表立った「狂気」と内なる「冷静さ」の度合いに気をつけている│TVアニメ『殺し愛』リレーインタビュー│第10回:ニッカ役・森田成一さん
いよいよ物語が佳境を迎えるTVアニメ『殺し愛』。アニメイトタイムズでは、本作の出演キャスト陣によるリレーインタビューを実施している。
リレーインタビュー第10回は、ニッカ役の森田成一さんが登場。リャンハと突然戦い始めたかと思えば、あっさり見逃すなど、その行動には謎も多いニッカだが、森田さんは「クレバーなニッカ」だと分析しているようで……。彼の魅力や演じ方について、たっぷり語ってもらった。
ニッカは作中で描かれる「狂気」をあぶり出す役割を担っているのかも
――原作の第一印象はいかがでしたか?
森田成一さん(以下、森田):最初はダークなお話……例えば、『ボーン・アイデンティティー』のようなサスペンス・アクション、「殺し合い」の作品かと思いました。ところが「殺し愛」。ラブなんだなと(笑)。リャンハとシャトーの関係性が人間らしくて、ただ殺伐とした暗殺者のお話ではないところが面白かったです。
――ニッカはどのような人物だと捉えましたか?
森田:少しキレている人って重要な存在にはなってくるんですが、たいてい最初から死亡フラグが立っていますよね?
――ありますね(笑)。
森田:それをニッカにも感じて、最初は「参ったなぁ」と(笑)。ただ、そういう役どころって物語の大筋とは違ったサイドストーリーで必ず物語を膨らませる役割を果たすので、ニッカの立ち位置はすごく気に入っています。しかも、見た目と内面に大きなギャップがあるところが面白いんです。
――というと?
森田:ピアスをたくさん開けてどこかヘラヘラしているという、捉えどころがない見た目をしているんですが、モノローグに注目すると物事を冷静に分析しているんです。普通は逆ですよね? 冷静な部分を表に出して、内なる狂気はなるべく隠すのが人間だと思います。ところが、ニッカという人間はこれを逆転させているんです。この不気味さこそがニッカの魅力だと思うので、表立った狂気と内なる冷静さの度合いに気をつけながら演じるようにしています。
――確かに、他のキャラクターたちとは逆ですよね。
森田:そうなんです。みんな平静を装いながら殺し合いをするという狂気じみたことをしている。それを逆転させたニッカは、作中で描かれる狂気というものをあぶり出す役割を担っているんじゃないかなと思いました。
――ニッカの役作りで他に何か意識されていることはありますか?
森田:『殺し愛』はオフゼリフが多いんです。キャラクターが画面に映っていないところで喋るセリフのことですね。それが声の演技としては遊べる部分なので、そこでセリフを踊らせてみたり、息を入れてみたりしてニッカらしさを盛り込むようにしています。
――アドリブということですか?
森田:目立つようなアドリブではなく、例えばセリフの前で「ふっ」と息を吸ってみたり、笑っているニュアンスを込めたりするイメージです。アニメのセリフ回しではないセリフ回しを少し入れてみたかったんです。どこか外画っぽさがある作品なので、そういうニュアンスを少しだけ入れるようにしています。
――また、第8話では車中でリャンハとやりとりをする場面がありました。あちらを演じられての感想はいかがでしたか?
森田:密室劇ってすごく好きなんですよ。昔の映画だと『十二人の怒れる男』(法廷を舞台にしたアメリカ映画)なんかも大好きですし。第8話は車というさらに狭く、移動して逃げられない空間で心理的な駆け引きが行われる。一番面白いシーンでした。ニッカの性格がはっきりとわかる場面でもあるので、ジェットコースターのような演じ方をしています。
――確かに、テンションの落差が激しかったです。
森田:陽の部分と陰の部分をジェットコースターのように分けつつ、波の大きさが小幅になっていって、最後に重なっていくようなイメージですね。そういう設計で演じたいなと考えていました。
――ニッカの観察眼もいかんなく発揮されていました。
森田:分析のために、リャンハをけしかけるのが面白かったです。本当に冷静に分析しているんだなと。一番面白かったのは、怪我をしたリャンハにハンドタオルを渡すところですけどね。
――急に差し出していましたよね(笑)。
森田:ハンドタオル、持ってるんだって驚きましたよ(笑)。ちゃんとしてるなって。自分の車を汚されたくないと言っていたので、かなりの潔癖症なのかも。きっと車の中に常備していて、自分のポケットにはアイロンをかけたハンカチを入れているんだろうな……なんて想像してしまいました。
――第9話もまた、リャンハと対峙する場面がありましたね。
森田:第9話だけを見るとニッカが単純にリャンハとバトルをしたがっているように見えますよね。ただ、それだけだとニッカがただ暴力行為、人殺しが好きな人間になってしまいますし、ニッカのモノローグを聞く限り、そういうタイプではない気がしたんです。
もちろん、自分がどれだけ強いかは気にしていると思います。リャンハという人間が現れて、やっと腕試しができる。そういう感覚がないわけではないんです。リャンハに攻撃をされるときに、「獲物がかかった」とばかりにニヤッと笑う瞬間がありましたし、ニッカが殴るときのアクションにしても、バトルを楽しんでいるような余裕を感じさせられましたから。
――でも、それだけではないと。
森田:そうです。リャンハを見逃すというところにすごく引っかかったんです。当然、そんなことをすればドニーや他の組織の人間から爪弾きにあうのは明白ですし、クレバーなニッカなので、それでもやるということは何かしらの理由があるんだろうなと。