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『幻想三國誌 天元霊心記』OP・Machicoインタビュー

『幻想三國誌 天元霊心記』OPはオリエンタルで壮大なバラード。約2年振りとなる自身の名義でのシングルで新境地を切り拓いたMachicoさんにインタビュー

低音中心のバラード「ENISHI」

ーー例えば<迷いも力にして さあ>や<答えを見つけるため さあ>という節は、力強さというよりも語りかけるような優しさ、滑らかさがあるように感じました。

Machico:ありがとうございます。“滑らかさ”は意識したところなんです。特にAメロは音数が少ないので、リズムとなるものがなくて。バックの音を聴きながら自分でテンポを作っていくという感じだったんです。だから最初は歌ったときは走りがちになってしまって。でも今回の楽曲はミディアムテンポで壮大な楽曲だからあまりせかせかしたようなリズムの取り方は合わないなと。それでAメロは何回も録り直させてもらいました。聴こえは滑らかなんですけど、所々鼻濁音(「が・ぎ・ぐ・げ・ご」などの濁音の子音を発音するとき鼻に音を抜く発声方法のこと)を入れたり、鼻濁音をつけずにリズムで引っかかりをつけるような発声方法を入れたり……。

ーー素人目線で恐縮なのですが、鼻濁音はどのようなディレクションのもとで織り交ぜられるのでしょうか。

Machico:例えばBメロの濁音の<誰かが><導が>をどっちも鼻濁音にしてしまうとまろやかすぎるからということで、一個目の<が>だけを鼻濁音にして、二個目は鼻濁音をなしにしたんです。そういうやり方は初めてでした。私の歌の癖的に、バラードでもガチガチに音を発音してしまう癖があったんです。最初は滑らかさとリズムの両立に苦戦しましたが、鼻濁音がところどころ入ることで、自分の個性もありつつ、違った滑らかさも表現できましたんじゃないかなって。自分ひとりだと見つけられなかった表現方法だったので、ディレクターの方と一緒に歌を作っていくって楽しいなと改めて感じました。

ーーディレクターさんはいつもお世話になっている方ですか?

Machico:そうです。いつもお世話になっている仲のいいディレクターさんです。毎回「まっちゃんじゃなければこのままでオッケーテイクを出すけど、まっちゃんだから突き詰めたい」と言ってくれるんです。「全然良いと思うけど、俺はもっとできると思うけどな〜」って(笑)。ガチガチにプレッシャーを与えてくるわけではなくて、良い感じで私の負けん気を引っ張り出してくれるというか。

ーー気持ちを乗せてくれるんですね。

Machico:そう、乗せ上手なんですよ(笑)。バラードって本当に難しいから、いかにサビで力に説得力を持たせるかが肝になってくると思うのですが、私があまり専門用語がわからないのでイメージ図を描きながら説明してくれるんです。

ーーイメージ図ですか?

Machico:そうなんです。言葉だけで説明するよりも「ここに何かがあるような感じで歌って」とかイメージを投げてくれて、それを受けて歌っていく感じです。だからすごくやりやすくて。

ーーそれは歌いやすそうですね。

Machico:そうなんです。作詞のミズノ(ゲンキ)さんも、作曲・編曲の睦月(周平)さんも、過去にお世話になっているので、私の声の幅を知ってくれた状態でこの曲を作ってくれているんです。「ENISHI」は低音が中心になってるんですけど、めちゃくちゃ無理した低音ではなくて、自然と出る範囲内だったので、そういう意味でもすごく歌いやすかったです。

ーーハイトーンボイスが特徴的なMachicoさんにしては珍しいタイプの曲ですもんね。オープニングにしても少し珍しいタイプの曲というか。

Machico:『幻想三國誌 天元霊心記』の制作の方も「オープニングはアッパーなイメージがありますけど、壮大で重厚感のあるものにしたい」とおっしゃっていたので、Machicoとしても新たな一面を見せられるような曲にしたいなと思っていました。

ーーそんな中で<一人じゃ見えない景色と>の部分はハイトーンで攻めてますよね。低音ボイスが中心なだけにより際立っています。

Machico:そうなんです! そこが睦月さんもトップと言っていました。「めちゃくちゃ高いのにさらっと出たから、一瞬そこがトップだったことを忘れてた」って(笑)。

ーー珍しくファルセットっぽいですけど、どうだったんでしょう?

