゆる「ビッチ」なのですが、仕事はできて誰からも好かれる魅力的なキャラクターです。しかもほんのり暗い過去を持っているのもポイント。メガネをかけているのは、そういった二面性から来るものなのかな……?と勝手に想像してニヤニヤしました。
石橋:(笑)。
阿部:アクションっぽいシーンもありつつ、エッチなシーンもしっかりあります。石橋さんはファンタジーがお好きですし、ぜひオススメしたい作品です! 1冊完結ですが、読みごたえ十分ですよ。
石橋:今回はいつも以上にバリエーション豊かで、どれを読むか悩むな〜。毎回恒例の宿題としていくつか選んで読んで感想を書きます!
2022年の展開&トレンド予想
阿部:さて、ここからは今後のBL動向についてお話していきます。
2022年以降のBL映像コンテンツもいろいろ予定されています。
石橋:日本のBL作品がタイでBLドラマ化するんですか?
阿部:そうなんです! タイBLドラマ版『LOVE STAGE!!(※21)』の反響によっては、日本発のBL作品が海外でドラマ化されることも増えるかもと期待しています!
※21:LOVE STAGE!!
角川書店から刊行された影木栄貴さんと蔵王大志さん合作の芸能界BLマンガ作品。超有名芸能一家に生まれたマンガ家を目指すオタクの大学生・瀬名泉水と人気俳優・一条龍馬が繰り広げるラブコメディ。泉水の兄・瀬名聖湖のモデルが影木栄貴さんの弟・DAIGOさんであることが話題に。
阿部:おそらく年明けにも続々と発表されていくと思いますので、引き続きBL塾でも追いかけていきますよ〜。
また、トレンド予想はこちらです。
石橋:「長尺」については、ストーリー重視の作品が増えているからということですかね?
阿部:その通りです。特に「ファンタジーBL」は先ほど石橋さんがおっしゃっていたように、お話に奥行きを持たせやすく、シリーズ化しやすいので、今後増えていくのではないかと思っています。
石橋:「縦読みマンガ」というのは……?
阿部:韓国発の電子書籍サービス「ウェブトゥーン」に今注目が集まっていて、こちらに配信されている作品すべてが縦読みフルカラーマンガなんです。現在は「ピッコマ!」「LINEマンガ」などのサービスでウェブトゥーン作品が配信されています。
石橋:そうなんですね…! 現時点でもBL作品は配信されているんですか?
阿部:現在は直接的な性描写なし(R18的な表現なし)なら「ピッコマ!」で、直接的な性描写有の作品だと「めちゃコミ!」で読むことができますよ。
また、ウェブトゥーンで人気の作品はコミックスとしても販売されています。例えば『夜画帳(※22)』はBL作品で話題となりコミックス化されました。
※22:夜画帳
フロンティアワークスから発売されたByeonduck先生の韓国発BL漫画作品。元・春画師のナミンが名家の長男で男色家として有名なスンホに「私のための春画を描け」と誘われるところから物語が始まる。
阿部:余談ですが、韓国ではウェブトゥーンの女性向け作品ではBLジャンルの人気がすごく高いそうです。
石橋:ということは、日本でいい作品が生まれたら、韓国で流行る可能性もありそうですね!
阿部:あるかもしれませんね! あと、韓国ではウェブトゥーン原作のドラマ・アニメ化が多いんですよ。2020年に流行ったドラマ『梨泰院クラス(※23)』や、アニメ『神之塔(※24)』もウェブトゥーン発です。
※23:梨泰院クラス
韓国のケーブルテレビ局JTBCにて放送されたTVドラマ。原作はチョ・クァンジンによる同名の韓国WEB漫画。ソウルの飲食店激戦区・梨泰院を舞台に、飲食業界で成功を目指す若者たちが描かれる。
※24:神之塔
TOKYO MXほかにて放送されたTVアニメ。原作はSIUによる同名の韓国WEB漫画。頂上にたどり着けば、この世のすべてが手に入る塔。大切な人のため、その頂上を目指す少年・夜の過酷な試練が描かれる。
石橋:えぇ! そうだったんですね…!
阿部:今後は日本の電子書籍媒体がウェブトゥーン事業に参入し、力を入れていくようです。今までにない新しいBL作品が読めるかもしれません。メディアミックスの展開も含め、ぜひ注目したいなと思っています!
石橋:ですね! あとは「ヤンキーBL」になぜ注目が?
阿部:これは今年、某ヤンキーマンガが流行ったので……。
石橋:あーーー!なるほど!(笑)
阿部:pixivを見ていても今一番熱さを感じているので、この波が商業にも来そうだなと注目しています。もともとBLの中でもヤンキー系の作品は人気が高いので、2022年は作品数が増えそうだなぁと思ったところです。
石橋:僕、あんまりヤンキーBL読んだことないので、2022年には波に乗って読んでみよう! その時はセンセイ紹介お願いします!
阿部:承知です!(笑)。