WOWOWオリジナル長編アニメ『永遠の831』両アーティストが解いた神山健治監督のメッセージとは? 主題歌担当・angela、OP曲担当・カノエラナさんの座談会をお届け!
取材日が初対面となったお互いの印象は?
――カノエさんは、同じ作品でangelaさんと一緒に楽曲を担当することになった時はどう思われましたか?
カノエ:すごく驚きました。ご一緒できることも嬉しかったですし、最近では『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』(のOP曲「乙女のルートはひとつじゃない!」)の印象が強かったので、どんな楽曲になるんだろうとワクワクしました。
実は今日、初対面で、お会いするまではドキドキして、「どんなことをお話ししよう!?」と。実際にお会いしてみたらお二人共、温かく接してくださったし、私の緊張もほぐしてくださって、ありがたかったです。
atsuko:正直に、「面倒くさいなあ」とか「変な絡みするなあ」とかおっしゃっていただいていいんですよ。気を付けるので(笑)。
カノエ:そんなことないです! むしろいっぱい話してくださって嬉しかったです。
atsuko:カノエさんはTikTokに力を入れていらっしゃることも知っていたし、動画も見させていただきました。いろいろな方のカバーをされていましたが、ギターがとても上手で。私もアコースティックギターを弾き始めて、半年くらいなので、「どれくらいやったら、これくらい弾けるようになるんだろう?」と思ったり、自分の個性も出しながらカバーできているので、「どんな曲でも歌いこなすんだな。おそろしい子」と思いました。このギャグは通じているんだろうか? 知ってます? 『ガラスの仮面』の月影先生が白目になるやつ?(笑)
KATSU:それは俺も怪しいよ!
カノエ:私、わかります!
atsuko:よかった。「ラナ、おそろしい子」ということで(笑)。今日お会いした時、緊張されているのは伝わってきましたが、まじめな方だなと。あと発言などもちゃんとしているので、見習おうと思いました。私たちはすぐにおもしろいほうにいこうとするので(笑)。
KATSU:同じキングレコードのSONIC BLADEに新しく所属されるということで、どんな方なのかなと思っていました。そして先日、まだ未完成ではありましたが、『永遠の831』の映像を拝見させていただいたら、カノエさんが歌うOP曲も入っていて。聴いてみたら『永遠の831』の世界観をしっかり捉えていて、「これなら安心だ」と思いました。「自分の名前を売ろう」とか「楽曲を有名にしよう」と思っている人ではないなとわかりました。我々がタイアップ曲を担当するということは作品を背負うことであり、カノエさんにとっては初めてのタイアップ曲なので、今後もずっと『永遠の831』という作品名はついてくるわけで。心配がないわけでもありませんでしたが、しっかりとOPらしい立派な楽曲だったので、安心して本編に入ることができました。
――カノエさんご本人の印象はいかがでしたか?
KATSU:緊張してましたね。僕も緊張してます。
カノエ:本当に緊張されていますか?
KATSU:ごめんなさい。適当に言っちゃいました。
一同:(笑)
神山監督作品といえば『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズ。KATSUさんが抱いたジェラシーとは!?
――これまでの神山監督の作品について、どんな印象を抱かれていましたか?
カノエ:『東のエデン』など拝見させていただきましたが、社会の空気とか、「誰が敵なのか?」がわからなくても、何とかしようとする想いや力を感じました。『永遠の831』もそうで、私も普段、「この国は誰が動かしているんだろう?」と考えることがあるので、この作品も入りやすかったです。
atsuko:私にとっては『永遠の831』が初めて接する神山監督作品だったので、フラットな状態で作品に入れたことは良かったかなと。神山監督は私の中ですごく硬派な方なんだろうなと思ったり、SF作品のイメージがありましたが、『永遠の831』は、メッセージ性は強いけど、押し付けるのではなく、あくまで問題提起で、受け取る側に考えさせる作品を作る方なんだなという印象に変わりました。
KATSU:『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』で、菅野よう子さんの音楽に魅せられてから神山監督が手掛けている『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズにハマりました。その数年後、神山監督作品ではありませんが、『攻殻機動隊 ARISE』に冲方丁さんが脚本で参加されることになって、『攻殻機動隊』に冲方さんを取られたような気持ちでした。でも見てみたらおもしろかったです(笑)。今回、神山監督の作品に関わらせていただくことができて、楽しみでした。
「作品を完結させる方法を考えながら作った」angela作の主題歌「ひとひらの未来」
――今回のOP曲と主題歌はどのように制作されたのでしょうか? まず主題歌の「ひとひらの未来」についてangelaのお二人からご紹介ください。
KATSU:お話をいただいた後、atsukoさんが脚本を読んでいて、物語の世界観の説明を受けました。その時点でイメージしていたのは完成した曲とはまったく違ってシンプルで、カントリーやブルースみたいなギター1本で、「スカボロー・フェア」(サイモン&ガーファンクル)、アーティストでいえば、スザンヌ・ヴェガみたいな感じがいいのかなと思っていました。
そこから脚本で読んだ後、視聴者の方に問題提起をして終わるお話だなと思ったので、「この話を完結させる方法って何だろう?」と考えた時、季節を変えることが物語を完結することにつながるのかなと。季節が変わって、主人公のスズシロウくんが一歩前に踏み出す、そんな方向を常に考えて制作しました。
そして季節を変えるサウンドを考えてみたら、学生の街の高田馬場あたりが舞台になっていて、そこで新聞配達をしている風景を楽曲に落とし込みたいなと。曲を聴いた時に、まだ暗い早朝に外に出て、青い空から朝日を浴びて、街が夕景のように金色に輝くまでの時間を冒頭に入れて、サビでは急に季節が変わったことを感じられるような、そんな楽曲になっていると思います。
atsuko:シナリオを読むと内容がわかる分、歌詞で言い過ぎてしまうことがよくあって。なんならストーリーを全部書いてしまうくらい(笑)。説明くさい歌詞になってしまったらKATSUさんに指摘してもらいながら直していって。今回はシナリオを読んで、景色がきれいだと感じるところがあったので、そういう部分を歌詞で見えるように、アレンジでは場面が変わったと感じられるように、2人で協力して作っていきました。
また監督から「ちょっと後ろ向きな歌詞になっているので、もう少し前向きな未来が感じられるようにしたい」というオーダーがあったので、言葉尻などを変えながら踏み出すところまで書いてみました。
KATSU:実は歌詞を書き直すまでは『831』をどう春に持っていくのか、考えていました。そこで春は、日本人にとって「門出」や「入学」など一歩踏み出すイメージがあるワードなので、桜が舞うというキーワードが入っている部分をアレンジとして利用させてもらいながら、春を感じられるサビにしてみました。
――タイトルの由来を教えてください。
atsuko:ある日、突然、輝いた未来が訪れることはないと思うけれど、自分が一歩を踏み出すことで、大きく輝かしい未来ではなくても変えることができると思うんです。「舞い散る桜」というフレーズもありますが、桜は花びらの数が多いし、その分だけの未来がある中で、ひとひらの未来でも感じられるよ、という想いを楽曲に込めたので、このタイトルにしました。
KATSU:曲名はほとんどatsukoさんが決めていますが、天才的な曲名を付けた経験を過去に何度もしているので100%信頼しています。もちろん、この曲名もピッタリだと思います。