夏アニメ『うたわれるもの 二人の白皇』オシュトル(ハク)役・利根健太朗さんインタビュー|藤原啓治さんから引き継いだ大役にプレッシャー。研究を重ねた末に見出した“ハクらしさ”とは
藤原さんの演じたハクという存在を感じられるように
――改めて『二人の白皇』のハクを演じる上で意識したこと、難しかったことを教えてください。
利根:人間味のあるキャラクターであることは『偽りの仮面』から変わっていませんが、『二人の白皇』では周囲の状況が一変しています。「ハクは死んだ」「我が名はオシュトル、右近衛大将オシュトルである」という台詞からもわかるように、人前ではハクというキャラクターを押し殺しながら生きようとしているんです。
今作はそんなハクの義理人情に厚く責任感の強い一面が見られますし、そうじゃないと最後まで貫き通すのは難しいのではないかと思います。
原作ゲームや前作『偽りの仮面』のアニメは既に完結しているので、ファンのみなさんや僕の中に藤原さんの演じられたハクが答えとして存在しており、引き継いでいても絶対に蔑ろにはできない。
だから僕が自分勝手にハクを演じるのではなく、藤原さんの演じたハクが、そこにいるのだとファンのみなさんに感じてもらえるようなお芝居を一番に考えています。
とはいえ、藤原さんが物凄い感情や魂をぶつけてお芝居に臨まれていたシーンでは、どうしても声真似だけでは太刀打ちできない場面もあって。なので、そういうシーンでは、藤原さんのお芝居に負けないように僕の感情や魂をもって全力で演じさせてもらっています。
――オシュトルと、ハクが演じているオシュトルでは、明確に演技を変えている部分はあるのでしょうか?
利根:先ほどお話した通り、オシュトルを演じる時は藤原さんに寄せるようにとディレクションがありました。そのため、僕の中では既に藤原さんに寄せて演じていたのですが、いざ『二人の白皇』で藤原さんが演じるオシュトル(ハク)のお声を聴くと、また違う印象を受けて。既にあるものに寄せるという意味では、異なるアプローチをする必要がありました。
藤原さんも、ゲーム『二人の白皇』収録時に僕の演技に寄せてくださったらしいのですが、僕からすると藤原さんの成分というか、味が出ていると感じたんです。どこかどっしりして深みがあるというか、威厳が感じられるような気がして。
やっぱり100パーセント、100点満点は藤原さんの演じるハクです。だから藤原さんの演じるハクを踏まえて、僕が魂を込めました。声を聴いた時に藤原さんのハクが少しでも伝われば嬉しいです。
――モノローグではハクだけれども、誰かと話すときはオシュトルっぽさを感じられるシーンが多いように感じました。このようなシーンは苦労されたのでしょうか?
利根:モノローグは誰にも聞かれない心の声なのでハクで演じましたが、『偽りの仮面』のようなライトな雰囲気ではなくシリアスな展開が多かったので、収録では少しトーンを落としています。違いを出すのも大変でしたし、モノローグが多いシーンや、モノローグとセリフの切り替えが多いシーンもあって、なかなか難しかったですね。
――オシュトルの妹であるネコネと掛け合うにあたり、今作ではどのようなことを意識しているのでしょうか。
利根:ネコネには正体がバレているとはいえ、オシュトルは彼女にとっては理想の兄でした。なのでその理想を汚さない、その名を地に落とさないよう気を使っていると思います。
ハク自身もオシュトルを戦友として大切にしていますし、人前でもネコネの前でもオシュトルである時はその役を本当の意味で汚さないよう慎重に演じているのではないかなと。
――収録中のエピソードも教えていただけますか?
利根:掛け合いで臨むのがアニメなのですが、第1話の時はひとりで収録したいと思ったくらいでした。頭の中がぐちゃぐちゃで、とにかく集中力が必要だったんです。ですが実際には、やっぱり掛け合いで録れたのは大きかったと実感します。
他のキャストやスタッフのみなさんが、僕の葛藤を汲んで優しい言葉をかけてフォローしてくださったんです。種田さんからは収録後に「藤原さんの演じていたハクを感じた」「利根さんで良かった」といった言葉もかけてもらいました。
一番気を使ってくださったのがミカヅチ役の内田夕夜さんでした。僕がハクを演じれば演じるほど深みに嵌ってしまい、壁に直面していると、「それはトネケンが誰よりも研究して頑張っているからそう思うんだよ」と励ましてくれて……本当に共演者の方に救われましたね。
あと、藤原さんはたっぷりお芝居されるところがあるのですが、ゲームからアニメになるとテンポが重要になったり動きや表情がついたり、掛け合いの中での感情の動かし方があるんです。
なので収録でゲームと同じセリフを、ゲームの音声を踏襲する形で演じると、「もう少しテンポよく」「もっと感情を込めて」といったディレクションをいただきました。良い意味でアニメは動いているので、違和感が出ないように演技していくのは難しく感じましたね。
――初期作のみなさんとの共演も増えそうですが、その点についてはいかがでしょう?
利根:僕も初期作からのファンなので感慨深いのですが、新型コロナウイルス対策でバラバラに収録しているので、実はどなたともお会いできていないんです。今だと打ち上げも飲み会もないですし、本当にコミュニケーションには飢えていますね。
先日、ふとキャスト表を見ると30名は出演されていて、やっぱりオンエアを見てみんな揃ったんだと実感する形になるんだろうなと思っています。