『銀河英雄伝説 Die Neue These 激突』第二章上映記念──多田俊介監督インタビュー|「掘り下げられるところがあるならば、オリジナルであっても掘り下げようと思いました」多田監督が3rd seasonで心がけていたこと
原作でも人気の高い査問会がここに。要塞戦の迫力にも注目!
――ノイエ銀英伝のアフレコは、どのような感じなのでしょうか?
多田:メインキャストの方々は自分の役を研究してきてくれていますね。コロナの影響もあって全員一緒には収録できないのですが、それでも、たとえばヤンとユリアンなど、掛け合いの多いキャラクター同士は日程を合わせて、一緒に録っていただいています。
それに午前中で銀河帝国を録ったら、午後からは自由惑星同盟に入ってもらう、みたいに、なるべく揃えるようにはしていました。
それよりも大変だったのは、脇を固める人たちで。銀河帝国の貴族というのがどういうものなのか、軍事用語以外にも口調というのがあるので、その理屈を分かってもらうよう説明することが大変でした(笑)。
――ヤンとユリアンの掛け合いで言うと、それこそ「初陣」でのやり取りが良かったです。本当は軍人にさせたくなかったヤンで、生き残ったことは嬉しいんだけど、戦果がすごくて複雑、といった感じのところがよく出ていました。
多田:そのエピソードでは、見ている人にユリアンの成長を分かってもらうようにすることが大事でした。1st seasonと2nd seasonの流れを知っていれば分かると思うんですけど、ユリアンがヤンの言うことをよく聞く賢い子から、提督に苦言を呈する少年へ成長していっているんですよね。
――「激突」第二章でも、キャゼルヌにヤンのことを頼まれるくらい頼もしくなっていますからね。
多田:そうですね。それは原作にもある内容ですけど、ほかのキャラクターって、そんなに変化がないから、ユリアンはちゃんと変化があるように絵作りをしているつもりなんです。
――恋愛面とか、まだ描くところがあると思いますので、ユリアンの成長は今後も楽しみです。第二章で言うと「査問会」が始まるというのも大きなトピックスです。もともとかなり人気の高いエピソードでしたので。
多田:査問会は、ヤンが政治家たちを論破していくというのを楽しみに見ていただければいいのかなと思います(笑)。そこで、ただしゃべっているだけではないというテンポ感を作るのが大変だったりするんですけど。
――動きのない会話のやり取りですからね。
多田:そこはやはり難しかったです。キャラクターにカメラを入れようとすると、内心どう思っているのかというところに触れたくなってしまう。でも、あそこって人間ドラマをやっているシークエンスではないので、そこを捏造はできないんですよね。
あくまで理論と理論がぶつかっていて、先程のシビリアンコントロールとは何ぞやというところとか、ここまで『銀英伝』から得た知識を、こういうことだよって満足するためのところでもあったりする(笑)。
――これまでも見せてきましたけど、あらためて「ヤンってこういう思想の持ち主なんだ」っていうのがはっきりと分かりますしね。
多田:寄ると言った割に心情描写がないので、そこをちゃんと見てもらうという難しさはありました。
――査問会でヤンが呼び出されている中で、要塞対要塞が繰り広げられるわけですが、要塞の描写が、とにかく迫力があってカッコ良かったです。
多田:今回は映像の要素として、要塞同士が戦っている様子をちゃんと描写していこうということで、尺的にも、原作から想定されているボリュームよりも増えているんです。
そこは「初陣」でのユリアンと上司のやり取りのような感じで、オリジナルキャラクターが出るわけではないですが、要塞戦の攻防を丁寧に描いています。
――「激突」第三章になるとは思いますが、要塞砲の打ち合いも迫力がありそうです。
多田:OVAシリーズでは、手書き背景にビームが当たるとエフェクトを作画する形だったと思いますが、我々は宇宙戦艦を3DCGで作っているので、その空間の中に存在するものも3Dで作らないと撮影ができないんです。そんな事情もあるので、ガイエスブルク要塞は楽勝で商品化できるモデルがあるんです。
――かなりマニアックな感じもしますが(笑)。
多田:あははは(笑)。いやいや! すごい精密モデルが作れると思いますよ。
――イゼルローン要塞のほうが人気がありそうな気がします。
多田:周りを覆っている流体金属の装甲を剥がしたモデルなら面白いかもしれないですね。
――ちなみに要塞戦を丁寧にというのは、具体的にはどういったことなのでしょうか?
多田:要塞戦の戦い方をゼロから考えるって大変な作業なんですけど、それを作家の豊田巧さんにお願いしているんです。
――要塞同士と言っても、艦隊戦から白兵戦までありますからね。
多田:そのあたりを、この距離になったから次はこういう作戦があって、みたいな戦い方を豊田先生に作っていただいたんですね。
――それを原作にあったような出来事は変えずにやっていったのですか?