Machico:ファルセット寄りだったと思います! そこも新しいかもしれません。私、普段ファルセットでいくようなところを表で歌いがちで(笑)。でもあそこの部分は繊細さや弱さを表現する部分だから、意思の強い雰囲気で歌うよりは、ファルセットで歌ったほうが曲のバランス的にも良いということでした。でもファルセットをあまりする機会がなかったので「なんで表で歌えるのに裏に回らなきゃいけないんだ〜」って最初は思っていたんですけど(笑)、それもまた新しい武器になるんじゃないかなって。

ーーなっていると思います。「ENISHI」というタイトルもこれまでになかった雰囲気ですよね。

Machico:確かに! 英語表記というのも珍しくて。このタイトルの意味に込められた意味というのはミズノさんしか知らないんです。でもすごくいい言葉だなって思いました。「縁(えにし)」という日本語表記もある中であえて英語表記になっているのは……この作品は、いろいろな言語を話す方が見られることを前提に製作されている作品だからかなって思いました。日本語って他の言語だと表現しきれない、絶妙な繊細さがあると思うんです。海外の方が「ENISHIってどういう意味だろう?」って日本語に興味を持ってくださったら良いなって。日本の言葉が訳されず、そのまま伝えられるということも嬉しいです。

ーーアニメーションでどのようなストーリーが展開されるのかが楽しみです。

Machico:私自身も細かなストーリー展開に関してはまだ知らなくて、皆さんと同じタイミングで知る感じなんです。大まかなあらすじは事前に教えていただいたので、この「ENISHI」を歌う時は戦場に大切な人が行ってしまう見届ける女性の気持ちで歌いました。待つ側の心境というか……無事を祈る気持ちを込めながら。待つってすごくつらいことだと思うんですよね。自分が何もできない分、結果を待つしかできなくて。もしかしたらこの見送りで最後になるかもしれない。

ーー私も曲を聴きながらそれをすごく感じました。もしかしたら、最後になる可能性も感じているのかなって。

Machico:割り切りたくても、割り切れない儚さも乗せられたらなと思っていました。だからと言って全編に渡って“私とあなた”だけの目線ではなく、Aメロは第三者的な目線で歌っていて。その人たちを取り巻く全体的な状況を俯瞰で見るような、思いを馳せるようなところからはじまって一対一になっていく。そういった目線の変化も面白いなと思っています。

ーー確かに物語のような曲になっていますもんね。だからこそ切なさが響くというか。信じるって難しいな、紙一重のところがあるなと思いました。

Machico:「行かないで」と言えたらどれだけ楽だろうなと。でもそれを言ったら相手の夢や志を否定してしまうことになってしまう。かと言って自分が解決できるわけじゃないよなって自分も不思議な感情になりました。あまり今までそういう感情になったことがなかったので。

ーー確かに携わられている作品的にも。

Machico:そうなんです。あと、プライベートでもそうだったんですよね。(地元の)広島の話で言うと、毎年原爆の日は言葉を発信するようにしていて、今までは自分だけの視点で「戦争って嫌だな」と思っていました。でも……私の甥っ子が今小学校1年生なのですが、身内に自分より弱くて守らなければいけない子ができて、もし甥っ子が関係したら……と思うとどうしようもない気持ちになるなって。守りたい人が増えると物事を見る角度がこんなに変わるんだなと感じました。さまざまなことに目を向けられるようになった今だからこそ、「ENISHI」という曲も歌えるようになったのかなと。

ーーそんなタイミングでこの曲に出会えたというのが運命的ですね。

Machico:そうですね。多分数年前だったら壮大なバラードとしてしか歌えなかったと思います。バラードってその人が経験してきたものが厚みとなって出てくるものだと思うんです。そこにいかに心情や深い思いを乗せられるかが肝になってくると思うので、少しでもそういう歌声に近づけていたら……と思っています。

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