ワンピース映画最新作『ONE PIECE FILM RED』ルフィ役・田中真弓さんインタビュー｜尾田栄一郎先生から言われた「冒険の対義語」に納得

『ONE PIECE』という世界の面白さ　尾田先生に言われて衝撃だった「冒険の対義語」とは？

――今作では「親子の絆」がテーマの1つになっているかと思います。田中さんが感じた家族観や親子の絆についてお聞かせください。

田中：親子や兄弟というのは、『ONE PIECE』にもよく出てきますが、『ONE PIECE』に触れていると、「家族」について考えることがあります。血が繋がっているとか、本当の家族であるとか、そんなことはあんまり関係なくて。

考えてみたら、『ONE PIECE』は、血の繋がりがない「家族」を描いていることも多いですよね。血の繋がりはないけれど、エース(CV：古川登志夫)はルフィのことを「弟」だと言います。血の繋がった弟以上の関係性ができているというのは、『ONE PIECE』の世界の面白さだと思っています。麦わらの一味も仲間というよりも、もう「家族」のような存在ですよね。

――『ONE PIECE』ならではの面白さですね。

田中：家族といえば、私は『ONE PIECE』に「母親」が出てこないのがすごく不思議だったんです。自分も母親なので、母親を描いてほしいと思うんですが、今までお母さんのキャラクターが出てきてもすぐに死んじゃうんですよ。

母親を本当に描かない人だなと思って、尾田っち(尾田栄一郎先生の愛称)に昔訊いたんですが、その時に言われたことがいまでも忘れられないです。「真弓さん、冒険の対義語は何だと思いますか？」と言われて、私は「日常？」と返したんです。そうしたら尾田っちが「違います。冒険の対義語は母親です。母から離れることで冒険ができるんです。僕は冒険を描きたいので、母親は描きません」と言ったんです。

――それは……重いですね。

田中：重いでしょう。尾田っちに「冒険の対義語は母親です」と言われた時に、悔しいけど、なるほど、その通りだと思いました。母親が守ろうとする力はすごい。だから男の子は母親から離れないと、本当の冒険はできないんですよ。

「さぁ、出て行け。男どもよ。冒険の旅に行きなさい！」と思って、母親を描かない理由にショックを受けつつも、納得しました。

田中さんの“REDなできごと”

――今作のタイトル『RED』は、太陽や炎や情熱などを連想させますが、田中さんが今作に関わってREDだと感じたできごとがありましたら、教えてください。

田中：REDなできごとといえば、今年の１月に放送された『さんま・玉緒のお年玉！あんたの夢をかなえたろかSP 2022』でお会いした『ONE PIECE』が好きなスリカさん(※1)ですね。

インドの人で、いつか「世界一のIT企業家」になるという夢を持って日本に移り住み勉強している方なんですが、立派になったら、いつか『ONE PIECE』とコラボしたいという夢を聞いて。尾田先生が「スリカさんがいつか起業して、タイアップを言いに来てくれたら、僕は断りません。その時までこの麦わら帽子を預ける」とメッセージを返したんです。

シャンクス役の池田さんと一緒に、スリカさんが泣いて感動するためのお膳立てとして登場したのに、先に私と池田さんが感動して泣いてしまって(笑)。

こうやってみなさんに熱い思いを届けているんだな、と思ってこちらも胸がじわっと暖かくなりました。

※1スリカさん：TV番組『さんま・玉緒のお年玉！あんたの夢をかなえたろかSP 2022』(2022年1月10日TBS系で放送)に、『ONE PIECE』の作者・尾田栄一郎先生に感謝を伝えたいというインド人男性・スリカさんが登場。スリカさんが『ONE PIECE』と出会って「世界一のIT起業家になる」という夢を持つことができたと語ると、ルフィ役の田中さんと赤髪のシャンクス役の池田さんが現れ、シャンクスとルフィの名シーンになぞらえて、尾田先生のサイン入りの麦わら帽子をスリカさんに手渡す。尾田先生の直筆メッセージには「いつかスリカさんの会社からコラボ依頼があったら必ず受けます」と書かれていた。

――映画の公開を楽しみにしているファンのみなさんへメッセージをお願いします。

田中：今回の作品はいつもとは違うタイプのお話です。まず、歌が素晴らしいので、ぜひ映画館で歌を楽しみながら観ていただければと思います。

そして、今回もいろいろなキャラクターがたくさん出てくるので、ぜひ探してみてください！

――ありがとうございました！

［文・宋莉淑（ソン・リスク）　／　写真・二城利月］