アニメ映画『バブル』荒木哲郎監督インタビュー|「ラブストーリーなのにも関わらず、超絶アクション作画が炸裂する非常にユニークな作品」
キャラクター描写で『カバネリ』から学んだこととは?
ーーパルクールに加えて、東京全体が降泡現象という危機にさらされる大スペクタクルに、「ボーイ・ミーツ・ガール」的なにんぎょ姫などいろいろな要素が詰め込まれていて、1つにまとめるのは大変だっただろうなと思いました。
荒木:最初からこの配合を目指していたのかと言えば、正直わかりません(笑)。その都度、自分がやりやすかったり、好きだったものを選んでいったらこの配合になっただけで。シナリオの段階では「いったい自分はどうするんだろう?」と思いながらやっている部分もありましたが、絵コンテが描き終わったくらい、制作も中盤を過ぎたあたりで、「このバランスだな」という手応えを感じました。
ーーまた、メインキャラだけではなく、登場するキャラすべてにドラマが用意されていることにも驚きました。
荒木:特別なことをしたつもりはなくて、シナリオ上の役割が存在していたから芝居ざまも当然変えなくてはいけないので、普通にやりました(笑)。キャラに関しては「それぞれに何かやらせないと」とは思っていました。ただ100分という時間にしてはこの人数は多いので、描き切れなかったキャラもいますが、「何だかわからないインパクトは残せたからよし」というふうに納得していった感じです。
そう言われて今思い出しましたが、『甲鉄城のカバネリ』の劇場版の時、「出番は量じゃないな」と思ったんです。あるメインキャラの出番がものすごく少なくなってしまって、「シリーズのレギュラーキャラなのに、10カットくらいしか出番がなくてゴメン」と思って。でもその少ない出番は大きな見せ場だったから、ファンの方は出番が少なかったとは感じなかったみたいで。「量ではなく、おもしろいことをさせたかどうかなんだな」とその時に思った覚えがあります。今回も全員におもしろいことをさせられたのかはわかりませんが、やれるだけのことはやりました(笑)。
ーー今回制作する上でこだわられた点や難しかった点を教えてください。
荒木:現場的に一番大変だったのはアクションです。と言いながらも自分自身が苦しんでいたのかというとそうでもなく、苦もなくできるから得意ということなんでしょうね。
でも絵コンテを好きなように描くと、アニメーターさんにその一連のアクションを何カ月もかけて描いていただく形になってしまって。手数や手順が多いカットで、3Dで動く背景に合わせて、2Dのキャラクターをのせて動かすので、3Dと作画のセクションの間で行ったり来たりの繰り返しでいつまで経っても終わらないので、「大変そうだな」って(笑)。やれる人たちを集めてもらっているので、大丈夫なことはわかっていたし「これはやってもらえるだろう」という信頼感もあったので、ただ上がってくるのを楽しみにしていました。
どちらかといえばシナリオを書いてもらってOKはしたけど、果たして絵で伝えられるだろうかというところが大変でした。「まあ、何とかなったかな?」とは思っていますけど(笑)。
スタッフチームはまさに「荒木哲郎フェス」!?
ーー脚本の虚淵さん、キャラクターデザイン原案の小畑 健さん、音楽の澤野弘之さんなどそうそうたるメンバーが集結しましたが、スタッフ組みのポイントをお聞かせください。
荒木:川村さんが「荒木哲郎フェス」という言い方をよくしてくれますが、自分でもその言い方がふさわしいなと思いました。自分が一番信頼する人たちに順番に声をかけていった、ただそれだけなんですけど(笑)。
ーーそうだったんですね(笑)。監督からお一人ずつにオーダーされたことはあったのでしょうか?
荒木:今まで僕と一緒に作品を作っていた人ならなおさら、「今回は女性に見せることを意識しているし、明るくきれいでかわいらしいものを作りたいです」という話を最初にしました。
例えば澤野さんにもその話から始めて、「今までは力強い戦闘シーンみたいなものが多かったけど、今回はもっとリリカルなものをやってみようと思うんです」と。そういう世界でも澤野さんの魅力は発揮していただけると思っていたし、ドラマや朝の連続テレビ小説のお仕事もされていて、いろいろな澤野さんがいるので、新しい澤野さんを見せてくれればいいなと。同じように他の方にも今までの仕事との違いに関して説明していきました。