アニメ映画『バブル』 カイ役・梶裕貴さんインタビュー|盟友だから感じる「荒木監督にしか作れないアニメ」とは?
ヒビキとタッグを組む熱いシーンは声がつぶれそうになるほどの熱演
ーーアフレコは分散収録の形だったと思いますが、どなたと一緒に収録されたのでしょうか?
梶:僕は、宮野真守さん(シン役)と千本木彩花さん(ウサギ役)との3人グループでした。とても熱い収録でしたね。あ、それから余談なんですが……いよいよ最後のシーン!というところで、僕が次の現場の時間が迫っていて、スタジオを出なくてはいけなくなってしまって。ここから最高潮に盛り上がる!って時にですよ……(笑)。
別現場が終わった後、戻って合流するかどうかという案もあったのですが、結局その日はバラシになり。結果的に、1カ月くらい空いてから残りを収録することになったので、自分の中で気持ちを繋ぐのが本当に大変でした。
ーー他のキャラの声を聴きながら収録されたんですか?
梶:いえ、僕らは特に音声を聴くことなく収録しました。後から伺った話によると、ちょうどマコトの声を録り始めたくらいのタイミングだったそうですが、まだ整っていなかった部分もあるらしく、その場の空気感を大切に、ヘッドホンなしでの収録を優先した形になったそうです。まあ、そもそもこの3人での掛け合いだけで、かなり入り乱れる感じもありましたからね。
ーー中盤のヒビキとタッグを組むシーンでは熱いお芝居が繰り広げられていたので、一緒に掛け合いをされたのかなと。
梶:カイは一見クールそうにも見えですが、実は熱い男。リーダーとして客観的に状況を分析できる冷静さは持ち合わせているけれど、内に抱えている熱はすごいんです。なので、ヒビキとのバディ感を感じられるそのシーンは、まさに、そんな彼の熱量が表に出た瞬間だったと思いますね。台本を読んだ時から、とても大切なシーンだなと感じていました。
それでも、実際に現場でいただいた演出としては、僕が想定していた「今の倍くらい盛り上げてほしい」という演出があって。まだ中盤にも関わらず、あのシーンで喉がつぶれそうになるくらいに叫びました。かなりエネルギッシュな形に仕上がったので、「ここにヒビキがどうハマってくるのかな?」とすごく楽しみになりましたね。視聴者の方に、カイの熱い部分が伝わったら嬉しいです。
異質な空気感を持つ二人が惹かれあうのがドラマチックであり、ロマンチック
ーー主人公のヒビキ、そしてウタの印象は?
梶:ヒビキは天才気質で、異質な空気感を持っているキャラクターだなと感じました。何を考えているのかつかめない、つかませない部分がある青年。もちろん、そこにドラマがあり、次第に彼の本質も見えてくるわけですが。そして、それはウタにも言えることで。お互いが、「お互いと出会えたことで本当の自分になれた」といったような印象的なセリフもありましたが、そのために敢えて、つかみどころのない、不完全な設定になっているんだろうなと感じましたね。
ウタは、ほかの登場人物たちとはまったく違う気配と存在感を持っていて。序盤のヒビキとウタが出会う水中のシーンは、まさに『バブル』を象徴するような、とても美しい空間になっていましたよね。ミステリアスだけどキュートで、(作品に)興味を持たせる存在として、ふさわしいキャラクターだなと感じました。間違いなく本作品のアイコン的な存在だと思いますが、なかでも特に衣装が印象的で、「どうして制服がベースになったんだろう?」と、すごく気になっています(笑)。
ーー感情が見えにくい2人がひかれあうところにもドラマを感じるし、ひきつけられました。
梶:それがドラマチックであり、ロマンチックなところで。ヒビキとウタが一緒に跳び回るシーンは、どこか恋の始まりを予感させますし、2人の相性の良さや運命的な出会いであることが一目でわかりますよね。ヒビキも自然と笑顔になっていたりするんですよ。微笑ましいですよね。
でも……そのまま距離がなくなるのかなと思いきや、そこには"触れ合おうとしたヒビキ"と"触れることを躊躇したウタ"という、絶対的な何かに阻まれてしまっている二人の存在が描かれていて。澤野さんの音楽の力も相まって、あそこまで気持ちを盛り上げられていた分、その反動で、逆に絶望感すら感じてしまいますよね。視聴者としても(笑)。とても上手く作られているなと感じました。リアルな恋愛にも、そういった部分って少なからずある気がしますし。