実際はどんな神様!? 『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』女神・男神大図鑑! #7|神出鬼没、ベルを導く!?“神”ヘルメス編
シリーズ累計発行部数が1200万部を突破した、大人気小説『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』(原作:大森藤ノ イラスト:ヤスダスズヒト GA文庫/SBクリエイティブ刊/通称ダンまち)。
2022年7月22日より最新TVアニメ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ 新章 迷宮篇』が放送中です!
盛り上がりを見せる『ダンまち』ですが、作品の鍵となる存在はやはり「個性豊かな神々」ではないでしょうか。
アニメイトタイムズでは、本作に登場する神々が、実際にはどんな神様なのか紹介する連載を実施中です。
実際に世界中で語り継がれている神話の神々との関連性や、劇中でのエピソード、ファミリアの情報などを解説!
第7回目はギリシア神話に登場する「神・ヘルメス」。神々の事を知って、『ダンまち』をより楽しく鑑賞してみませんか!?
◆『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ 新章 迷宮篇』キャスト連載メールインタビューはこちら
ギリシア神話とは?
古代ギリシャ人から口伝えで紡がれてきた壮大な神と人間の物語。
口頭で語られていたのでエピソードやストーリーにハッキリとした輪郭が無く、話者や地域によってさまざまな解釈をされてきました。
人間臭い一面を持つ神々の挿話を楽しむ物語になっており、神と人間のエピソードも多く描かれています。
『ダンまち』も神様と民衆たちの距離が近く、神達の思惑によって物語の展開が変わっていくので「ギリシア神話」との類似性も感じられるはずです。
マルチな才能を持つ神・ヘルメス
ヘルメスは、これまで紹介してきたアルテミス、アポロン同様、プレイボーイな神・ゼウスの息子で、母親はマイアと呼ばれる女神です。
マイアとゼウスは、ゼウスの正妻であるヘラにバレないように、みなが寝静まった深夜に密会をしていたらしく、その息子であるヘルメスは見張りをさせられていました。その結果、策略家で冷静沈着な個性を持った神に育ったと言われています。
またヘルメスは、生まれたときから逸話を残すほどのマルチな才能を持った存在です。
生まれたばかりのヘルメスは、妖精たちや母マイアの目を盗んで寝床から抜け出し、アポロンの営む牧場へと向かいます。
そこでなんと、のんびりと暮らしている牛を、足跡を残さないような工夫をしたうえで50匹ほど盗み出してしまうのです。
アポロンは占いの力を使ってヘルメスが犯人であると突き止め、ゼウスの法廷へと突き出します。しかし、開き直ったヘルメスの物言いを耳にしたゼウスとヘルメスは、そのあまりに賢い話しぶりに逆に感心してしまう……というエピソードとなっています。
ちなみに、その後ヘルメスとアポロンは親睦を深め、ヘルメスが作った亀の甲羅製の竪琴と杖を交換し合うような仲に。その杖はケリュケイオンと言われる黄金の杖で、伝令の杖として重宝したそうで、ヘルメスの像や絵などにも描かれています。
ヘルメスがやっていた仕事
コミュニケーション能力、物を作る能力、賢い頭脳、堂々と盗みを働くことのできる図太さなどの様々な能力を持ち、世渡り上手なヘルメス。
彼はその実力や人望を使って様々な仕事を行っていました。まずは「死者の案内人」。その名の通り、死者を冥界へと誘う業務です。
2つ目は「旅人たちの案内」。特に危険な場所とされる場所でのガイド役を務めていたとされています。
3つ目は「商業を司る神」としての仕事。ケリュケイオンの物々交換エピソードのように、自作の物を利用したり、交渉役として間に入るなど様々です。
4つ目は「泥棒」です。生まれたその日に牛を盗んだり、兄弟たちと入れ替わってヘラの母乳を飲むなど、ずる賢さもずば抜けています。
5つ目は「雄弁の神」。口が達者なヘルメスはその力を法廷でも発揮しました。
6つ目は「父・ゼウスの使者」としての仕事です。古今東西を駆け回り、いろいろな司令を果たしていますが、中でも有名なのは、人類最初の女性と言われるパンドラ(※1)を地上に送り届けたことです。
(※1)パンドラ……ゼウスが人類に試練として「性」を与えた最初の人物とされる。様々な神たちから形や能力、魅力、醜い心などが与えられ生まれた。最後に「開けてはいけないもの」として箱(壺という説も。翻訳のズレなどで諸説あり)が渡された。パンドラが開けてしまった箱の中身は病気、絶望など“悪いもの”が入っていたとされる。
その他にも、神々へ情報を伝達する役割や、神話に登場する英雄たちのサポート役も行いました。『ダンまち』でも、ベルをサポートする姿や、反対に暗躍する姿など、ヘルメスは多面的なキャラクターとして描かれています。
ヘルメスの息子・パン
様々な仕事を担うヘルメスは、時には戦場で緊迫した場面での交渉をこなし、またある時には神同士のイザコザを解決していました。賢くて、口が固く、フットワークが軽いヘルメスは様々な神に重宝されたようです。
そんな彼には妖精との間に生まれた息子・パンがいました。名前には「すべて」という意味があるそうです。
ヘルメスに似て美しい顔を持つパンですが、ヤギのような角を持つ子であったため、母親は驚き、挙句の果てにはパンを捨てて逃げてしまうのです。そんな息子をヘルメスは面白がり、他の神様に自慢していました。
そこからパンは成長し、妖精や動物たちと仲の良い半獣神として生活しますが、自分の美貌に溺れてしまい、最後はアフロディーテによって盲目となり、絶望して自ら命を絶ってしまいます。