『きんいろモザイク』クラウドファンディング企画[連載第3回] 『きんいろモザイクThank you!!』を作った監督の名和宗則さん、アニメーションプロデューサーの富岡哲也さんにインタビュー【前編】
アニメーション制作におけるロケハンの重要性
──次の質問です。シリーズを通してもっともよくできた好きなシーンは?
名和:手前味噌ですが、自分が担当した1期の第6話と、2期の第10話が好きです。
富岡:忍が流れてくるところですね。あれは最高でした(笑)。
名和:そうそう。夏休みのお話で、川に遊びに行く回ですね。そして、Bパートが夏祭りの回です。
富岡:名和監督の作品は、ああいうシーンがおもしろいんです。名和監督のセンスが光ってました。
名和:2期の第10話も夏休みのお話で、富岡さんと一緒にロケハンに行きましたね。
富岡:はい。行きました。真冬の海に……デカい男ふたりで。
一同:(笑)
名和:真夏の話を作るのに、真冬の海をロケハンしたんです。
富岡:作品と同じシチュエーションで旅をしながら資料に使う写真を撮影したのですが、電車の座席は狭くて忍たちのようには座れなかった。
名和:僕らにあの座り方は無理だよ(笑)。
富岡:『きんいろモザイク』のキャラクターたちはきれいに座れるんだけど、僕と名和監督は身体が大きいので脚がぶつかっちゃって窮屈でした。がんばって忍たちと同じように座ろうとしたんですけど!
一同:(笑)
富岡:僕が好きなのは、1期のミュージカルパートかな。自分が苦労したってのもあるんだけど、あれはすごく良くできたと思います。
名和:あのシーンのおかげで、ミュージカルパート以外の前半の絵コンテを3日で描かなきゃいけなかった……。
一同:(笑)
──どういうところが大変でしたか?
富岡:あのお話は、普段の『きんいろモザイク』のゆるくかわいい日常ではなくミュージカルでした。なので、歌と動きを合わせたり、アクションがあったり。さらには『きんいろモザイク』には似合わない砲台が登場していました。だからアクション作画に慣れているアニメーターの方に参加していただきました。
名和:富岡P的には、1期の第1話も大変だったでしょ?
富岡:あぁ、確かにそれもありますね。
名和:天衝監督とイギリスにロケハンに行って、それをアニメに反映して。大変だったはずです。
富岡:急きょロケハンをすることになったので、名和さんが監督をした「この中に1人、妹がいる!」の打ち上げに、僕と天衝監督は参加できなかった……。
一同:(笑)
富岡:しかも、英語をまったく話せないふたりが一週間もイギリスに行きました。一週間は長く聞こえるかもしれませんが、けっこうギツギツの過密スケジュールでしたね。
──英語ができないと、不便だったのでは?
富岡:不便ですよ(笑)。通訳もいないから、オールジェスチャーで乗り切りました。ロケハンの最中、実は電車移動のときに一度だけちょっと迷子になりそうになったりして。
──電車で移動したのですか!?
富岡:先ほどお話した冬の海と同じように、イギリスでも忍のとった行動と同じように移動したからです。コンテのラフとシナリオがあったので、それをなぞりながら再現しました。
──イギリスのロケハンでは、どのくらい写真を撮りましたか?
富岡:イギリスのときは6000枚ちょっと撮ってますね。同じ建物や風景でも、いろんなアングルで撮影するんです。少しでも作画の参考になるように考えながら撮ります。もちろん建物だけでなく、日常の写真も撮影します。街の人の流れを写真や動画で残しておくと、モブの参考になるからです。