アニメ映画『バブル』荒木哲郎監督インタビュー|「ラブストーリーなのにも関わらず、超絶アクション作画が炸裂する非常にユニークな作品」
志尊 淳さん、りりあ。さん、広瀬アリスさんを声優として起用した理由
ーーキャスティングについても興味深くて。主人公のヒビキ役を志尊 淳さん、ウタ役をりりあ。さん、マコト役を広瀬アリスさんが担当されていますが、どのように決められたのでしょうか?
荒木:ご推薦して頂いた方たちと、順番にお会いさせてもらって、感触を確かめていきました。自分はキャストとしては声優さんとしかほぼお仕事をしたことがなかったので、「俳優さんとは大丈夫だろうか?」という不安もありました。いざお会いしてお芝居してもらうと、自分は芝居にある程度のリアル、生っぽさがあるほうが好きですが、俳優さんたちの存在感は圧倒的で素晴らしかったです。普段、生身で演技をされているので、例え声だけになっても説得力があって、すごくよかったです。
ーーヒビキとウタはミステリアスさがあるキャラで、あの不思議さや透明感も志尊さんとりりあ。さんにしか出せない魅力なのかなと思いました。
荒木:ミステリアスさについてはあまり考えていませんでしたが、ヒビキに関してはクールでありながら根底には優しさや繊細さを感じられることと、僕が自分ごとに思えるかどうかが大切でした。主役を選ぶ時に「この人、俺じゃないな」と感じないことが大事で。志尊さんはあれだけ人気があって活躍なさっているのに、人柄に真面目さがあって、あんなに美しい方にも関わらず、「これは俺だな」とずうずうしくも思えたのがポイントでした。
りりあ。さんに関しては、元々EDテーマを歌っていただく方としてオファーさせていただきました。でもウタというキャラは、最初は何もわからないところから段々と知性を獲得していって、言葉をしゃべるようになっていくので、「ヒロインの声もやってもらってもいいかも」とみんな思って。この作品を通じて、お芝居を覚えていく点ではウタの知性の獲得とシンクロして、ドキュメンタリックな感触を生むのではないかと。その予想が大いに当たりました。また今回欲しかったふわっとやわらかい感じも、ご本人の人柄や声などすごく合っていて。りりあ。さんの普段の笑い方も魅力的で、本編用に収録した音声とは別で、おしゃべりしている時の笑い声もこっそり録っておいて、本編の中でも使っています。
ーー広瀬さんの演じるマコトは、ヒビキやウタとは対照的で、真っすぐで感情も豊かで、人間臭いキャラですね。
荒木:マコトに必要だったのは知性と親しみやすさの同居ですね。親しみやすくて、どこにでもいそうなお姉さんに思える瞬間と、知性があって賢い科学者としての面、どちらも出せることを条件に探したら、広瀬さんはまさにそんな方でした。ご自身も親しみやすいお姉さんであり、美しくてミステリアスで知的な女性であり、役そのものにも説得力を与えてくれました。
荒木監督作品の歴代の主人公を演じた声優が結集!
ーーそして声優陣ですが、宮野真守さんや梶 裕貴さん、畠中 祐さん、千本木 彩花さんなど荒木監督作品ではおなじみの方々ですね。
荒木:歴代の主役がそろっているんですけど、主役の方々はその作品を通してしっかり話をして、心が通じ合っている人たちなので、折に触れて会いたくなるんですよね。だから「会おうよ」という感じで集まってもらいました。
ーー梶さんが監督から「こういう作品を作るので協力してほしい」と直接声をかけてもらったとおっしゃっていました。それと同時に「なぜカイ役だったんだろうか?」とも。カイのようなキャラは監督の作品には珍しいような。
荒木:確かにこういうキャラはあまり出てきたことがないかもしれませんね(笑)。梶さんには毎回、前にやったキャラとは違うキャラを演じてもらうようにしているんです。どんなキャラでも、何をお願いしてもできる方なので。今回はこういうキャラで見てみたかったし、「自分の前でやってもらったことがない梶さんはこれかな?」と(笑)。
ーーそして宮野さんのシンはヒビキたちを見守る兄貴的な存在ですね。
荒木:怪しくなかったり、企んでいない宮野さんもあっていいかなと思ったからでしょうか(笑)。宮野さんがやってもらったら、「ひとクセある感じに見えてしまうかも」と少し思ったこともありましたが、「しっかり誠実な、大人な人です」と説明したら、ちゃんとそういうお芝居もしてもらえるし、同化もしてもらえて。高らかに笑わない、渋い大人の宮野さんも見ることができて嬉しかったです。
宮野さんとは『DEATH NOTE』から15年くらいの付き合いで、お互いの成長過程を一緒に仕事をしながら見てきて。実際には雲の上のような存在ですが、同志感みたいなものもあるんです。「地に足がついた大人を、普通にやれる宮野さんになっているんだな」と感慨深いものもありました。
この時代の空気感の中で明るく、楽しいものを作りたくなった
ーー改めて本作の見どころや注目ポイントのご紹介と、監督が本作で伝えたいことをお聞かせください。
荒木:元々アクションが得意な僕とWIT STUDIOに青春ラブストーリーをやらせるという、ある種、プロデュース側のイタズラっぽい目論見でもありましたが、正面からのっかっていった結果、ラブストーリーなのにも関わらず、超絶アクション作画が炸裂するという、非常にユニークな作品になって、「これはいいぞ」と僕も大好きな作品になりました。
はっきりしたメッセージがあって作り始めたわけではありませんが、こういう時代だからこそ、思い切り爽快に楽しんでいただきたいと思っています。存分に心を使って、泣いて笑って、気持ちよくなってほしいです。あんなにダークでハードな作品ばかりで作ってきたけど、この時代の空気の中では自分も明るく、楽しいものをやりたくなったことも時代を映しているような気がします。
ーー皆さんへメッセージをお願いします。
荒木:この作品はやっぱり映画館で見ていただきたいです。僕らも存分に楽しんでいただけるように頑張って作ったので、視界を埋める画面と、包まれる音響がある最高の環境で見てください。皆さんが劇場に足を運んでくださることを願っています。
アニメ映画『バブル』作品情報
<劇場版>2022年5月13日(金)全国公開
<NETFLIX 版>2022年4月28日(木)全世界配信
ストーリー
本作の舞台は世界に降り注いだ泡〈バブル〉で、重力が壊れた東京。ライフラインが断たれた東京は家族を失った一部の若者たちの遊び場となり、ビルからビルに駆け回るパルクールのチームバトルの戦場となっていた。ある日、危険なプレイスタイルで注目を集めていたエースのヒビキは無軌道なプレイで重力が歪む海へ落下してしまった。そこに突如現れた、不思議な力を持つ少女ウタがヒビキの命を救った。
そして、2 人にだけ特別な音が聞こえた…。なぜ、ウタはヒビキの前に現れたのか。二人の出会いは、世界を変える真実へとつながる。
監督:荒木哲郎
脚本:虚淵玄[ニトロプラス]
キャラクターデザイン原案:小畑健
音楽:澤野弘之
企画・プロデュース:川村元気
制作スタジオ:WIT STUDIO
配給:ワーナー・ブラザース映画
声の出演:
志尊淳
宮野真守
梶裕貴
畠中祐
千本木彩花
井上麻里奈
三木眞一郎
広瀬アリス
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