「フォークダンスDE成子坂」名作コントが原作『其れ、則ちスケッチ。』声優キャスティングの妙を石ダテコー太郎監督が語る!インタビュー【後編】
『それすけ』は石ダテ監督のライフワーク「ガツガツせずに長く続けていきたい」
――気が早いのですが、『それすけ』の今後の展開や夢をお聞かせください。
石ダテ:僕だけでなく『それすけ』に関わっているコアメンバーは、あのお二人のネタを後世に残すためにやっているので、ゴリゴリとお金儲けをするプロジェクトではありません。とは言え、正直に言うと多少なりともお金を生むコンテンツに育ってくれれば、ご遺族様にも還元できるかなという気持ちもあります。
――一般的なアニメ作品とは異なりますね。
石ダテ:今後のことはまだわかりませんが、まずはちゃんとYouTube版の連続コント動画作品を12本と、PRラジオを作りきって、それから考えようと思います。昨今は簡単に生配信ができる環境を作れるので、そのうちVtuberデビューもできたらいいなあと思っています。
――かつて監督が作っていた『直球表題ロボットアニメ』や『みならいディーバ』のころとは、環境が大きく異なっていますから。今後の展開も期待しています!
石ダテ:なので、『それすけ』は期間を区切るわけでなく、僕のライフワークのひとつとして、時間をかけて作っていきたいと思っています。「こういう素晴らしいお笑いを残したコンビが存在していたんだ」ということを、今後の人生をかけて少しでも広めていきたいんです。
――ライフワークですか。
石ダテ:はい。ここ数年、世の中はコロナ禍じゃないですか? エンタメのインタビューで話す内容じゃないかもしれませんが、少々暗い話をしてもいいですか?
――お願いします。
石ダテ:僕は何年か前に母を亡くしまして、ふたりの師匠も亡くなってしまいました。そして子供が産まれました。この数年の間に、人の生死がバババッと訪れたんです。しかも世間はコロナ禍。あまりにジェットーコースターすぎて、これまで僕が持っていた価値観が根底から壊されたんです。人の生死と共存できるエンタメってなんなんだ!って。いろいろ考えているうちに、ちゃんと誰かの役に立てるものにリソースを使いたいという欲求が高まってきたんです。人間はいつ死ぬかわかりませんからね。いつどのタイミングで人生が終わったとしても、「楽しかったな」とスッキリした気持ちで最期を迎えられたら良いな、という気持ちが大きくなりました。もちろん、これまでも業界に一石を投じたい思って作品を作ってきましたけど、それとはちょっと違う想いが出てきたんです。
――とてもいいお話をありがとうございます。
石ダテ:今回の作品は、お世話になった師匠とご遺族、成子坂ファンの方々のために「僕が役に立てることはないか?」と真剣に考えて作りました。これまでは自己表現をしてきましたが、今回は違います。誰かのお役に立ちたいと思って自然に自分の考え方がシフトし、同じ想いを持つメンバーや、優しくて心強い協力者たちに恵まれて生まれた作品です。僕自身は誰からどれだけ叩かれようが、まったく気にしない人間です。だから別にキレイな活動をしようなんて思って始めたわけじゃありません(笑)。
――お笑いサイコパスと呼ばれるだけありますね!(笑)
石ダテ:桶田敬太郎さんのお子さんは桶田敬太郎さんが引退した後に生まれたので、自分の父親が芸人だったということをあまり信じていなかったそうです。ですが、桶田敬太郎さんのお別れ会が行われると、会場には爆笑問題さんとかピコ太郎さんとかホリプロの社長さんとか、そうそうたるメンバーが集まってきて、お子さんは驚いていました。「父親は本当に芸人だったんだ」って。さらに、桶田敬太郎さんの奥様も芸人を辞めてから知り合ってご結婚された方だったので、芸人としてどれだけ活躍していたのか、あまりリアリティーがなかったそうです。
――それなら驚いて当然です。
石ダテ:お別れ会に桶田敬太郎さんの家族写真が飾られていて、まだ小さな息子さんと二人で湯船に入っている写真があったのですが、僕はそれを見て「きっと自分がやってきたことをお子さんに見せたかっただろうな」と思ってしまいました。直接伺ったことはありませんが、僕はずっと桶田さんと一緒にいたのでわかります。それに気づいてしまったから、フォークダンスDE成子坂さんのコントを後世に残すしかない。僕がやらなかったら、さんざんお世話になった先輩の恩を仇で返すことになってしまいます。
――お話を伺っていると、石ダテ監督がどれだけかわいがられてきたか伝わってきます。
石ダテ:当然、『それすけ』の作品については賛否あると思います。僕は当時フォークダンスDE成子坂さんのファンだった人たちを、このリメイクで満足させようという気はあまりありません。オリジナルじゃない時点で、彼らのファンは満足させられませんからね。ファンのみなさんには、作品自体よりも「あのコンビを、このネタを語り継ごうとしている連中がいる」という事象に満足していただけたらと思っています。
――あくまでもリメイク作品ということですか。
石ダテ:ですが、どれだけ僕らが真剣に作っても、「こんなの成子坂じゃない。成子坂を冒涜している」と感じる人もいるかもしれない。リメイクなので、そう思う方がいるのは仕方ないことです。でも、フォークダンスDE成子坂さんのファンの多くは、ネタを後世につなぐプロジェクトを応援してくださると思っています。『それすけ』は、まだ始まったばかりのプロジェクトです。マンパワーにも限りがあるので現状はこじんまりとしていますが、ここから少しずつ進めていきたいと思っています。今日はいろいろな想いを語らせていただきましたが、『其れ、則ちスケッチ。』を見てくださった方が、少しでも楽しんでくれて、僕らの活動を応援してくれたら嬉しいです。
『其れ、則ちスケッチ。』作品情報
とある島になぜか2人きりで取り残されてしまった少女、 ハジメとチヅル。 自給自足のサバイバル生活の中、 大好きなコントをしながらお互いを励まし合って日々を過ごしていく……。
声優自身がモーションキャプチャーでキャラクターを動かしながら収録する1話10分程度の動画作品群。
ストーリーはもちろん、 ちょっと変わった制作経緯で話題の本作は、 これまでYouTubeで配信されている本編に加え、 TikTok、 ラジオ(それらじ)等様々なメディアで展開してきました。 満を持して始まる地上波放送は、 1回の放送につき2話ずつ、 6週にわたってお送りする予定です。
放送局
TOKYO MX:毎週日曜25:05~
https://s.mxtv.jp/anime/soresuke/
スタッフ
原作:フォークダンスDE成子坂 桶田敬太郎・村田渚
コンセプトデザイン:吉崎 観音
構成・演出:石ダテコー太郎
製作:其れ、則ちプロジェクトチーム。
キャスト
ハジメ:植田ひかる
チヅル:春木めぐみ
公式チャンネル
公式ツイッター(@SketchSore)
ラジオ『其れ、則ちラジオ。』(それらじ)公式サイト
ファンコミュニティ『其れ、則ちコミュニティ。』(それにてぃ)
公式TikTok