多田:そうですね。原作には忠実に、点描だったところをしっかり描写できるように考えていただいた感じでした。
――楽しみです。では最後に、3rd season「激突」を楽しんでいるファンの方へメッセージをお願いします。
多田:第二章は、第三章への橋渡しにはなるのですが、「査問会」で登場するホワン・ルイやジョアン・レベロといった議員は、その場限りの人ではなく、銀英伝という長大な作品の中で、まだ生き続けて、役割を持っている人たちなので、そういうところも注目しながら観ていただければなと思います。
アニメ映画『銀河英雄伝説 Die Neue These 激突』作品情報
上映日
第一章:上映終了
第二章:上映中
第三章:2022年5月13日(金)
各章3週間限定上映
金額
1,900円(均一)
上映館
全国36館
スタッフ
原作:田中芳樹(東京創元社刊)
監督:多田俊介
シリーズ構成:高木登
助監督:森山悠二郎
キャラクターデザイン:菊地洋子 寺岡巌 津島桂
総作画監督:後藤隆幸 菊地洋子
特技監督:竹内敦志
メカデザイン:竹内敦志 臼井伸二 常木志伸
オリジナルメカデザイン:加藤直之
プロップデザイン:太田恵子
プロップデザイン・紋章デザイン:秋篠Denforword日和
3D:ランドック・スタジオ I.G3D
3D監督:磯部兼士
美術:Bamboo
美術監督:竹田悠介
美術設定:塩澤良憲 曽野由大 金平和茂
美術デザイン:渡部隆
色彩設計:竹田由香
音響監督:三間雅文
音楽:橋本しん(Sin)井上泰久
音楽制作協力:Sony Music Publishing (Japan)Inc.
主題歌:「dust」SennaRin(SACRA MUSIC)
テーマソング「melt」SennaRin(SACRA MUSIC)
撮影監督:荒井栄児
編集:黒澤雅之
制作:Production I.G
監修:らいとすたっふ
企画協力:ROOFTOP
制作協力:徳間書店
宣伝協力:アールアールジェイ
製作:銀河英雄伝説 Die Neue These 製作委員会
キャスト
ラインハルト・フォン・ローエングラム:宮野真守
ヤン・ウェンリー:鈴村健一
ジークフリード・キルヒアイス:梅原裕一郎
ユリアン・ミンツ:梶裕貴
パウル・フォン・オーベルシュタイン:諏訪部順一
ウォルフガング・ミッターマイヤー:小野大輔
オスカー・フォン・ロイエンタール:中村悠一
アレックス・キャゼルヌ:川島得愛
フレデリカ・グリーンヒル:遠藤綾
ワルター・フォン・シェーンコップ:三木眞一郎
アンネローゼ・フォン・グリューネワルト:坂本真綾
ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ:花澤香菜
オリビエ・ポプラン:鈴木達央
ダスティ・アッテンボロー:石川界人
ナレーション:下山吉光
シリーズあらすじ
数千年後の未来、宇宙空間に進出した人類は、銀河帝国と、自由惑星同盟という“専制政治”と“民主主義”という2つの異なる政治体制を持つ二国に分かれた。
この二国家の抗争は実に150年に及び、際限なく広がる銀河を舞台に、絶えることなく戦闘が繰り返されてきた。
長らく戦争を続ける両国家。銀河帝国は門閥貴族社会による腐敗が、自由惑星同盟では民主主義の弊害とも言える衆愚政治が両国家を蝕んでいた。
そして、宇宙暦8世紀末、ふたりの天才の登場によって歴史は動く。
「常勝の天才」ラインハルト・フォン・ローエングラムと、「不敗の魔術師」と呼ばれるヤン・ウェンリーである。
ふたりは帝国軍と同盟軍を率い、何度となく激突する。
「激突」あらすじ
帝国暦488年(宇宙暦797年)、ラインハルトは門閥貴族連合との内戦に勝利し、名実ともに銀河帝国の最高権力者となる。しかし、自らの半身ともいうべきキルヒアイスを喪った哀しみは、彼の心に暗い影を落としたままであった。時を同じくして、自由惑星同盟では、救国軍事会議によるクーデターを鎮圧したヤン・ウェンリーが、名将としての声望をますます高めていた。しかし、権力に固執する同盟政府の政治家たちは、ヤンへの警戒心を強めていく。
翌年、銀河帝国軍はイゼルローン要塞の奪還作戦を開始した。過去も現在も難攻不落を誇る軍事拠点に対し、ケンプ提督率いる帝国軍は驚くべき攻略法をもって攻めかかる。それは、これまでの歴史にない戦闘の始まりとなるのであった。
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