『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』山口 晋監督インタビュー|ミニチュアの実写を2Dと合成しているのが注目ポイントの1つ、そしてゲスト声優の香川照之さんに送った手紙とは?
ミニチュアの実写を2Dと合成しているのが注目ポイントの1つ。ゲスト声優の香川照之さんに送った手紙とは?
――制作するにあたって苦戦されたことはありますか?
山口:いろいろなことがあったし、言い始めたらキリがありません(笑)。作中でスネオが作ったミニチュアを、実際に作ってもらって本編の中に盛り込むという試みをしていますが、今回のセールスポイントの1つとして、20世紀の特撮に対するリスペクトがあります。『スターウォーズ』ではマットペイントという背景の絵と実写映像を合成する技術を取り入れていますが、実写の中に絵を描いて置くというCG一辺倒ではないところに僕らはすごくワクワクしたので、今回はその逆で、実写をアニメの中に入れていて。僕らにとって特撮スピリッツでもあり、こだわったポイントなので、何か感じていただけたら嬉しいです。
実際に作った模型とアニメの絵柄や色味、構図感などをピッタリ合わせることは難しいのですが、こちらで描いた2Dのレイアウトを基に、白組さんに調整していただいたり、その模型を2Dに落とし込むところが苦労したというより、苦労していただいたことですね。
――今作では、パピ役の朴 璐美さん、ロコロコ役の梶 裕貴さん、ドラコルル役の諏訪部順一さんという声優陣に加え、香川照之さん、松岡茉優さん、ミルクボーイの内海 崇さんと駒場 孝さんがゲストで演じられていますが、香川さん、松岡さん、ミルクボーイさんのお芝居の感想は?
山口:松岡さんの第一声で「ドラコルル」というセリフを聞いた時、「やっていただいてよかった」と思いました。ヒロイン的な立ち位置ながら、かわいさや甘さだけでは成立しないキャラですし、パピというキャラに説得力を持たせるための精神的な後ろ盾として作ったので、きちんと筋が通っていなければいけないキャラですが、しっかりと演じていただけました。
ミルクボーイさんは初めてならではの一生懸命さや必死さが、反乱軍に立ち向かう地下組織のリーダーとパイロットと、うまくシンクロしていたのも運がよかったなと。こんな言い方をしたら失礼かもしれませんけど(笑)。デコボココンビや常にギャグを言っているようなキャラではなく、国を救うために真剣に生きる若者たちにすごく合っています。
そして香川さんですが、お手紙で「一番の嫌われものをやってください」と失礼なお願いをしたのですが、快く引き受けていただきました。収録では、重鎮の役者さんなのに身振り手振りを交えた文字通りの体当たりで演じていただきました。憎々しく演じていただきたかったんですけど、思いのほか人間臭さが出て、誤算ではありましたが、それも込みでいいキャラにしてもらえたと思っています。
普通の少女が友情のために勇気を出して冒険に挑んでいる作品。純粋にエンターテイメントとして楽しんでください
――今作の見どころや注目ポイントのご紹介をお願いします。
山口:原作でもスネオが「主人公」とか「副主人公」とかよく言われますが、本当は勇気を出して実行したいけど、口先だけでやれないタイプの人がほとんどじゃないかと思っていて、その代表としてスネオくんがいてくれて。同調圧力に屈して、やりたくもないことをやらされていて、「自分のほうが正論なのに」という想いをした人がたくさんいると思いますが、「じゃあどうしたらいいのかな?」という答えを、スネオくんを借りて自分なりに描いたつもりです。
あとときどき、のび太くんがヒーローっぽくなりすぎることがあるなと思っていたので、ことごとく失敗するけど、何でみんなが彼を盛り立てて、彼を中心に1つになって、結果的にリーダーみたいな存在になれているのか、カッコよくないのび太の意義も描けたらと。のび太がすることはことごとく失敗するという部分を意識して演出しているので、僕としては見て感じていただきたいところです。
――上映を楽しみにされている皆さんへメッセージをお願いします。
山口:新型コロナの影響で公開を1年延期することになってしまいましたが、公開までこぎつけることができました。普通の少年少女たちがみっともなく、あがきながらも友情のために勇気を出して冒険に挑む作品で、今のアニメ界では珍しい作品だと思います。
また『ドラえもん』をまったく知らない方が見ても楽しめるものにしたいと思っていますし、脚本の佐藤 大さんと、旧作を含めて別作品のパロディーにはならないようにしましょう、と話しました。過去の主題歌を使えば、皆さんが感動してくださることもパロディをすれば喜んでもらえることもわかっていますが、純粋に原作に沿いながら今の時代に合わせて作りました。『ドラえもん』ファンの方にも初めましての方にもエンターテイメントとして楽しんでいただけたら幸せです。
作品概要
『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』
■公開:2022年3月4日(金)
■原作:藤子・F・不二雄
■監督:山口晋
■脚本:佐藤大
■キャスト:ドラえもん:水田わさび のび太:大原めぐみ
しずか:かかずゆみ ジャイアン:木村 昴 スネ夫:関 智一
パピ:朴 璐美 ロコロコ:梶 裕貴 ドラコルル:諏訪部順一 ギルモア:香川照之 ピイナ:松岡茉優
地下リーダー:内海 崇(ミルクボーイ) パイロット:駒場 孝(ミルクボーイ)
■主題歌:Official 髭男 dism「Universe」
■挿入歌:ビリー・バンバン「ココロありがとう」
■上映時間:1時間49分